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作者: 裕 (総ページ数: 21ページ)
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1、席替え
空「席替え?」
胡「うん。学校始まって3ヶ月になるし、丁度いいからって。やるかやらないかは空羽に任せるっ言ってた。」
空「また…。」
胡「で、お願いがあるんだけど…。」
空「席替え、したいんでしょ?」
胡「そう!お願い!」
空「良いよ。私もそろそろ人見知り克服に力入れないとね。」
胡「頼むよ!学級委員長!」
空「人事みたいに…。私先生のところ行ってくるから先に教室戻ってて。」
胡「うん。」
中学校からの親友、野樹胡ちゃんと一緒に入学したのは國木田高等学校。その高校に入って既に3ヶ月が経とうとしてた。
学級はというと、結構明るい人が多いクラス。人見知りを克服しようとしている私を学級委員長にさせたのは、胡ちゃん。人前に立つのは元々苦手だけど、仕事は何とかやってるし、順調!問題はというと…
空「失礼します。」
誠「お、花薗。どうした?」
空「…のん気ですね。」
誠「そんなこと言いに来たのか?」
空「はぁ…。席替え、今日のHRの時間にやるので良いですか?」
誠「ああ。席替えな。んー。」
空「それだけです。じゃ…。」
誠「お父さん、元気か?」
空「え?あぁ…はい。相変わらず職探ししてます。」
誠「そうか。頑張れよ。けどムリすんなよ。」
空「はーい。失礼しましたぁ。」
面倒くさがりやの麻鹿戸誠先生。私は昔馴染で慣れてるけど、でもやっぱり誠ちゃんの押し付ける量は尋常じゃない。
胡「そう!よかったぁ…。」
空「麻鹿戸先生ももう少し大人になってくれれば…。」
胡「高校生に言われるってどうなのよ?」
空「彼女もいないし、一人だし。そりゃぁ面倒くさがりになるよね…。」
胡「昔馴染って何でも知ってて怖いね。」
空「…。」
胡「ま、どうでも良いけど…。あ、景十先輩だ。」
空「あぁ、本当だ…。」
胡「今日何かあるの?」
空「多分、ピアノの練習。」
胡「…学校あるのにこんな時間に?」
空「まぁね。」
胡「ふうん…。景十せんぱああい!」
空「呼ぶ必要ある?」
胡「良いじゃない?」
景「空羽!」
空「何?」
景「今日何時帰り?」
空「…6じ過ぎ。」
景「分かった!」
胡「頑張ってぇぇぇ!」
景「ありがとう!」
胡「良いよね、景十先輩!羨ましいよ!あんなにカッコいいのがお兄ちゃんだなんて!」
空「何がありがとう〜よ。一緒に住んでみれば分かるよ。家では性格悪いんだから。」
胡「そんなこと無いよ!」
空「妹の言葉を信じないか…。」
胡「景十先輩は別―!」
空「はぁ…。」
兄の景十は風紀委員長を務める先輩。学校ではかなりの人気を誇る。
景兄ぃは小さい頃からピアノを習っていた。来年、学校を卒業するとパリに留学に行く予定。
空「パリ、かぁ…。」
胡「留学の話、本当だったんだ。」
空「うん。来年は夕刀も入るからいて欲しいんだけどね。景兄ぃの将来は景兄ぃのものだし。私がどうこう行ってもね…。」
胡「考えが大人…。人見知りのくせに…。」
空「それ関係ある?」
中学校に通う3年の弟の夕刀は、来年この学校を受験する予定。景兄ぃと私が入ったかららしい。
胡「家族思いって良いよね…。私空羽の家族になりたい!」
空「私は毎日美味しいご飯を目一杯食べたい…。」
胡「麻鹿戸先生に頼めば?」
空「そこまで図々しく出来ません。」
胡「大人…。」
空「では、HRの時間を使って席替えをします。一人ずつこの箱からくじを引いて、場所を確認してから席に戻ってください。移動は全員が引き終わってからです。じゃあ、そっちから…。」
誠「よく働くよなぁ…。」
胡「先生が働かせてるんですよ?」
誠「それもそうか。でも、あいつは何もしなくてもするよ。何せ、親父があれだからな。」
胡「…今日もバイトですかね?」
空「佳長君。」
火「…。」
空「くじ、引いてもらえる?」
火「…。はぁ…。」
空「(溜め息…。)」
胡「わあ、おどおどしてる。」
誠「火杏は対応が大変だしな。」
胡「先生段々人事になってきてますよ。」
誠「俺でも難しいさ。あいつのことはな。」
空「さ、胡ちゃんの番だよ。」
胡「はーい。」
空「次、木村くん…。」
誠「また同じ班とか止めろよ?」
胡「毎回くじ引きなのに何故か同じ班になるだけです。」
誠「何番?」
胡「…変わらない。」
誠「ここ?」
胡「…2番。ここです…。」
誠「花薗は?」
胡「空羽…!」
空「私?…はい。」
[12]
胡「…っ。離れた…。」
誠「まあまあ…。たまには良いんじゃないか?」
空「じゃあ、移動してください!」
胡「まあ、動かなくて楽だけどさ。空羽と違う班って初めてじゃない?」
空「…緊張してきた。どうしよう!胡ちゃん!」
胡「あー、はいはい。席替えの度に毎回聞かれるから返事に疲れる。とりま、移動しな。」
空「胡ちゃん、年々酷くなってる…。」
胡「なってなーい。」
誠「花薗早くしろー。」
空「…先生に言われたくない。」
誠「何!?」
胡「あ、逃げた。先生、空羽には弱いですよね。」
誠「っ…。」
私の新しい席は、窓側2列目の一番後ろの席。本当は窓際が良かった。外を見るのが好きな私は、今までのほとんどが窓際の席だった。まぁ、外を見ることに支障はないから、良いとしよう。
空「さて…。(胡ちゃん助けてー…。)」
胡「(頑張れ、空羽。)」
空「(うぅ…。)えっと、では班を作って役割等を決めていってください。」
小「はいはいはい!俺、班長!」
突「じゃあ、俺連絡。」
小「いいんちょーは?」
空「わ、私は何でも…。」
小「じゃあ、いいんちょーは…保健で!」
空「あ、うん。」
突「じゃあ、佳長、副班長だな。」
火「…。」
空「(よりによって班の中に女子がいない…。どうしよう…。)」
誠「花薗。」
空「あ、はい。」
小「いいんちょーと同じ班だ。」
突「君…。」
小「あ。俺、網埜小太郎。よろしくな。」
突「ごめん。俺、小几太突。よろしく。」
小「佳長もよろしくな。」
火「…。」
誠「佳長のこと、ムリすんなよ。」
空「どういうこと?」
誠「大人しくはしてるけど、一応暴力沙汰起こした奴だから…。」
空「先生がそんなこと言って良いんですか?」
誠「でもさ…」
空「でもじゃないです。学級委員長としても、ちゃんと仲良くなるつもりです。」
誠「…。程ほどにな。」
空「はい。」
チャイムは、HRの終わりの合図。誠ちゃんの解散の声で皆一斉に教室から出て行く。友達と寄り道して帰る予定を立ててる人、恋人と返る人、委員会で残る人。各自それぞれだ。
胡「ごめん、空羽。私今日ケンちゃんとデート。」
空「あ、うん。分かった。私もどうせ委員会あるし、良いよ。」
胡「ごめんね!ばいばい!」
空「ばいばい。…。(彼氏かぁ…。)」
誠「羨ましいか?」
空「別に…。私は景兄ぃと夕刀と胡ちゃんが笑顔なら良いので。」
誠「そこに親父は含まれないのか?」
空「お父さんは仕事してもらわないと。」
誠「だな。今日もバイトか?」
空「はい。7時から1時まで。」
誠「家のためって言っても、身体壊すなよ。学校の仕事も多いだろ?」
空「ええ、誰かさんのせいで。」
誠「すんません。」
空「じゃ、委員会行ってきます。あ、今日の日誌は終わってからで良いですか?」
誠「ああ。職員室にいる。」
空「はーい。失礼しまーす。」
教室には、佳長君がまだ残っていた。小説を読むその顔は、どこか淋しそうにも見えた。
颯「花薗―?」
空「あ、はい!」