完結小説図書館
作者: 裕 (総ページ数: 21ページ)
関連タグ:
*17*
空羽「何が…今までありがとう、よ…。変なの…。」
景十「…空羽?」
空羽「…景兄ぃ。今帰り?」
景十「お前もか…。」
空羽「うん…。」
景十「どうした?やけに元気ねえな。」
空羽「…。ちょっとね…。」
景十「そういや、佳長とはどうなってる?」
空羽「別にどうもなってない…。」
景十「そっか。」
空羽「…。」
景十「…。空羽、ちょっと散歩すっか。」
空羽「…え?」
景兄ぃは昔から、私の事がよく見えている。兄だから。…そうかもしれない。嘘も分かる、悩んでることも分かる。…今日は、落ち込み、かな?
景十「ここ、昔父さんと来たよな。」
空羽「…覚えてない。」
景十「そりゃそうか。お前まだ3歳の時だし。」
空羽「…。」
景十「夕陽があるとすっげー綺麗なんだ。ほら、見てみろよ。」
空羽「…わぁ、幻想的。」
景十「だろ?」
空羽「…。男子って何なのかな。」
景十「どうした急に…。」
空羽「近寄りがたくて、すぐ暴力ふるって。…そういう印象が私の中にあって…。でも、小太郎くんも、突くんも、佳長君も…何か違って…。初めて男の人の良さを知って。景兄ぃを思い出した。」
景十「俺?関係なくないか?」
空羽「…あるよ。だって、一番好きなのはやっぱり家族だし。頼れる兄は景兄ぃしかいないし。」
景十「お、おう…。さんきゅ。」
空羽「今日、胡ちゃんを失った。」
景十「…え!?」
空羽「あ、変な意味じゃないよ!?…悪く言えば裏切られた。私の事他の子と話してて…。ちょっと、ね。」
景十「…そうか。」
空羽「一人、なっちゃった。」
一人なんて最近まで慣れてた。でも、中学で胡ちゃんい出会って、仲好くなって嬉しかった。それを、高校で失うなんて思ってもなかったこと。
私は、ただただ泣いてた。声は出さず、目から出る大粒の涙を拭えずにただ立っていた。
景兄ぃはこういうとき何も言わない。何も言わないで頭をなでてくれる。その手にはいつも、優しさがある。口の悪い猫かぶりな兄だけど、本当に大好きで…大好きで…
空羽「…景兄ぃの妹で良かった。」
景十「…っ!?な、何だよ…。」
空羽「分かんない…。分かんないけど、景兄ぃがお兄ちゃんで良かった。」
景十「…。ありがとう。」
空羽「…っ。」
景十「…無理すんなよ。お前だって色々努力してんだ。友達なんて人生で何回も失う。今お前は、その一回目を体験しただけ。それに、その小太郎って奴たちもいんだろ?なら、一人じゃねえよ。大丈夫。いざとなれば俺だって学校にいるし。」
空羽「…途中で早退してる。」
景十「そ、そこは、まあそれとして…。佳長も居るんだろ?お前が佳長のこと好きになるかは時間の問題だけど、佳長はお前の事守ってくれると思うぞ。」
空羽「え…?」
景十「ま、あくまで俺の推測にすぎねえけどな。」
やっぱり、景兄ぃは最高のお兄ちゃん。この人の妹で良かった。
私、佳長君にちゃんと向き合ってみよう。自分の気持ちに嘘つかない様にするためにも…。