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asuterisuk *
作者: 糸色景 (総ページ数: 2ページ)
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*紹介文/目次*
小さな星の話 a little star\\\'s story
少年は星が好きだった。
それぞれが一つだけの輝きを放つ星が。
二つとない自分を魅せる星が。
集まって、離れて、そして寄り添う星が。
少年は、星が好きだった。
*
星、星、星。見渡す限り一面の星の中に僕はいた。
すきま風の吹き込むプラネタリウムで、古めかしいリクライニングシートに座り身体を倒す。ほかに観客はいない。今時わざわざ星を見ようだなんて考える人はそういないんだろう。視界一杯に広がる星を見上げ、様々なことを考える。それは宇宙や地球のように大きなことだったり、自分のことや学校、友人家族のことなど身近なことまで色々だ。
僕は毎日ここへ通う。科学館と名付けられた小さな建物のてっぺんに位置する、市でたった一つのプラネタリウムだ。
「御観覧ありがとうございました。お忘れ物のないように、お足元にお気をつけてお帰り下さい。」
すうっと部屋が明るくなって、アナウンスが流れる。足元のカバンを持って重たい扉を押す。
カツン、カツン、と足音を響かせて階段を下りる。途中、何度もドアの前を通り過ぎる。どこも中は薄暗く、中を覗いたことはない。科学館の名のもとに集まっているくらいだから、きっとそれに関する施設やら研究室が入っているのだろう。
「夕飯何食おうかなぁ……」
一階玄関ホールを出て大きな門をくぐると、薄紫色した空が広がっていた。初秋の夕暮れの静かさと冷たさが頬をなでた。
*
帰り道、スーパーに寄る。ちかちかといやに明るい人工照明に照らされながら、かごを持って店内を移動する。今日の晩ご飯と明日の朝ご飯、それと安いものがあれば明日の昼ご飯も買おう。総菜物と、パンコーナーを一人うろうろと歩き回る。午前に作られたという惣菜がさらに半額で売られていたのでかごに入れる。残念ながらその他の物はあまり安い物がなかったので、小さなビニール袋をぶら下げてそのままスーパーを後にした。
すっかり暗くなった空をぼうっと見上げる。今のご時世、高校生にもなって夜中に星をまじまじ見つめるような人はそうそういない。いるのかもしれないが、少なくとも僕は見たことがなかった。
「…さむ。」
初秋にも関わらず、最近の朝晩は酷く冷え込む。ポケットに手を突っ込んで、足早に家路へつく。空には雲が広がり、北極星は隠れて見えなかった。
*1*