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「メアリー、その薔薇は……!」
ギャリーが驚きながら言うと、メアリーは納得したように言った。
「あぁ、これイヴの薔薇だったんだ! どこかで見たことあると思った!!」
「メアリー、その薔薇をイヴに返してあげて」
「え〜そうだなぁ……」
メアリーは少し迷った後、満面の笑顔で言った。
「じゃあ、ギャリーの薔薇と交換して?」
「「っ!!」」
「私ね〜赤も好きだけど、青はもっと好きなの!! ……イヴ、それでも返して欲しい?」
……私、は……。
「……別に返してもらわなくてもいい」
ギャリーの大切な薔薇を交換してまでも、私の薔薇を返して欲しいとは思わなかった。
「何バカなこと言ってるの!!」
そう叫んでギャリーは自分の薔薇を取り出し、メアリーに差し出した。
「いいわ。イヴの薔薇と交換して」
「え!? 本当に良いの?」
「えぇ」
「やった〜!!」
メアリーが赤、ギャリーが青の薔薇を差し出し交換した。
ギャリーの薔薇を受け取ったメアリーは、
「キレイな色……。アハ、アハハハハ!!」
笑いながら走り去って行った。
「はい! もう無くさないように、しっかりと持っておくのよ」
そう言ってギャリーはしゃがんで、私の手に薔薇を握らせてくれた。
「……ギャリー」
「ん?」
「ごめんなさい。私が薔薇を無くしたから……」
うつむきながら言うと、ギャリーは優しく私の頭を撫でながら言った。
「イヴのせいじゃないわよ。アタシが勝手にやったことだし、それに薔薇だったら今からメアリー追いかけて取り戻すこともできるんだから!」
「……うん。ありがとうギャリー」
「どういたしまして!」
私たちは急いでメアリーを追いかけた。だが――。
「…………」
「? ギャリー?」
急に足を止めてしまったギャリーに気付かず進んでしまった私は、駆け足で戻った。
「大丈夫? 凄い汗だけど……」
「…………イヴ、ごめん。何て言うか……ウソは付きたくないけど、本当のことも言いたくない……」
うつむかせていた顔を上げ、ギャリーは微笑みながら言った。
「……動けるようになったら、追い付くから……先に行ってて」
けれど、私にはムリをしているようにしか見えなかった。
「……はい。これ使って」
「……ハンカチ?」
「うん。汗凄いから貸してあげる。だから――後でちゃんと返してね」
「――――」
ギャリーは驚いたような顔をして固まっていた。
「絶対だよ!!」
念を押すと、ギャリーはまた優しく笑った。
「分かったわ。約束ね」
そう言ってギャリーは右手の小指を出した。
私も小指を差し出し、指切りげんまんをした。
そして私はギャリーに
「絶対来てね!!」
と、もう一度念を押してメアリーを追いかけた。
――これが私とギャリーの最期の会話だった――。