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Ib ―『さよなら』の先に―
作者: 緑茶  (総ページ数: 53ページ)
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*20

「メアリー、その薔薇は……!」
 ギャリーが驚きながら言うと、メアリーは納得したように言った。
「あぁ、これイヴの薔薇だったんだ! どこかで見たことあると思った!!」
「メアリー、その薔薇をイヴに返してあげて」
「え〜そうだなぁ……」
 メアリーは少し迷った後、満面の笑顔で言った。

「じゃあ、ギャリーの薔薇と交換して?」

「「っ!!」」
「私ね〜赤も好きだけど、青はもっと好きなの!! ……イヴ、それでも返して欲しい?」

 ……私、は……。

「……別に返してもらわなくてもいい」
 ギャリーの大切な薔薇を交換してまでも、私の薔薇を返して欲しいとは思わなかった。
「何バカなこと言ってるの!!」
 そう叫んでギャリーは自分の薔薇を取り出し、メアリーに差し出した。
「いいわ。イヴの薔薇と交換して」
「え!? 本当に良いの?」
「えぇ」
「やった〜!!」
 メアリーが赤、ギャリーが青の薔薇を差し出し交換した。
 ギャリーの薔薇を受け取ったメアリーは、

「キレイな色……。アハ、アハハハハ!!」

 笑いながら走り去って行った。


「はい! もう無くさないように、しっかりと持っておくのよ」
 そう言ってギャリーはしゃがんで、私の手に薔薇を握らせてくれた。
「……ギャリー」
「ん?」
「ごめんなさい。私が薔薇を無くしたから……」
 うつむきながら言うと、ギャリーは優しく私の頭を撫でながら言った。
「イヴのせいじゃないわよ。アタシが勝手にやったことだし、それに薔薇だったら今からメアリー追いかけて取り戻すこともできるんだから!」
「……うん。ありがとうギャリー」
「どういたしまして!」

 私たちは急いでメアリーを追いかけた。だが――。

「…………」
「? ギャリー?」
 急に足を止めてしまったギャリーに気付かず進んでしまった私は、駆け足で戻った。
「大丈夫? 凄い汗だけど……」
「…………イヴ、ごめん。何て言うか……ウソは付きたくないけど、本当のことも言いたくない……」
 うつむかせていた顔を上げ、ギャリーは微笑みながら言った。
「……動けるようになったら、追い付くから……先に行ってて」
 けれど、私にはムリをしているようにしか見えなかった。
「……はい。これ使って」
「……ハンカチ?」
「うん。汗凄いから貸してあげる。だから――後でちゃんと返してね」
「――――」
 ギャリーは驚いたような顔をして固まっていた。
「絶対だよ!!」
 念を押すと、ギャリーはまた優しく笑った。
「分かったわ。約束ね」
 そう言ってギャリーは右手の小指を出した。
 私も小指を差し出し、指切りげんまんをした。

 そして私はギャリーに
「絶対来てね!!」
 と、もう一度念を押してメアリーを追いかけた。



 ――これが私とギャリーの最期の会話だった――。


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