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お父さんはもういない
作者: カガリ  (総ページ数: 3ページ)
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*1*

朝おきたら、またお父さんとお母さんはけんかしていました。
いつものことです。そしていつも、けっこうくだらないことでけんかしています。
ほんとうはなかよしです。たぶん。
いつも、お父さんがかえってきたら、もうなかなおりしています。

でも今日はちがいました。

「よく聞いてね。お父さんが・・・・・・・事故にあったらしいの」
ばんごはんのとちゅうででんわに立ったお母さんが、
すごくくるしそうな顔で、そう言いました。
ちょっとの間いみがわからなくて、でもようやく、
お父さんがたいへんな目にあったのだ、と思いました。
「え。お父さん・・・・えと、だいじょうぶなの?」
やっとそれだけ言えました。
そしてお母さんを見ました。
お母さんは、ないていました。
「え?え?」
「お父さん、もう会えなくなってしまったの」
「・・・・・・・え?」
え。それはつまり、あの、お父さんは・・・

「ただいま」

声が聞こえました。
え?え?こんらん中
だって、あれはどう考えたってお父さんの声です。 お父さんが、しごとからかえってきた・・・のです。
お父さんは、リビングに入ってきて、
「今日のごはんうまそうだな」
とか言っています。
でも今お母さんは、お父さんはしんだって言って、ないてて。
「お母さん?お父さん、いるよ?かえってきたよ?」
そう言うとお母さんは、くるしそうな顔をもっとくるしそうにして、
「あぁ・・・!・・・ごめんね。受け止めきれなかったのね。そうよね・・・
あのね、お父さんは、もういないのよ。帰ってきて、ないのよ」
お母さんはまた、ゆっくりと、言いました。
なにを言っているのか、なんとなくわからなかったけど、
お父さんはいない、そう言いたいのはわかりました。

でもお父さんはいます。
ないてぼくに話しかけるお母さんを見て、
なにかをわかった、みたいな顔をして、
それで、とてもこわい顔をしました。
「お父さん、お母さんが、お父さんはいるのに、しんじゃったって・・・」
わけがわからないので、お父さんに聞いてみました。
「・・・・・・・・・・・そっちがそのつもりなら・・・」
なにかを小声で言った気もするけど、わかりません。
やがてお父さんは、用意されていたばんごはんを食べて、
おふろに入って、ねてしまいました。
その間お母さんはずっと、お父さんが見えていないようでした。

次の日も、その次も、それからずっと、そうでした。
だからぼくは、お父さんが見えているほうがおかしいのだとわかりました。
しんでしまったお父さんのゆうれいを見ているのです。
お父さんのことを話すと、お母さんは、とてもくるしそうな顔をします。
「これからは、二人で、生きていくんだよ」
「お父さんはいなくなっちゃったけど・・・・・がんばろう」
ぼくは、なるべくお父さんのことを気にしないようにすることにしました。

そうしたらいつからか、お父さんは見えなくなりました。





「ごめんね、ごめんね。お父さん、すぐそばにいるのよ」
お母さん、なんでまたないてるの?
おとうさん ・・・・・・・・・・・・・・・って、だれ?


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