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*バッドエンドから始まる恋物語*完結
作者: 姫凛  (総ページ数: 6ページ)
関連タグ: グロ シリアス ダーク 孤独 終焉 
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一話 俺は独りになった





○月△日

あの日は蝉の鳴き声が五月蠅い夏だった

俺はまだ十歳で、やんちゃなガキだった

妹はまだ六歳で、何も知らないガキだった

俺達はまだ子供だったんだ

俺は――




「お兄ちゃーん、どこにいくの?」
「ちょっと、裏の森になっ」
「えぇー、ダメだよ!あそこは入っちゃダメだってパパとママが言ってたよ?」
「いいんだよっ。ちょっとどんなか見るだけなんだから」
「あぁー待ってーアオイも行くー」
「まったく、アオイは心配性だなー」

よろけながら後をついてくるアオイを苦笑いしながら待ってやる。
アオイは俺に追いつくと、「えへへ」と笑い俺の手を掴む。いつも俺と何処かへ出かける時は迷子にならないようにと手を繋いで歩くようにしているからだ。

「よしっ!行くかっ」
「すぐに帰るんだからね」
「わかってるよ」

俺達は家の裏にある森に探検へ出かける。
どうしてか父さん達はこの森に入っちゃだめって言う。でも入っちゃだめと言われたら余計に入りたくなるんだよなっ!
くぅ〜、ワクワクしてきだぜっ!!

立入禁止と書かれた塀を乗り越え、森の中へどんどん入っていく。

「何が危険なんだよ?普通の森じゃねぇーか」
「うん…」

オドロオドロしていて気持ちの悪い森を想像してたのに、実際はポカポカして眠気を誘う気持ちの良い森だった。
なーんだ、危険だとか言うのは父さん達の勘違いか。
よし。ここに秘密基地でも作ってみんなを招待してやろうかなー。なにして遊ぼうかなー。

「おっ…お兄ちゃんっ!?」

急にアオイが何か恐ろしい物を見たみたいな声をあげる。
どうしたんだ?こんな陽気な森に…恐ろしい…物なんて…

「グパァァ」
「…………ぁっ」

なんだ…あれ…。
イノシシ?クマ?わからない。動物図鑑でも、テレビでも見たことのない生物がよだれをダラダラ垂らしながら俺達を見てる。

「ぃ…や…」
「大丈夫だっ、アオイ!お前の事は俺が護ってやるから!」
「……グググ」

笑ってる?
あいつ笑っているのか…?
くそうっ!化け物の分際でっ!!

「お兄ちゃんっ!?」
「やぁぁぁぁっ!!」
「ガァァァァ!!」

俺はアオイを護るため近くにあった棒切れを手に取り、化け物に向かって立ち向かって行った。


そこから先の記憶がない


気づけば見知らぬ部屋のベットに寝かされていた。
周りには親戚のおばさん、おじさん達がいてみんな泣いている。
どうして?俺はどうなったんだ?アオイは?化け物は?

「アナタのせいで…」

アオイの声だ。
アオイの声が聞こえた。何処だ?首を動かそうとしても思うように動かない。

「アナタのせいで…」

アオイ何処にいるんだ?

「アナタのせいで…パパとママが…」

父さんと母さん?父さん達がどうしたんだ?

「死んじゃったっ!!」

………
一瞬、俺の脳はフリーズした。
なんて…なんて…言った?父さん達がなんだって?

「アナタが森なんかに行きたいなんて言わなければパパ達は死ななかった!!許さない!アナタを絶対に許さないっ!!」

窓の外にはけたましく五月蠅く鳴く蝉達の声が鳴り響いていた。



あの蝉が五月蠅い夏の日

俺は――

    独りになった

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