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*1*
それから、ボクは話すんだ。
夏休みの事とか、お祭りの事とか。
新学期のあのとき、言えなかった事とか…。
ぱきり。
「ぁ…」
折れたシャープペンの芯が腕に当たって落下した。
その弾みで切れてしまった集中力に深く息を吐く。
背伸びをして固まった身体を伸ばしながら、ふと窓を見ると白いもくもくとした雲と真っ青な空。その上の方を飛行機が暢気に尾を引きながら横切っていた。
まだまだ暑い、夏の終わり。
あと1週間もすれば学校が始まるというのに、この暑さは何なのだろう。
しかも運悪く、部屋のエアコンは先日壊れてしまった。 いや、古いエアコンだったから連日の酷使に耐えられなかったのかもしれない。
視線を問題集に戻すと、その分厚かったはずの本がもう残り少ないことに気が付いた。 塾で課された宿題も、これで終わり。学校の宿題は、とうの昔に終わらせていた。
片付けてしまおうと、シャーペンをノックする。
しかし新しく出てきた芯は短くて、ぽろっと机の上を転がった。
「あれ?」
手探りで替えの芯を探していた手が止まる。
見つけたのは空っぽの細長いケース。
「切れちゃってたんだ…」
シャープペンの芯なんて常に予備が1個あるくらいで、切らしたことなどないというのに。
また深い溜息をついて、外を見やる。 飛行機雲は、もう薄くなって消えかけていた。
相変わらず空は青い。
青い。青い。呑み込まれそうなほど──。
突然、その青い空間に黒い影が横切って窓に張り付いた。
驚いて我に返ると、乱入者はけたたましく鳴き始めた。油蝉だった。
「買いに行かなくちゃ」
ついでに新学期用のノートなども揃えよう。
そう思い立って、重い腰を上げた。
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