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【完結】夏休みの日記 ―ぼくとおかし星人―
作者: 夏村 ◆P/v/Uhogdo  (総ページ数: 35ページ)
関連タグ: 夏休み 日記 
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10~ 20~ 30~

*1*

7月20日  晴れ


何か見えるんですか?


そう、言われることが多くなった。
どこか遠い目をしてぼんやりしているからだそうだ。
それも、やたらと空ばかりを眺めているとか。

私がそうなってしまうのは、夏が来たからだろう。
夏の訪れを感じると、私はいつだって、こうなってしまう。

何か見えるのか言えば、特にそういうわけでもなく。
言われるたび、私は照れ隠しに笑ってごまかしている。

本当は、空を見ているのではない。
私は、空の向こうの、ずっと遠くにある存在を見ていた。

もちろん見えるのは、空と雲ばかりなのだけれど。
それでも、確かに、この星をとりまく広い宇宙のどこかに。

私は、私の友人がいることを知っていた。

目を閉じると、君と過ごした穏やかな日々が、今でも浮かんでくる。

繁る木々の緑が鮮やかだったこと

木漏れ日がきらきらと私達に降り注いでいたこと

蝉がしきりに鳴いていたこと

見上げた夜空の花火が美しかったこと

初めて一緒に食べたお菓子

大粒の汗を浮かべながらたくさん遊んで

共に声を上げて、笑ったことも――。


ずっと昔の、懐かしい思い出。
君も、私のように思い返したりするのだろうか。
それとも、もう忘れてしまっただろうか。

またいつか、会えることを夢見て
今日も私は、空を眺めている。

――地球のとある老人の日記

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