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作者: 桜 (総ページ数: 28ページ)
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第一章「首の行方」
****年 四月二十五日 浅倉総司 謀反の罪で人知れず斬首
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長い間、有路ノ国(アリジ)、蒼路ノ国(ソウジ)は、戦いを続けてきた。十年もの間の長い戦争は、四月二十六日、終結した。有路ノ国の勝利で。戦いの原因はなんだったのか、長き戦のせいで、誰もが忘れ去っていた。
多くの死に絶えた者と、多くの流した血は戻らない。けれども、そのとき、何かが変わった気が、残された者には感じた。
訃報を聞いたとき、竹刀だこのできた手で、ずっと、ずっと黒い漆のかかった小太刀を握っていた。
雪音は、顔を俯けさせた。桜色の花弁が覆う地面を垣間見ると、すぐにその瞼を閉じた。
つぅぅ、と頬に雫の流れる官職がする。・・・・嗚呼、私、泣いてるんだ。一目で(視てはいないが)わかった。まだ泣ける。どれだけ、この手で人を殺してきても、まだ、涙は残っていた。
あの日、もう泣かないと決めたけれど、どうか今日だけは-----
----------大切な人のために、泣かせてほしい
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「おい!、浅倉総司の首がないぞ!!!。」
「うっそぉぉぉぉ!?、何で!?。」
人知れず罪人の首を運び入れる 運び人が、とある牢屋を見て叫んだ。(このあと、その叫び声が山の家のほうにも聞こえ、あまりの大音量に驚いた人たちからの苦情が来たせいで、こっぴどくしかられる運命がくるのは、もう少し先である。)
「丁重に葬れ、って言われたよな・・・。」
「ああ、いわれた・・・・。」
「「・・・・・・・・・・」」
ぱたん、と牢屋の扉を閉め、何事もなかったよう、脱兎のごとく二人は逃げていった。
首が置いてあるはずのその牢屋には、跡形もなく、何もなくなっていた。
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浅倉総司の首が消えた-----
それは、すぐに殿----有路大紀(アリジだいき)に知れ渡った。(というか、ばれた)
国は、下町にすぐに知らせた。
『肩ぐらいの長さの漆黒の髪。顔は美しく整っており、切れ長の眼の首を発見したらすぐに役人に報告。』
その知らせは、一つではなかった。
『雪音という名の少女を見つけたら引きずってでも役人に渡せ。たとえ殴りかかられても殺す気でかかってよい。特徴は、漆黒の小太刀を持ち、おろすと長いつややかな黒髪を櫛でとめている。男女どちらの格好をしても似合う。』
その知らせを雪音が聞くのは、もう少し先のこと。