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君の青春に××してる【完結】
作者: はるた ◆OCYCrZW7pg  (総ページ数: 17ページ)
関連タグ: 青春ラブコメ 
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10~

*12*

 7日目「君に恋をしてみました」





 私が有馬君に告白をした一週間前、彼は私にこう言った。
”俺のことなんてすぐに好きじゃなくなる”
 有馬君と一緒に一週間を過ごして分かったこと、それは彼がいわゆるオタクだということ。漫画やアニメ、ゲームが大好きらしい彼は、多分何か大事なイベントがあったら、彼女を放ったらかしにしてそちらに行くタイプの人だろう。
 あいにく私には、いとこの美咲ちゃんという有馬君を超えたオタクの親戚がいて、態勢はついていたので何も感じなかった。でも、有馬君にとっての私は何なのだろう。考えても考えてもやっぱり結論は出ない。


 ドキドキとなぜか緊張している。
あの日と同じ、夕暮れの暁の空。私と有馬君二人っきりの教室。
 


 私はゆっくりと席を離れ、窓際の有馬君の席に近づく。夕陽が眩しくて、思わず目を閉じてしまう。それに気づいたのか、さっと有馬君はカーテンを閉めてくれた。



「ありがとう、有馬君」
「ううん、これくらいのこと」



 有馬君の素気のない返事。
いつも通りだが、なんだか気持ちが重くなる。
 さて、そろそろ本題に入らないと。



「有馬君、今日で一週間だよ」
「え、……あぁ、もう一週間なんだ」
「気づいてなかったの?」
「うん、沢渡さんと一緒にいると、時間がゆっくりに感じてさ」



 それは、私といると有馬君は楽しくなかったってことなのかな?
私がもしかしたら有馬君の重荷になっていたのかもしれない。私はぐっと唇をかんだ。



「沢渡さんといると、もう少し一緒にいたいなぁって思って、いつもより何かしらしていることが多かったからかな?」




 有馬君の言葉に、私は思わず「え」と声をあげてしまった。
私と一緒にいたかった? 有馬君の口からそんなことを聞けるなんて考えてもみなかった。嬉しすぎて涙が出そうだ。
 それでも、有馬君と私はきっと釣り合わない。有馬君は人気者だし、私は地味だし……。そう思うと、これ以上私と有馬君が付き合うのは、なんだか気が引けた。有馬君の株が私のせいで下がってしまうと……、昨日はそんなことばっかり考えて、ネガティブな気分に浸ってしまった。



「有馬君がさ、すぐに好きじゃなくなるって……有馬君がオタクだからってこと?」
「……あぁ、やっぱ気づいてた」
「そりゃね、一緒にいると何だかすぐに分かっちゃった。でもね、私そんな有馬君のことも好きなんだ」




 たとえ、有馬君が私のことを何とも思っていなくても、有馬君が私のことを嫌いでも、それでもいい。
私の気持ちを伝えたいんだ。


「……私、ずっと有馬君を見てた。告白して付き合い始めたけれど、有馬君最初は私の名前すら知らなかったでしょ? それでも、私は有馬君と付き合えるって嬉しかったんだよ。……付き合い始めて、有馬君の意外な一面とか知れて、毎日がとっても楽しくて。一緒にいる時間が私にとっては宝物だったの。たとえ、有馬君にどうも思われていないだろうと、私は有馬君のことが好きなの。大好きなの!!」




 なぜか涙が溢れそうになった。体中が熱くなる、有馬君が何だかぼやけてきて、よく見えなくなってきて。
 あぁ、涙が出てるんだ。頬を伝る何かに気づいて、私は口元が緩んだ。


 好き、大好き。
私は有馬君が大好きなんだ、もし君が私に何の感情を抱いていなかったとしても、それでも私は思い続ける。



「俺は……沢渡さんが思ってるような人じゃないし、そんな風に思ってもらえるなんておこがましい存在。でも、やっぱり好意を持たれるって嬉しいんだね。沢渡さんと一緒にいると、俺すごく楽しかったんだ。今までは自分を全部さらけ出したら、引かれてばっかりだったし」



 有馬君の言葉に、私はまた涙があふれてしまう。




「それに、沢渡さんのことちゃんと知ってたよ。……あの日、名前を聞いたのは、ただ会話を続けたかったからだから。だから、名前を知らなかったわけじゃない」
「……へ」



 有馬君が小さく笑ってそういった。
私の名前を知っていてくれたんだ。そう思うと、また嬉しくて。胸から何か熱いものが込み上げてくる。ドクンドクンと熱くて、熱くて。
 

「私、有馬君の彼女になりたいです」
「……もちろん。これからもよろしくお願いします、柚菜」



 名前を呼ばれて私は吃驚して頭が真っ白になった。胸がキュンキュンなって苦しいよ、あぁ私の表情は今どうなっているのだろう。
きっとリンゴみたいに真っ赤になってる。そんな赤い顔を有馬君には見られたくない。


「何で顔隠すの__? もったいない」


 有馬君は軽く私の上顎に手を当てて、くいっと持ち上げた。
すぐに私の頬が赤くなっているのがばれてしまう。


「可愛い、柚菜」


 君は不思議だ。
私は君のせいで毎日がとても楽しいのに、毎日がとても苦しい。
君を想わずにはいられないのだ。好きじゃなくなる、そんなのはきっと無理だ。






 君の青春に××してる。
……有馬君の本当の恋人になった水曜日。








おしまい。

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