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*2*
いつもどうりの彼女の言葉に涙がこぼれおちそうになった。でも、彼女に泣いている姿なんて見せたくなかった僕は涙目になっているのが彼女にバレないように、少しうつむいた。
「は…はじめまして。静さん」
少し声が裏返ってしまった。
「貴方も私のお見舞いに来てくれたのね?ありがとう」
静さんはそう言うと、僕に優しく笑いかけた。
でも、静香さんに優しく笑いかけられる度に、僕の心は鈍く痛んだ。
静さんは僕のことを『貴方』と呼ぶ。
静さんにとっては僕は初めて会った赤の他人なわけだから、僕の名前を呼べるはずもないのだけれど、静さんに、僕のことを『貴方』と呼ばれると、静かさんに拒絶されているようで、やっぱりまた泣きそうになる。
「静さん。僕は翔太。花井翔太って言います」
僕は耐えきれなくなってそう、静さんに告げた。
「翔太くん…ね?よろしくね」
僕は静さんに名前を呼んでもらえて、嬉しかった。
…でも、僕の名前を静さんに伝えたら、もしかしたら、僕のことを思い出してくれるかもしれないと淡く期待していたので、すこしさみしかった。
これも、いつものことのハズなのに。
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