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作者: ドルフィンドラゴン (総ページ数: 1ページ)
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*紹介文/目次*
ある年。動物のDNAを使った実験で多くの変わった生物が生まれ、世の中で繁殖してきた。
その中には人懐っこい友好的な両棲生物がいた。
青い背に白い腹、丸く尖った口と体中に生えた鰭、蛇の様に太くて長くしなやかな胴体、細長い舌、鋭い歯―。イルカらしさを持つ龍(ドラゴン)の様な生き物「海豚龍(ドルフィンドラゴン)」である。
頭が良いだけでなく、その巨体に似合わない身軽な動きが観る者を魅了する。その時代では数頭の海豚龍によるパフォーマンスショーが水族館に人気を呼んでいる。
ある日の水族館。海豚龍に曲芸を教える女性訓練士は休憩時間、同じく休んでいる海豚龍の待つプールに向かっていた。
ドアを開けると目の前の海豚龍が勢い良く飛び掛かり、訓練士を押し倒す。
重くてひんやりとした感覚が体に感じる。気が付くと訓練士の体に海豚龍の胴が絡み付いている。
海豚龍は抱き付きたがっている。訓練士は理解し、大人しく待ってみる。
すると海豚龍は這い回って、訓練士の周りを胴で取り囲んだ。両腕ごと体を縛るとそのまま訓練士を持ち上げる。後は余った胴を巧みに動かし、両脚にも巻き付ける。
訓練士をその内に収める大きくて狭い渦。蛇でいう「とぐろ」であるのだが、巻き付けていない方の胴はまだまだ余っている。
龍からすれば全身を使って女性に抱き着いている状態だ。
胴に手足ごと体を縛られ、訓練士は頭しか動かせなくなっていた。
その胴は滑らかで弾力性があり、ひんやりと冷たい。訓練士はまるで冷たいクッションに覆われた様な状況にいた。
でも訓練士は分かっている。海豚龍が相手に巻き付くのは食事ではなく愛情表現だからと。
胴を巻き付け終えた龍は首を高く持ち上げ、笑みを浮かべると細長い舌で自分の口を舐め、幾重にも巻き付けた胴を訓練士の全身に押し付ける。ゆっくりと胴が全身に軽く食い込んでいく。
胴で相手の呼吸や心拍数などを感じ取った海豚龍はそれに合わせて相手の呼吸や血流を妨げない程の程良い筋力で圧迫していく。
訓練士は締め付けられていても苦しそうな様子も見せず、愛着のありそうな締め付けに心地良さを感じている。なぜならこの締め付けは自分の体をマッサージして解してくれる。
その姿に龍は尾鰭を大きく振りながら嬉しそうにしていた。
時は経ち、訓練士はとぐろの中で気持ち良さそうにしている。龍は大きくて平たい鰭=腕をゆっくり伸ばし、訓練士の頭を優しく撫でた。
さらに龍は頭を近づけると訓練士の頬に自分の頬を掏り付ける。訓練士は気を許してしまった様で龍に身を任せるのだった。
後日。閉館時間が近づき、仕事を終えて帰ろうとしていた訓練士。玄関で海豚龍に出迎えられる。
海豚龍はいきなり訓練士に巻き付くと、締め付けながら両腕を広げ、とぐろごと訓練士を抱き締める。
その顔からは限りない愛情が垣間見えた。
1か月後。水族館は監視カメラで録画した映像からあるものを公表した。そこに映っているのは海豚龍がアシカに巻き付いている姿。そのアシカは長い時間締め付けられていたが、海豚龍が離れた後で見てみると呼吸がしっかりしたまま眠っていたそうだ。