完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~ 110~ 120~ 130~ 140~ 150~ 160~ 170~ 180~ 190~ 200~ 210~
*1*
第1話「初めてのポケモン 初めての友達」
・今回の注目ポケモン、ワニノコ
・注目すべきポイント
物語冒頭のシーン
最初の友達との出会い
テレビには、海底が映っていた。海の底で2まいがいポケモンのシェルダーが貝殻を開け閉めしていた。海原でラプラスが陽気に歌を歌っている。舞台は変わり、森の中。ふうせんポケモンのプリンが歌を歌っているとピカチュウが眠らされることを怖がって画面から退場させた。
そして、チコリータ、ヒノアラシ、ワニノコが交互に登場すると同時にリザードンが現れ、かえんほうしゃを吐いた!
「はああ、暇だなあ・・・」
そんなテレビを見ていたのは黄色い帽子に赤い長袖、黒い半ズボンを着た少年、名前はヒビキ。ワカバタウン出身の少年である。彼もポケモンを持ってもおかしくない年齢だが、未だにポケモンをもらえていなかった。テレビでポケモンバトルを見て悶々とする気持ちを和らげる日々を送っていた。ヒビキは部屋から降りてリビングに来た。
「母さん、おいしい水は無い?」
「あら、ヒビキ。ちょうどいいタイミングね」
「タイミングって、何だ?」
お母さんの言葉にヒビキが首をかしげると、あることを伝えた。
「ウツギ博士が貴方のことを呼んでたわよ。何でも貴方に渡したいものがあるんですって」
「ウツギ博士が、またまた、どうせお土産のいかりまんじゅうなんだろ」
「どうも、貴方宛に・・・・、あ、これはまだ言っちゃいけない。取り敢えず、研究所に言ってみたらどうかしら」
「ふうん、おし、それじゃあ行ってみるか。母さん、ちょっくら行ってくるぜ」
ヒビキは家を出て、ウツギ博士の研究所に入った。
「たのもーっ、博士!」
「やあ、ヒビキくん。いい所に来たね」
研究所に来ると、メガネをかけたいかにも人柄の良さそうな感じのする人、ウツギ博士がヒビキを出迎えた。
「俺に用があるって聞いたけど、何だ?オクタンにスミを吐かれたとか?」
「そうじゃないよ、君に渡したいものがあってね」
そう言うとウツギ博士は机にある物を置いた。それは水色のポケモンのタマゴだった。
「これって、ポケモンのタマゴか?」
「そうなんだよ、君宛ての小包に入っていてね」
「で、誰が届けたんだ?」
「それが、差出人が解らないんだよ。突然研究所にやって来て、君が来たらこれを渡してくれって言うなりどこかに行っちゃったんだ」
「変な話だな、あ、タマゴが?!」
ヒビキが見ると、タマゴが突然動き出した。ヒビが入り殻が破けて、光とともに全壊した。
「ワニワニーっ!」
タマゴから、おおあごポケモンのワニノコが出て、元気よく大きな口を開けた。
「ワニノコのタマゴだったんだ!」
「やった、生まれた!」
ヒビキが誕生を喜ぶと、彼を見たワニノコが飛びかかった。
「あれ、何だよこいつ、俺に飛びついて来やがった」
ヒビキはニコリと笑ってワニノコをなでなでした。
「君のことを親だと認識したんじゃないかな。誕生した生物は初めて見たものを親と思うって言うしね」
「へえ、俺が親か。ちょっと待て、お母さんはどうするんだよ!親父なら俺が務まるけど・・・てそもそも俺、結婚してないか・・・」
「はは、そうだね。ヒビキくん。そのワニノコを連れて少しばかり散歩してみないかい?」
「散歩か?」
「昔、モンスターボールが無かった頃、人々はポケモンを連れて旅をしていたって言う説があるからね。その研究のお手伝い、ていう意味だけど、協力してくれるかな?」
博士の願いをヒビキは了承した。
「散歩ぐらいならいいか。冒険ってわけじゃないけど暇つぶしにはなるしな。じゃあ、ちょいとばかし行ってくるぜ!じゃあな、博士!」
「ワニワニ〜っ!」
博士とワニノコは手を振って研究所を出た。ワカバタウンを出て29番道路に入った。
「いいか、俺がお前の親だからな。親の俺の側を離れて勝手なことをしたりするなよ。これは大事なことで・・・ってあれ、おいいないぞ」
ヒビキが見てみると、ワニノコの姿がいなくなっていた。辺りを見渡したが、どこにもいない。すると、お尻に何かの違和感を感じた。後ろを見ると、
「ああ、お前!俺の尻に噛み付いてやがったな、てやんでい!」
ワニノコがヒビキのお尻に噛み付いていたのだった・・・。
しばらく歩いて30番道路に来た。
「いやあ、よく歩いたよな」
29番道路を抜けてヨシノシティを通り過ぎ、30番道路まで来るとワニノコは少し疲れていた。ヒビキは近くの木に座ると、ワニノコを休ませた。
「ふう、お前も疲れただろう。ここらで少し、休んでくとするか」
ヒビキが撫でるとワニノコはすやすやと眠りについた。ヒビキも木にもたれて昼寝に入る。すると、木の上でガサガサと何かが動いていた。
「ん、何だ・・・?」
ヒビキが目覚めて上を見上げると、
「ちょっと、そこ退いてーーーーーっ!」
木の枝が折れて一人の少年が落ちてきた。
「うわあああああああああ!」
ヒビキはその少年にぶつかってしまった。ガッシャンと音がして木に付いていた葉っぱが二人に降り積もった。
「痛たたた、何だよ・・・」
「はあ、痛かった・・・」
そこで二人は顔を合わせた。ヒビキの目の前にいたのは、紫の髪に黄緑のボーイスカウト風の半袖の太ももが露出した短パンを履いた、手に虫取りあみを持った少年だった。虫取りあみの少年は慌ててヒビキに声をかけた。
「あ、君!大丈夫だった?!怪我してない?」
「ああ、これぐらい何ともねえよ。しかし凄い登場の仕方だったよな。寿命が5年縮んだぜ」
「ごめんね、ちょっとこの辺の虫ポケモンを調べていてね」
少年はそう言って虫取りあみを揺らした。
「虫ポケモン?」
「そう、僕は虫ポケモンが大好きでね。将来は虫ポケモンの博士になるんだ。でも、世間では虫ポケモンは弱いなんて馬鹿にされてて・・・」
そう言うと少年は悲しげな顔をした。
「苦労してんだな。そんな奴等は放っとけばいいさ。一つのタイプのポケモンに情熱を注げるなんてすげえじゃねえか。夢はもちつづけりゃいい。それを馬鹿にする奴らなんか気にすんな」
「君、励ましてくれるんだね・・・。ありがとう。所で、君、名前は何て言うの?」
「俺、俺はヒビキ。一端のトレーナーさ。君は?」
「僕はツクシ、虫使いのツクシ。よろしくね、ヒビキくん」
「おう、こちらこそよろしく、ツクシくん」
ヒビキとツクシは笑顔で互いの手を握って握手した。
「ふふ、君とはいい友達になれそうだね」
「おう、俺もな」
嬉しそうな顔をする二人。その時、ヒビキのポケモンギアが鳴り出した。
「あれ、何だろう?」
「なんでえこんな時に、もしもし・・・」
『ヒビキくん、大変、大変だよ!』
電話に出ると相手はウツギ博士だった。
「どうしたんだよ博士、エイパムに眼鏡を取られたのか?」
『そうじゃないんだよ、実は大変なことが起きて・・・』
「大変なことって何なんだ」
『と、取り敢えず研究所まで来て!じゃあ!』
博士は慌てた様子で電話を切った。
「あ、博士、切りやがった!」
「ねえ、ヒビキくん。今の電話の人って・・・」
ツクシが興味津々にヒビキに尋ねた。
「うん、ウツギ博士だけど」
「やっぱり、博士の生の声が聞けるなんて感激だなあ。ウツギ博士といえばポケモンのタマゴの研究に詳しい人で研究家を目指す僕も尊敬してるんだよ」
「へえ、そうか。博士が聞いたら喜ぶかもな。て、言ってる場合じゃねえな」
「うん、電話だと何かあったみたいだね」
「こうしちゃいられねえ、早く行くぜ!」
ヒビキとツクシは急いでワカバタウンに戻っていった・・・。