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カオスヘッドな僕ら【連載終了】
作者: むう  (総ページ数: 51ページ)
関連タグ: コメディー 未完結作品 妖怪幽霊 現代ファンタジー 天使 
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*18*


 〈チカside〉

 だって考えて見てくれよ。
 いい歳した男子中学生(幽霊)が、悪霊相手に『さぁ愛の力は無限大!』みたいなセリフと共に、羽やらハートやら星やらの装飾がついた弓で戦うって、どう?
 最近はプリキュ〇は男の子でもなれるらしいけれど、僕はごめんだよ。
 
 そもそもの話、札狩って札を外すだけなんじゃなかったか?
 悪霊と戦うなんて聞いてないよ。
 横目でギロリとクコを睨むと、クコは当たり前とでもいうような調子で、


「うちはちゃんと言うたで。札狩はようするに悪霊退治って」
「お嬢ちゃんの言う通り! 札狩っていうのは悪霊退治! 悪霊をメッタメタにして、町の治安を守り、果ては世界の平和を守るのが役目なのですっ!!」


 両手を前に付き出して、熱演するバキュン先輩。
『なのですっ!』って言われてもなぁ……。

 ん? そういえば、八雲のほっぺたにも札がついているよね。
 初めて八雲に会った時、札をはがそうとしたら紗明が邪魔をして、結局取るチャンスがなかったんだっけ。
 それ、取らなくていいの?

「これはつけていてもオッケーなんだよ」
「なんで?」
「いい妖怪しか呼び寄せんし、一緒に戦えたりもできるからさ」

 ま、一番最初に呼び寄せたものはあんまし使えないけど、と八雲はボソッと呟き、隣で真面目に正座をしている紗明をチラッと盗み見た。
 彼女の言葉の意図を理解して、僕は軽く頷く。


「というわけでおモチくん。お互いこういう死神や天使に出会ってしまったのは仕方ないけど、一緒に札狩頑張ろうね」
「あ、ああ……うん。痛くない範囲で」


 と僕が返事をしたと同時に、床に置いていたクコのiPadからピロンと通知の音がした。
 っていうか、いつも思うんだけど天界の文明って一体どうなっているんだろう。

 この前こっそりそのiPadの中身を見てみたことがある。
『下手でも飛べる! 天使の飛び方入門編』
『バカでもわかる! キューピッドのお仕事』
『天使検定10級』
 という変なアプリがずらぁぁぁぁーっと入っていたっけ。
 

「あ、『天界わくわく★チャット』からロリとじーさんのメッセージが来とるわ」
「誰と誰の何!??」

 て、天界わくわく★チャットだって?
 僕の常識内で推理するなら、そのチャットってもしかして地上で言う所のLINEみたいなやつ?

 クコの肩越しから、バレないように彼女が操作するiPadの画面を八雲と盗み見る。
 クコは、自分の自画像アイコンで『くこ@低所得♪』というアカウント名を使っていた。
 君が低所得なのは、地上に居られるのは10分までという大事なルールをあっさりと破るからじゃないか? 間違いなく『低所得♪』と笑ってスルー出来ることじゃない。

 
【ロリ@ももたんと逃亡中:さんから一件のメール】
【ネートル・ネクロニカ:さんから一件のメール】


 だれ? これ。
 僕と八雲は揃って首をかしげる。
 その間にも、クコはキーボードを物凄い速さで操作し、送信ボタンを押していた。
 再び、画面を凝視する。


【ネートル・ネクロニカ:クコ! お前ちゃんと仕事しないなら解雇するぞ!!】
【くこ@低所得♪:じいさん今までおおきに(泣)】
【ネートル・ネクロニカ:アホォオォオ!!】


 どうやらネートル・ネクロニカと言う人は、クコの上司らしい。
 そりゃ、地上で死んだ人を天界に送り届けるのが仕事なのに、何日も帰ってこないから、怒るのは当然だよなぁ……。
 

【ロリ@ももたんと逃亡中:私も札狩チームに加わったので今からそっち行きます!】
【くこ@低所得♪:え!? 今から来んの? あんた今どこにおるん?】
【ロリ@ももたんと逃亡中:もうすぐで紗明パイセンのいる家につきますよ^^】

【くこ@低所得♪:え、わ、分かったわ。でもあんた、『ももたんと逃亡中』ってなんなん?】
【ロリ@ももたんと逃亡中:百木周の弟と逃走してるんですよ。あとで話しますね! じゃっ】


「「はああああああああああああああああああああああああ!!!???」」

 僕とクコは揃って大声を上げた。
 クコはあと数分で家に来る後輩(?)の突然の行動に驚いたから。
 僕は、その彼女がよりによって自分の弟と行動していることにびっくりしたからだ。


「ど、どどどどど、どういうことこれっ??」
「うちに言われても分からんもんは分からん!」

 急激な展開について行けず、クコは半分涙目になっていた。
 とにかく一同は八雲のベッドに乗っかり、揃って窓の外を見る。
 お昼前で太陽が高く上った時間、それも土曜日なので、前の道路を歩く人の数は多い。

 そんな中、とりわけ目を引くのは。
 どういう原理でああなったのか分からないが、飛行機と同じ高さを滑空する、一人の男の子。
 その子は、悪魔のようなコウモリの羽を背中に生やした女の子に担がれて、飛行機と同じ速さで落下していた。


「朔ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!?????」


 嬉しいんだけどちょっと一回どういうことか説明してぇ!!!


 

 

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