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作者: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (総ページ数: 6ページ)
関連タグ: メイドウィン小説 スマブラ戦記シリーズ 魔法少女 ぽっちゃり バッドエンド
*1*
『任天堂世界』に招かれた人間はいつも最初は同じだ。
地面が雲で出来た未知の空間に、いつの間にか倒れている。
前後の記憶は無い、そして……必ず自分の前に長蛇の列が出来ている。
不思議とその列に自分達も並び、そこで任天堂戦士という肩書きと能力を与えられ、驚異と戦うために選ばれたと言われる。必ずそこから始まる。
そう、能力者になる。
間法凪は考えた、能力者ということはつまりここに居るのは特別な存在であるということ。
「魔法少女もいるはずだ」と考えた。
だが周りを見渡す限り魔法少女らしい格好の人物はいない。
ただ目の前に行列があり、自分はその最後尾に並んでいて、前に進むにつれどんどん人数が増えている。そして何やら騒がしい。
(いきなり訳分からないかも知れないが、聞いて欲しい)
この男、間法凪は簡潔に言えば魔法少女が好きなのである。
待って欲しい。彼はロリコンでなければオタクという訳では無い。あくまで一般的な趣味嗜好を持つ一般人であり、どちらかと言えば女性が好きであったし今もそれは変わらない。
しかし魔法少女は別だった。彼にとっては神のような存在であり、もし魔法少女に会うことが出来るなら結婚してもいいと思っていたほど好きである。
「能力者が山ほどいるなら、それをどうにか魔法少女という扱いに出来ないだろうか」
「あわよくば世界を救って本物の英雄としてプロデュース出来ないだろうか」
かくして、凪の魔法少女チーム結成の野望が始まったのである。
「さあ皆、俺と一緒に戦おうぜ!」(キリッ!)
というポスターを早速作り、広場の掲示板に張りつけた。そしてその日から、彼はあちこちを探し回り、それっぽい候補を見つけて奮闘していた。
何が起こるかわからない危険なところではあるはずなのだが、そんなことは知ったことは無かった。
「一番最初の魔法少女といえばやっぱりピンク服、しかも変身した時スカートひらりが必須条件だからな」
魔法少女を見つけるべく凪は自分の能力をフル活用し続けていたのだ。そして見つけた2点同船し及び魔法少女候補達は……全て女の子であったが……、どうにも違うように感じてしまう。
凪の任天堂戦士としての能力として選ばれたゲームは『千年家族』、これは見習い神様となって1つの家族を見守りつつ手助けして千年発展させる事を目的とする作品だ。
このゲームを能力にすることで凪は対象のキャラクター達に様々な形で干渉することが出来るようになる。
ただし一度に1人しか選べないうえ、1人のキャラクターにつき3回までという制約があったのだが……。
凪はこの能力を用いて、少女達を自分の思い描くようなヒーローへと変えていく計画を立てていたのである。
「とは言うが、まだ候補すら見つかっていない……」
凪には焦る理由もあった。彼は能力を使って魔法少女を探すにあたり、「自分から名乗り出るくらいじゃ無いと意味がないよな?」という考えのもと能力を使ったのだが、実はもう既に魔法少女を名乗るものが居るのでは?という可能性が出てきたからである。
「俺もそこまで馬鹿じゃない。こんな能力で見つけ出せるのはあくまで能力者だけ。普通の人間には見えないだろうからな」
能力者の素質のある人間はある程度限られているが、その分見つかる可能性が高いと言えるだろう。
そして遂に……
「!!」
本能で感じた、魔法少女の素質(といっても既に能力者だが)がありそうな人間が近くにいる気がする。
「この辺りに魔法少女(になれそうな子)がいる……少〜中学生くらいで、ピンク衣装が似合って、穏やかな心を持つ女の子!」
繰り返すが凪はロリコンではない、あくまで好みの範囲である。決して小さい子供にしか興奮できない性癖の持ち主でもなければ、そもそも幼女相手にそういう感情を抱くことは無い。むしろそういった人達に対して「お前ロリコンか?」と軽蔑しているタイプだ。
それはさておきそれっぽい少女を本能で発見した……
発見したのだが……
「おお……うん……」
その魔法少女候補らしき少女は……もっちりしていた。
断言するとデブではない、ぽっちゃり体型と言っても許されるぐらいの体つきだ、だが顔も体も丸っこくて全体的に柔らかい印象がある。
ただその柔らかさと反比例するように彼女の纏う雰囲気はとても穏やかだ。そしてとても落ち着いていた。そのせいなのか彼女は見た目よりも少し歳上に見える程大人びているように見える。
そして何より特徴的な髪型をしていた。
「ほう、ポニーテール!そして……まさか、ツインテだと!?」
そう、彼女もまた2種類の髪型をしていたのだ。
(この子しかいない!!この子が魔法少女に向いている!)
間法凪が運命を感じた、ちょっと太ってても案外ウケるかもしれないしこれはこれでアリだ。
「き、君の名前は……」
「あ…その、私は、飴野知世子といいます……どうかしましたか?」
「………俺は、間法凪」
「単刀直入に言おう、任天堂世界に入る時に全員が言われた、驚異に立ち向かう為に戦士になってくれという言葉……」
「俺はそれの手助けをする者だ……」
そう言って凪はポケットから紙を取り出し、知世子に渡した。そこにはこう書かれていた。
【任天堂世界魔法少女クラブ『ロリポップキャンディ』会員募集中! お友達紹介特典あり、詳しくは下記のURLまで!】
知世子は渡されたチラシをまじまじと見つめている。そして数秒後に口を開いた。
「ロリポップ…キャンディ…?」
「そう、現状は君が魔法少女として戦う時の名称だ」
「専用の衣装も用意してある」
………
「この格好はちょっと…」
ピチッピチッ…という効果音の聞こえてきそうなコスチュームに身を包む。いや、よく見ればその服装が体にフィットしていて、胸の大きさも尻の肉付きの良さもよく分かる、かなり扇情的な格好をした感じになってしまった。
「流石にこのサイズは想定外だった……また後で合わせたものを用意しなくては」
「あの……この衣装は」
「ん?オーダーメイドだがどうかしたのか」
「あ、はい……それで、魔法少女になって戦うってどういう……」
「俺たちは…いや、ここに居る全ての人間は唐突にここに送られた」
「最初に言われた驚異もあるが……人間同士の争い、未知の怪物、災害……問題が山ほどある」
「その中で、魔法少女に変身する特殊な人々を知らしめて安心感を……」
「そ、そんなこと言われても……魔法なんて使えないし…」
「そこら辺は任天堂戦士としての能力で誤魔化しが聞く!」
凪は自信満々だ、知世子や他の魔法少女候補がどういった能力を得ているかも知らないのにでもある。
しかし凪には考えがあった。
(千年家族の能力で、関係者のプロフィールは全て繊細に分かる……知世子の全てが俺の脳内に入ってくる)
(なるほど……彼女の能力名はカービィのグルメフェス…聞いたことないゲームだが、それさえも繊細に頭に入ってくる。)
『カービィのグルメフェス』巨大なケーキを舞台にして、カービィを転がしてイチゴを食べさせながらゴールを目指す、アスレチック・レースゲームだ。
能力としては自分の体重と体力を増やしたり、主にイチゴをエネルギーに変換する能力である。
(それにカービィなら、何かしらコピー能力として魔法っぽいことが沢山出来るはずだ……)
「あの……魔法少女になると言われても、私は何をしておけば……」
「何?気にする事はない、こういう物は探しても向こうから湧いて出てくるもので……」
「うわーーっ!!た、大変だー!!」
突如向こうから騒ぎ声が聞こえる、凪がちょっと歩いて声を聞いてみると……
「移住区の方で火事だ!あちこちの家が焼けているらしい!」
「消化しようにも下の方から燃えていて手が付けられないらしい!」
「………」
「来たぞ」
「えっ!?」
「最初は宇宙怪獣とか悪の怪人倒すよりはこういう下済みの方がいい、人助けをしたとなれば宣伝にもなるし親しみも増える」
「何より……」
善意で人を助けるのは、最ッッ高に気持ちがいい!!
「知世子!早速移住区に向かうぞ!!」
「こ、この格好でですか!?お腹が出て恥ずかしいんですけど……!!」
魔法少女の衣装のまま知世子を走らせ、移住区へと向かう。移動中も会話は途切れることが無い。
……
「思ったより状況が酷いな……」
移住区は消化が追いつかず、炎があちこちを
焼き尽くしている。辺りからは人々の叫びが聞こえる。
凪はその光景に絶句し、知世子もその惨状に言葉を失う。そして同時に……
(これならいける)
と思った。
知世子の服に付けておいた箱に手を付ける。
『コピーフード能力』、カービィのコピー能力とは別で導入されている力で、数こそ少ないが敵ではなくお菓子を口に入れることで能力を使う。
(火を消すとなると……これか)
「こ、これを私にどうすれば!?」
「問題は無い!これを使えば!」
「トルネイドソフトー!!」
「うおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」
その雄たけびと共に現れた、ピンクと青、2色の渦が巻き起こり辺り一面を渦巻く風によって包み込む。そしてその中心にいるのは間法凪、その右手に持っているものは大きなソフトクリーム、そう……
「これを食べるんだ知世子!」
「は、はうっ……コピーフード能力『トルネイド』!」
知世子の中心から構成される竜巻が火を消し、更に凪のソフトクリームにより火の勢いを加速させた。
(これは中々……いやかなり便利じゃないか?)
「さぁ、この力で一気に片付けるんだ知世子!俺の力も貸す!やれ!」
「はい!分かりました!行きます!トルネードスロー!!!」
知世子が投げた竜巻はまるでミサイルのように回転しながら突き進む。やがて着弾した瞬間、爆音とともに激しい爆発が起こった。
………
火は消えた、火は。
とりあえず名刺だけ置いて、移住区から退散した。
………
「凪さん……これで本当にいいんですか?」
「大丈夫だ、人知れず街を救ったし、あちこちで話題になっているに違いない」
「そもそも俺が選んだ少女だ、何も問題ない」
「いやでもこの紙……」
知世子の手には凪の書いたチラシが握られている。そこには『ロリポップキャンディ、大活躍』と書かれている。
「ああ、それは俺が書いたものだ。実際にあった事を誇張して書いている、後はそれが真実になる」
「………そうですね、そうなるといいですね」
「知世子……いや、ロリポップキャンディ、この世界の平和を守り人々を安心させるにはまだまだ頑張らないといけない」
「この世界に脱出できるかはまた別として、平穏に安心して活動するために魔法少女が必要なんだ」
「でも……私に出来るのでしょうか……私なんてデブだし……この服もお腹が……お尻だって……こんなのじゃあ……」
「大丈夫だ、ロリポップキャンディ、まだぽっちゃりの範疇だしそれくらいなら好きって人もいる」
「むしろ新しいじゃあないか!ぽっちゃり系魔法少女!」
「凪さん……」
「おい聞いたか!?移住区で火事が起こったかと思えばピンク色のデブが高速回転してたらしいぞ!?」
「………やっぱり無理な気がして来ました」
「大丈夫!大丈夫だ!君はぽっちゃりだから!」