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*紹介文/目次*
「おはよう!優貴ー!」
僕の名前を叫びながら、走ってくるのは、幼馴染の朱音(あかね)だ。頭の形をなぞるようなショートヘア、少し大きい目。一般的に言われる美人だと思う。そんな朱音と14年間も生きてきた僕には目立った特徴がない。よくいるマッシュの髪型で、真面目そうに見えるが、実際は真面目でもない。
「優貴…さっきから、ずっと私のこと見てるけどさ、どうしたの?私が可愛くて見惚れているとか?」
僕の目を覗き込むように見てきた。
「べっ、別に朱音のこと可愛いなんて思ったことないよ」
少し焦った口調で言う。なぜなら、朱音を好きだから。14年間も一緒にいて好きにならない訳がない。
「可愛いって思ってくれないなら、私の家に監禁した方がいいかな…そしたら私のこと見てくれるかも…」
怖いことを呟いているように聞こえたけど気のせいだろう。朱音がそんなことを言うわけがないじゃないか。
「優貴、大丈夫?学校、着いたよ」
朱音のことを考えていたら、学校に着いたことに気づかなかった。朱音とはクラスも一緒で席も隣である。こんなに一緒にいるのに付き合えてないことが悲しくなる。
「おはよう。雪菜さん」
クールな雪菜さんに話しかける。そっぽを向かれ、無視されたと思ったら、小さい声でおはようと言ってくれた。雪菜さんは、ボブヘアでつり目である。クールなことから「雪の女王」と呼ばれることもあるが、実際は、話しやすい人かもしれないと思って、僕は話しかけている。
「真莉さん、おはよう」
「おはようございます。優貴さん」
真莉さんはロングヘアに眼鏡の優等生だ。生徒会長もやっている。この人が珍しく忘れ物をした日に、ものを貸してあげたら、仲良くなれた。
「他の女と話すなよ…私だけ見てよ…」
朱音がボソッと呟いたので、朱音の方を見る。少し微笑んでこちらを見ている。
「優貴、久しぶりに勉強会しない?」
小さい頃はよくしていた。最近はしてなかったけど、久しぶりに勉強会をしたい気持ちは、僕にもある。
「放課後、私の家に来てね!」
授業を終え、放課後になった。朱音はもう帰っている。急いで帰らなきゃと思い、走って帰ろうとする。廊下を走っていると、足を引っかけられる。転びそうになり後ろを見ると、真莉さんがいた。この人が足を引っかけたのか?
「廊下は走らないでください。とりあえず生徒会室に来てください」
生徒会室に連れてかれる。
「分かりましたか?廊下を走ったら、様々な危険性があるんですよ。あなた自身が傷つくかもしれませんし、誰かを傷つけてしまうかもしれないんですよ」
廊下を走っただけなのに、注意をされ続けて気づいたら18時。こんなに遅いと、朱音に怒られるかも。
「真莉さん、帰っていいですか?」
「いいえ。逃がしませんよ。私から逃げれると思ったら間違いですからね」
真莉さんの目からハイライトが消える。危険な気がしたので逃げようとする。扉が開かない。外から鍵をかけられている?
「誰か!助けて!」
扉を叩く。後ろから叩かれる。
「真莉さん、落ち着いて!」
「あんたが私から逃げようとするのが悪いんだよ。私だけを見ればいいのに、他の奴を見るなんて…こうするしかないね」
真莉さんがナイフを出す。その時に扉が開いた。先生が扉を開けてくれた。
「ッチ、上手くいきそうだったのに」
真莉さんが呟く。逃げるようにして僕は、朱音の家に向かう。朱音に今、あったことを説明する。
「ふーん、そんなことがあったんだ」
朱音がいつもより低い声で言う。次の日、真莉さんは学校にいなかった。
「真莉さんがいないなんて珍しいね。なんでいないんだろう?」
「なんでだろうねー」
朱音が棒読みで微笑みながら言う。朱音が帰っていく。
「ねぇ、優貴…」
後ろから声をかけられて驚く。誰かと思い振り替えると雪菜さんだった。雪菜さんが自分から声をかけてくるなんて珍しい。
「雪菜さん、どうしたの?」
「私、昨日、見ちゃったんだよね。朱音が真莉さんにナイフを向けて脅している様子を。たぶん朱音が真莉さんを休ませたんだと思う」
朱音がそんなことを…
「優貴も気をつけな。朱音に何されるか分からないよ。それより、よかったら家、来ない?」
急に誘われ、僕は驚く。雪菜さんの家に着く。こたつに座り、向かい合って話をしている。
「優貴が初めてだったんだよね。朝から、おはようって言ってきてくれたの。私って少し恐れられてるじゃん。だからそんな私に優しくしてくれる人がいるなんて!って思ったんだよね」
雪菜さんってこんなに喋る人だったんだ。それよりトイレ行きたい。学校で行けば良かった。
「トイレ借りていい?」
「いいよ。そこを右行ったら着くから」
部屋を間違えた。雪菜さんの部屋に入ってしまった。そこには僕の写真が50枚程度、張られている。
「優貴、気づいちゃったか。私、ずっと優貴のこと好きだったんだよね。好きな理由はさっき言ったことだね。私なんかじゃ、ダメだよね」
雪菜さんの目が潤んでいて、思わず抱き締める。急に扉が開く。
「ねぇ!優貴、何やってんの!」
朱音が入ってくる。雪菜さんが僕をキツく抱き締める。
「優貴のこと、傷つけたら許さない」
朱音がナイフを見せる。
「優貴は私だけの物だから!」
朱音が近づいてくる。
「私の方が優貴を愛してるから絶対に譲らない」
雪菜さんも反撃する。
「私の方が先に好きなんだよ。幼馴染で、ずっと一緒にいたんだよ!」
説得するように強く言っている。
「人を傷つけるようなあんたに優貴は渡さないから」
この時から僕は雪菜を好きになっていた。
「あんたが消えれば優貴は私のもの!」
朱音が襲ってくる。また扉が開く。警察が来てくれた。朱音が警察に連れて行かれる。
「優貴、怖かったよね。私は優貴のこと守ってあげるし、誰かを傷つけたりしないから安心して。私のこと好きになってよ…」
最後に本音が聞こえる。
「好きだよ、雪菜」
僕は雪菜の頭を撫でる。雪菜の顔が赤くなる。
「優貴、愛してる」
雪菜が僕にキスをした。その時に僕の脇腹にはナイフが刺さっていた。
「これで優貴は、ずっと私のものだね」