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+*記憶ノ眼鏡*+【完結しました*^ω^*】 
作者: ☆RETAS☆  (総ページ数: 12ページ)
関連タグ: 死にネタ 爽やか小説が此処にある シリーズ物・・・を目指す作品 
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10~

*5*

家に走って、走って、走って走って走って走って!


走ったつもりだったけど、足は家とは反対方向へ向かう。
もう、息が切れてぜぇぜぇと言っているのに、足は重い灰色のコンクリートを蹴り上げ続ける。
目の前の風景が自分の後ろに流されていく。

足と地面の擦れる音、体が風を切る音、心臓の規則的なリズム。
すべてが一つになってゆく。

やっと足が止まった。息が弾む。目の前を見ると、あのおじいさんのお店だった。しかし、店は閉まっている。

― おじいさんと話したい! ―

そう願って、ドアを開けた。

「どこ…?。」

おじいさんなら、うちのこの思いをわかってくれる。きっと、解決してくれる。

「どうしたんだい?。」

ふりかえるろおじいさんが階段を下りてきていた。

「おじいさん…!」

顔を見た瞬間、何かがあふれだしてきた。心からも、目からも、とめどなくあふれて来る。

「どうしたんだい。言ってごらん?」

「眼鏡をかけたら…ひっく…光でいっぱいになって…すごく怖くて…、今自分がなんで泣いてんのかも分んなくなって。何も信じられない自分が嫌になって…。」

もう、何で泣いてんの。意味不明。光を見ただけで怖がるなんて。
ああ、自分って弱いなぁ。そのくせどっか強がってて、すぐ誰かに頼ろうとする。

「それは君が強いから泣いているんだ。流れに身を任せてごらんよ。きっと何かわかるよ。君の大事な【記憶】は戻ってくる。」

そんなの、簡単にできたら苦労しないよ…。
でも、きっと私以外の人は簡単にできるんだろうな。
私には何一つできない。

なんにも。

なーんにも…。

すーっと深呼吸をして、空気を思いっきり吸い込んだ。瞼を閉ざすと、裏に走馬灯が見える。

友達とケンカして、そのまま夏休みに入って、海に行って、偶然その友達と出くわしちゃって、気まず雰囲気のまま二人で海に入って、仲直りした。その後・・・。

その後、友達と笑いあって、いろんな約束をした。
海の深いとこに入って、今度花火大会を見に行こうとか、キャンプしようとか、いろんな予定を決めて、楽しかった。

でも、おっきな波が来て友達だけ逃げ遅れて…。








 


逃げ遅れて・・・・・・?










「おじいさん…?」

ニコニコしていたおじいさんの顔が真顔になる。

― そう、それが君の失くしたの箱の中身の一つ…
                    【記憶】 ―

何も言わないけれど、瞳がものを言う。
流れに身を任せるってこういうことなの?



そう、うちは友達を助けられなかった。
あの時、腕をつかんでいれば、助かった。友達は。
ああ、ホントうちって最悪だ。

せっかく仲直りしたのに。

馬鹿。鈍感。残虐。

友達を見捨てて自分だけで逃げた。冷酷な人間。


床にうつぶせになって声を押し殺して泣いた。
どんなに謝っても、友達は返ってこない。

窓から差し込む紅い光に照らされて、泣き崩れた。

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