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逆ギレマスカット【祝・完結!!ヽ(≧▽≦)ノ】
作者: 冬の雫  (総ページ数: 12ページ)
関連タグ: ラブコメ 恋愛 セツナ系 ちょいギャグ系(多分) 
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10~

*3*

1来たる、マスカットの敵

わたし、姫島 花です。
高校中退して───今なんと、東京から電車でド田舎までやって来ちゃいました!

今わたしがいるのは、その田舎の高校らしき建造物の前。

今日からわたし、この高校に入ることになったんです!

───と、いうわけで。

田舎での高校生活、第一歩目です!

★☆★

「よろしくお願いします」

そう言って礼をすると、教室の中にいる人たちはパチパチとやわらかな拍手をしてくれた。

───自分だけに注目が向くのは、悪い気はしない。

むしろ気持ちがよくて、わたしはずっとここに立っていたいとまで思っていた。

「席 座ろうかー」

…でも、やっぱり先生はこういうよね。
わたしは「はい」と大人しい優等生を“演じ”て、指定された席に座った。

「よろしくー」
「あ、よろしく。なにちゃんだっけ?」
「(…イラッ)……姫島 花です」
「姫ちゃんね、今日から隣同士じゃん!ヤッタ」
「……はぁ…」

ちょっとチャラめの男子は、名前は宮本 大地というらしい。チャラいのに、なんて平凡な名前なんだ。
これからこいつが横の席だなんて、少し落胆した。

「俺のこと、イケメン大地くんでいいからね」
「イケメン、必要ですか」
「一番大事だろ!メインだよ、メイン」
「…………」

…やっぱりこの男、チャラい。
わたしの嫌いなタイプに当てはまりそうだ。
嫌いなタイプは、わたしの優等生の演技をジャマする人間。

「よろしく、大地」
「イケメンは?」
「ナイ」

きっぱりとそう言って、視線を逆に移してみた。

───そこには、机と椅子だけ。

位置からして多分男子だろうが、一応大地に「こっちの人って休み?」ときいてみた。

「ああ、休みみたい。こいつ、頭だけはいいのにいっつも休むか遅刻するかすんだよ。絶対大学受からないね」
「あんたは受けられすらしないでしょ」
「あ、この髪?」

大地がそう言って、自分の髪を触る。

───騒ぐほどでもない、綺麗な金髪だ。

「ココ校則とかないわけ」
「あるわけないじゃん、田舎だよ?」
「…そういう問題か…?」

まあよく考えてみれば色々おかしいのだが、そこはそこで面倒くさかったのでスルーした。
そして、話を戻す。

「不登校の名前は?」
「えー…教えられない」
「はァ?なんで」
「なんでってそれは……───」

大地がそう言いかけた瞬間、教室の扉がガタンと音を立てて勢いよく開いた。
わたしはびっくりして、大地の方に向けていた視線を素早く扉の方へと向ける。

「…ほ、鬼灯!遅刻だぞ!」
「うるせぇ」

少し反応が遅れて それを隠すように怒る先生にその男子生徒はそう言い放つと、ずかずかとこっちへ近づいてきた。

わたしはもちろん目を丸くして、その“鬼灯”とやらを目で追う。

すると鬼灯はわたしの横の、あの席へと 荒々しく座った。

「……ひゅー、マスちゃんこえー…」
「宮本、オレ今イラついてんだわ」
「え、あ…ごめん」
「おう」

……何というか、その男子生徒はとにかく威圧感みたいなものが凄かった。
しかも、わたしの横ということに驚き。
こいつが頭いいって…?ありえない。

「ね、怖いだろ。あれがマスちゃん」
「マスちゃん?」

ヒソヒソと、大地がそう言う。
外見に似合わない意外な名前に、わたしはつい大きめの声でそう反応してしまった。

───すると、ギロっと鬼灯から睨まれた。

獣に睨まれたようで、わたしは体が固まってしまう。
鬼灯はそんなわたしを少しの間 見て、そして次には興味のなさそうにふいっと顔を戻した。

……こ、こわっ……!

「…マスちゃんていうのは、あだ名だよ。本名は……」

そう言いかけた瞬間、今度はチャイムが大地の言葉を遮った。

───鬼灯に遮られたりチャイムに遮られたり───大変なヤツだ。

「…宮本、お前こっちこい」
「…え、えぇっ!?」

チャイムが終わった途端 鬼灯は立ち上がると、あっという間に大地を引っ張って教室から出てしまった…───


……今日、すごくハイスピードで事が進んでいったような気がするのは気のせいだろうか…。



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