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窓際の彼
作者: 肉食ウサギ (総ページ数: 3ページ)
関連タグ: BL 学園 エロなし
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*紹介文/目次*
窓側一列目一番後ろ。そこは彼の席だ。
彼は生徒会に入っているので、教室に来るのは午後の授業ぎりぎりになる。
斜め前の空席をぼんやりと眺めた。
彼はあまり人と喋らない。生徒会役員であることもあって、クラスでは少し浮いているようにも思える。
だけど決して悪いやつではない、と俺は勝手に思っている。…本の栞拾ってもらっただけだけど。
ある日の昼休み。俺は本を返しに図書室に行った帰りだった。
生徒会室から彼が出てきた。そして教室に向かう。後をつけるような格好になったが、他意はない。クラスメートなのだし、しょうがないよな。声をかけようかとも思ったのだが、大分疲れているようなのでそっとしておいた。
…確か生徒会室って飲食禁止じゃなかったか? 俺がそんなことを思い出したのは5限目の途中だった。
もしかして彼は昼食を食べていないのだろうか。いくら忙しいからといって、それでは体に悪いだろう。
そう思い、授業が終わった後、彼に声をかけた。
「なぁ」
彼はいつものように無表情で振り返った。
「何?」
「これ、食べる?」
俺が渡したのはキャラメル。購買で買ったものだ。
「どうして?」
「いや、腹減ってそうだな〜って思ってたから。ふらついてたし」
「そう、ありがとう」
…笑った///。ちょっとくらっときた。綺麗な顔してるなぁ。
彼と話すのは初めてだったけど、見た目ほど冷たいわけじゃなくてほっとした。
それから時々、俺は彼に差し入れをするようになった。
少しずつお互いのことなんかも話すようになった。誕生日、血液型、家族構成。あれ?これってなんか恋人みたいじゃね?
そんな想像をして、嫌じゃないと思う自分に驚いた。俺はいつのまにか、彼のことを好きになっていたらしい。
この学園は、いわゆる王道というやつで、同性愛がそう珍しいわけではない。だが彼は生徒会役員だ。同じクラスというだけの俺が、彼の恋人になるなどありえないだろう。…そう思っていたのに。
「君が好きなんだ」
放課後、教室に残っていて欲しいと言われた。話があるから、と。そしてまさかの急展開。
こんなことがあっていいのか…?いや、きっと俺は待ちくたびれて寝てしまったのだ。そうでもなきゃ説明がつかない。
「返事は?」
夢なら、いいか。そう思った。
「…俺も、好きです」
云い終わる前に抱き締められた。暖かい腕、心なしか早い心音。
もしかしてこれは、夢ではないのだろうか。おずおずと彼の背に手を回して抱き着くと、ギュッと彼の腕に力がこもった。
夢じゃないんだ…。嬉しい、だけど苦しいっ!
「書記、それくらいにしておかないとその子が潰れるぞ」
呆れたような声で止めに入ったのは生徒会長だった。あれ、なんでここに?
俺が戸惑っていると、会長の後ろにいた副会長が説明してくれた。
「書記が生徒会室であなたのことばかり話すので仕事が進まなくて…」
「そんなに好きなら告れよ!って結論になったわけだ」
の、惚気って///。恥ずかしい…。
「私たちがいるのは、その…」
ん?副会長、顔赤いよ?大丈夫?
俺が心配していると、会長が耳打ちしてきた。
「あいつは結構初心だからな。俺たちがいるのは風紀対策だ。教室でヤるとあいつらが煩いからな」
それを聞いて真っ赤になった俺に書記が抱き着いてきたり、仕事を押し付けられた会計が泣きながら文句を言いにきたりしたのは、まぁ…めでたしめでたし、としてしまってもいいだろう。
*2*
あとがき&補足説明
窓側一列目は五つ、二列目は六つ席があります。だから「斜め前の席」。設定は転校生のいない王道学園です。
まったく出てこないですが会長と副会長、会計と書記はそれぞれ幼馴染設定です。会計は風紀委員長と付き合ってます。
以上、読んで下さった方ありがとうございました。