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【銀魂】 短編集5作目 【六角事件後】
作者: 学ラン  (総ページ数: 3ページ)
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*2*

【秋風が吹く頃】



「そういや、近藤さん、
局中法度違反者の介錯、明日だったよな…」

「…あぁ、そういやそうだったなぁ。」


真選組幹部の者にとって、それはこの上ない位に気のすすまない仕事だった。

隊内には局中法度があり、違反した隊士は後日切腹が義務付けられている。
その時に、違反者1名につき1名の隊士がその者の介錯を担当する事になっている。
基本的には真選組は順番制でその仕事が回ってくる。
(違反者が出ない事が何よりなのだが…。)

そして、明日それを行う人物、

真選組最年少の隊士ーー沖田総悟

「…ちっ…、総悟かよ。」
土方はつぶやいた。
隊内で唯一、まだ成人もしていないこの少年に介錯を務めさせる、というのは一体どうなのだろう、と昔から議論されてきた事だった。


「なぁ、トシ……。」

真選組局長である近藤が申し訳なさそうに名前を呼ぶ。

「ん?なんだ近藤さん、改まって」

「いやぁ、やっぱり俺ぁ、総悟に介錯はまだ早いんじゃないかと思ってなぁ……。」
いつものように笑いながら話すがその表情には不安が見て取れた。

「でも、あいつだって討ち入りでは普通に俺たちと同じ位斬ってるじゃねぇか。
それに、総悟もう18だ。大丈夫だろう……」

「まぁ、そうなんだがな?
、ほら、やっぱり今迄仲間だった奴を斬るってのは、俺でも凄いストレスになるからなぁ」

近藤は総悟が9つの時から面倒を見ているだけあり、自分の息子のように大切にしてきた。

「なぁ、トシ…」
「近藤さん、俺だって極力んなこたぁ、やらせたくないが…
真選組〔ここ〕にいる以上何れは
通るみちだ。……


…まぁ、
とはいっても、総悟の様子を見て……だな。」



ーーーーーーーーー
その夜、

ガサッッ!

土方は総悟の部屋の襖を乱暴に開けた。

「何だよ土方、ノックぐらいしなせぇっ」
「うぉっ」

総悟は布団の上でゴロゴロと読んでいた漫画を思い切り土方の顔面に投げつけた。

「まったく、可愛い部下の部屋にいきなり入って来て夜這いですかィ…? これだから欲求不満な大人はいけねぇ……。」

「だっ、誰が欲求不満だっ。ぶっ殺すぞコノヤロー。」


一通り、いつもの言い合いが終わり、互いの暴言も尽きて来た頃。


「で、なんですかィ?…
もしかして、介錯の事ですか?」


「分かってたのかよ、。」

「まぁ、あんたの考えてる事は単純ですからねィ。」

「なんだとっ!……
……まぁいい。 その明日の話なんだが、お前どうする?初めてだったよな?」

「ぷっっ、そんな介錯ごときで何言ってんでィ?俺ァそんなに餓鬼じゃないんですけど。」

沖田はいつも通りに悪態をつく。

「それに俺ァ、違反者を粛清するのに一々感情なんて持ち合わせちゃぁいやせんて。」


「…それもそうか。
まぁ、話はそれだけだ。」

俺はそれだけ言って仕事に戻った。




ーーーーーーーーーーー

翌朝

午前9時、
沖田は元隊士の切腹を見届け、介錯を務めた。

それはそれは、綺麗な切り口だった。
迷いがなく、まっすぐな太刀筋で非の打ち所がない位に完璧だったという。


何事もなかったかの様にその時は過ぎていった。

ーーーーーーーーー

しかし


その日の夜
沖田が居なくなった。
屯所の連中はいつもの様に夕食や酒やらでどんちゃん騒ぎしていた所だった。

近藤や土方なんかは朝夕構わず職務におわれていた。

それに気がついたのは、真選組監察部隊の山崎だった。

その山崎からの知らせを聞き土方は外へ飛び出した。



沖田は冷静だが、近藤のことになると周りが見えなくなってしまうところがあるので、何処かで攘夷浪士達と斬り合いになり負傷してはいないか、連絡したくとも出来ない状況になっているのではないか、と土方の頭を嫌な予感が掠めていった。




しかし、



沖田はあっさりとみつかった。

いつもの甘味屋の近くの橋の上で穏やかに流れる川を見つめていた。

「…総悟?」

うな垂れるように下を見ていた沖田は、ゆっくりと土方の方に目線を流す。

「どうした、総悟。近藤さん達が心配してんぞ。」

ぶっきらぼうな聞き方だが、土方にも不安の色がみられる。


「別に…一人になりたい時だってありまさァ。 18の男子ですぜィ?そうやって、すぐに追っかけて来るのもどうかと思いますぜ。」


「…て、てんめぇ……人が心配してるっつうのにどういう口の聞き方してんだ…ぶっ殺すぞ。」

「…はぁ、だったら来ないで下せぇ。」

土方は違和感を感じた。いつもの言い合いをしているのだが、何かが違う。
沖田に余裕がないのだ。土方をからかう事が生き甲斐の彼だが、今は他の事に精一杯でいつもの様な悪意は全くもって皆無だ。


「……どうした。総悟」

それを悟り土方はいつもに増して柔らかく尋ねる。

しかし、それでも沖田は顔を上げようとしない。

「…仲間を斬るのは…
辛かったか?…」

なかなか聞きたくとも聞けなかった事を土方はやっとの思いで声にした。
そして、沖田の肩は小さく震えていた。


「あ、あいつは…一番隊だったんでさァ。」

「あぁ。知ってるよ」

沖田の表情は未だ分からないまま。時間だけが過ぎていく。

「俺が、もっともっと上手くまとめていれば…もっともっと一人ひとりに気ぃ使っていれば…
……こんな事には、ならなかったんでさァ。」

「…総悟……」

昔からそうだった。沖田は最年少ながら誰よりも人を斬り、血を見て育ってきた。

新入りの隊士なんかには、
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