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*バッドエンドから始まる恋物語*完結
作者: 姫凛  (総ページ数: 6ページ)
関連タグ: グロ シリアス ダーク 孤独 終焉 
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*2*

二話 俺と言う存在が消える




□月○日



父さんと母さんが死んだ。

詳しくは思い出せない。

親戚のおじさん達も俺に詳しい事を教えようとはしてくれなかった。

当然アオイも俺を恨んで近寄ろうなんてしない。

俺はあの日

好奇心一つで

全てを失ったんだ




「本当に良いのかい?」
「はい。俺は…アオイの傍にいちゃいけませんから…」
「…わかった。気持ちが変わったらいつでも家に来ていいんだからね?」
「…はい。」

アオイは親戚の神月の家に引き取られた。
あそこは金持ちだから裕福な暮らしが出来るだろう。
神月のおじさんは俺にも来るように言ってくれたけど、断った。
俺は…アオイの傍にいたらだめなんだ。
俺が傍にいたら、アオイはもっと不幸になってしまう。もっと寂しい思いをさせてしまう。
辛いのは、苦しいのは、恨まれるのは、俺だけでいい。

「………」
「…ぁ」

葬式の会場を出る途中、ある女の子と目が合った。
優等生オーラ出しまくりの……誰だっけ?
声をかけようとしたけど

「………」

女の子は何処かへ走り去ってしまった。
あれは一体…誰だったんだ?
思い出せない…。


それから六年。
俺はいろんな親戚の家をたらい回しにされた。
何処に行ってもやっかみがれ、何処の学校に行っても苛められた。
何処にも俺の居場所はなかった。
ずっと、俺は独りぼっちだった。


高校生になってからは、一人暮らしを始めた。
もう親戚たちに白い目で見られ陰口を言われ、暴力を振るわれる日々から脱出するためだ。

「よぉ、ハヤテ!おはようっ!」
「おはよう。赤崎」

誰も俺の過去なんて知らない。
誰も俺の犯した罪なんて知らない。
新しい新天地での生活は想像してたのよりも凄く楽しかった。
友達も沢山出来たし、部活もそれなりに楽しかったし。

全てを失い壊れたはずの俺の人生が、少しずつ修復され平凡だけど充実していてそれなりに楽しい生活。
リア充と呼んでもいいくらいに輝いていた俺の青春時代。

だけど、たった一つの出来事が原因で脆くも崩れ去ってしまった。


あれはいつものように赤崎と楽しくしょうもない話をしながら下校している最中に起こった。

「でさー、隣のクラスのユミちゃんがさー…ってあれなんだ?」
「あ?」

赤崎が発見したのは古い屋敷だった。
苔が生えてあちこっちボロボロに崩れている。幽霊屋敷と言う奴か?

「なぁ、入ってみようぜっ!」
「はぁっ!?お前本気か?」
「いいからいいからっ、行ってみようぜっ!!」
「あっ、おいっ!」

俺は止めようとした。
でも赤崎はフェンスをよじ登って屋敷の中へと入っていく。
俺は不安に思いながらも、赤崎の後を追いかけフェンスをよじ登る。

「うわー。高そうなもんとかまだ残ってるぞー」

屋敷の中には高そうな絵やツボなんかが埃をかぶったままの状態で残されていた。
かつて誰かが暮らしていたのか?でもなんで全部そのままの状態で残してあるんだ?
もしかして、まだ誰か住んでいるんじゃ…。

「おい…そろそろ帰らないか?嫌な予感がする…」
「なんだよ。ハヤテは怖がりだなー。」
「いや、そうじゃなくてっ」

赤崎は忠告を聞かずにどんどん奥へと入っていく。
やっぱり…ここはなんだか変だ。嫌な予感がさっきから消えてくれない。
「赤崎、もう帰ろう」と言おうとしたその時。

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「っ!!?」

赤崎の悲鳴だっ!
俺の先を歩いていたはずの赤崎の悲鳴が聞こえて来たんだ。慌てて走って行ってみると、大きな扉の前にたどり着いた。
俺はゆっくりと扉を開ける…すると。

「…………」

目を見開き、口から大量の血を吐き出して仰向けに倒れている赤崎がいた。

「…ぁ、赤崎?おい、起きろよ」

体をゆすってみる。
動かない。

「悪い冗談はやめろよっ!赤崎!おいっ、赤崎ーーーー!!」

もっと強くゆすってみる。
動かない。

「まさか…本当に…死んじまったの…か?」

赤崎の体はクテッとなって全く動かない。
俺のせいだ。
俺がもっと強く赤崎を引き留めていれば…赤崎は…。
俺は誰かと関わっては行けないのか?関わった人、全員を不幸にしてしまうのか?

「…ぁ」

何処からかカランッカランッと音を立て、ナイフが転がってきた。
いやどちらかというと誰かが放り投げたような。
そんなのどっちだっていい。
このナイフを使えば俺は死ねる……。














今ここで死ねば、俺は救われる?


今ここで死ねば、もう犠牲者を増やさない?


今ここで死ねば、アオイは幸せになれる?


今ここで死ねば、俺は――

         この世界からから俺と言う存在が消える?

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