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君といた時間。
作者: 副生徒会長  (総ページ数: 26ページ)
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10~ 20~

*14*

time6

少女は僕を見て少し驚いていた。だが、やがてニコリと笑い嬉しそうなかわいらしい笑顔をみせた。僕はそのキラキラと光る緑色の瞳をじっと見つめ、笑い返した。多分笑うのは久しぶりだからうまく笑えていなかったのかも知れない。それでも彼女は僕を見てこう言った。
「あなたなんていうの?」
風のように透き通った優しく可愛らしい声だった。
「私は葵生(あおい)。」
葵生、葵生・・・葵生・・・。彼女ににあう素敵な名前だと思った。
「僕は・・・。松下優大。」
僕は初対面の人と話すことができた。少し心の窓のカギが一つ外されたような気がした。
「松下・・・優大・・。優大、優大・・・。あなたにぴったりの名前ね。優しい。」
顔がボーっと熱くなった。暑さのせいではなく彼女のせいで・・・。
「ねぇ、優大。こっちに来てよ。」
彼女が僕を呼んだ。彼女に名前を呼ばれるのはとても心地良い。彼女は僕をヒマワリ畑の奥の日陰に連れて行った。
「ねぇ、優大。あなたいくつなの?」
歩きながら葵生は僕に問いかけた。
「え?僕は13歳だよ。君・・・。葵生さんはいくつなの?」
うふふっと彼女は笑った。その笑顔に僕はまたドキリとしてしまう。
「さん!さんなんてつけなくていいよ。葵生でいいよ。」
彼女のしゃべり方にはねちっこい感じがない。とても爽やかだ。クラスの女子とは違う純粋な感じだ。
「着いたよー!」
そこには小川が流れてた。彼女はもう小川に足を付けている。
「優大もこっちきて。」
僕はビーチサンダルで来たことを感謝し、小川に足を入れた。
「冷たいっ。」
「そう?そんなに冷たくないけどな?ちょっと涼しいけどね。」
小川は浅くて、くるぶしよりも少し上のあたりまでしかなかったけれど、彼女は水遊びをしようとしている。そんなところも純粋で可愛らしいと思った。
ビチャッ。
ふいに僕のズボンめがけて彼女は水をかけてきた。
「フフフっ。優大何ぼーっとしてるの?またかけちゃうよ?それッ。」
今度はTシャツにかかった。僕も反撃した。水遊びなんか、今の僕にはやれないと思っていたのに彼女の純粋さの前では何でもできるような気がする。
「あっ。優大・・・。やったなぁ。」
彼女は笑い僕にまた水をかけていた。お互いびひょびひょになったところで、小川から出て、またヒマワリ畑に戻った。
「あっ。もう夕方だね・・・。まだ優大とお話ししたかったなぁ。」
僕も少し残念だったけれど、彼女のこんな声を聴けたのはうれしい。
「「また明日。」」
そう言って僕たちはお互い自分の家に帰った。
そのとき見た彼女の瞳は少し潤っていた気がする。


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