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作者: 副生徒会長 (総ページ数: 26ページ)
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time最終回
「あのさ、優大。私も内緒にしてあること話すね。」
僕は彼女のすべてを知りたい。
「私さあ。ずっとシンデレラに憧れてたんだ。毎日見てた。大好きだった。いつも見た。私もこんなに素敵な恋に憧れていた。でも、現実は違った。みんな冷たかった。ハーフってだけでからかわれてた。苦しかった。でさ、ある日・・・・・帰っててさ、その時さ・・・・・・・・・・・。左折してきたトラックと・・・・ぶつかったんだよ。 私。」
え?まて?どういうことだ?トラックとぶつかったら普通は生きていないぞ?一体彼女は?誰なんだ?
「で、私は死んだ―――――――――――。」
???じゃあ僕が見ている彼女は?
「私は、幽霊。成仏できない。未練があるから。」
彼女は泣きながら微笑んだ。
足が少し透明になってきている。
「素敵な恋をしたいっていう未練。」
じゃあ彼女は。一生成仏できないのか?僕は好きだ。葵生が大好きだ。幽霊であっても何であっても。好きなんだ。
「でも、もう成仏できるよ。優大のおかげ。だよ。」
まてよ、僕のおかげ? ということは!
「優大と会って、ドキドキする気持ちとか、逢いたいって思うと、なんかキュッてなるんだ。これは、恋。だと思う。」
「だからね。優大。伝えたいことがある。」
「私はあなたのことが好き。」
彼女の体がすうっと風のように透明になっている。
いかないでくれ、僕も、葵生が好きだ。
「大好きだよ。」
彼女はもう、ヒマワリが見えるような透明な体で僕を抱きしめた。僕は握りしめた。
「僕も、葵生のことが、好きだよ。」
葵生はにっこりほほ笑んで風になりながら言った。
「ありがとう。」
僕は泣いた。彼女とずっと一緒にいたかった。でも、それでも、両想いになれて、彼女が大好きと言ってくれた。これ以上の幸せはないと思う。
大好きだ。短い間だったけど、いろんなことを思えた。幸せだった。
ありがとう。
次の年
僕はまた、おばさんの家に遊びに行った。僕は転校し、今は元気にやっている。友達はたくさんいないけれど、今はこの二人と仲良くしている。有ケ谷 翼くんと、日向 蛍くんだ。
お母さんとも今は普通に会話ができるようになった。
なんだか笑顔が増えてうれしい。お父さんも喜んでくれているといいな。
僕はあの日の後、次の日にまた同じ場所に行った。ガラスのビンの前におばあさんが座っていた。緑色の瞳の、きれいな老婦人が。
「こんにちは。」
思い切って話してみた。
「こんにちは。天気がいいわね。君は散歩ですか?」
「いえ、少し探し・・・なんでもないです。」
「そう、このヒマワリ畑は素敵ねえ。あの子も喜んでいるわ。」
「・・・。あの子?とは。」
おばあさんは少しうつむいていった
「私の娘。二〇年前に亡くなった娘よ。あの子はヒマワリ畑が大好きだった。」
「・・・。もしかして。その娘さんは・・・」
僕はもしやと思ったが、トラックに轢かれて亡くなりましたか?なんて聞きたくない。
「その子は・・・。シンデレラが好きですか?」
「?変わった質問ね!でもなんでわかったの?そうよ。あの子はシンデレラが大好きだった。いつか、私もあんな恋ができたらなぁっていつも言ってたわ。」
くすくす笑いながら夫人は言った。
そうか、葵生は、二〇年前に亡くなっていたのか。
「その子。その子も素敵な恋ができましたよ。・・・あっ。いえ、出来たと思います。」
そうだといいわね。と、老婦人は微笑んでいって、ガラスのビンに、マーガレットをさして、行ってしまった。
その話は僕と、葵生だけの秘密。っと。
一年ぶりのヒマワリ畑は何も変わっていなかった。変わらないでいてほしいなぁ。いつまでも、いつまでも、思い出が残っているように。
ふと下を見る。土に何か書いてある。あのおばあさんが書いたのだろうか?
違う。これは・・・。
葵生が書いたんだ。
―――あなたと私が、永久に。結ばれていますように。
大丈夫だよ。葵生。大丈夫。何年たっても、何十年先も、この思いは変わらない。
絶対に。
君のことが大好きだから。
ありがとう。
終