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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊47＊


10
10ー1
「ありがとうございました。娘が、随分お世話になったみたいで」

彼女は微笑んだ。人の役に立てる仕事に喜びを感じている。

「いえいえ」

舞は23歳になっていた。病院で臨床心理士をしている。本来ならあともう一年大学院にいるべきなのだが、元々生粋の馬鹿で純粋な阿呆だった彼女の汚名返上なのか分からないが、成績優秀で大学3年生の時に大学院の試験を受け、合格してしまったのだ。
未だ、食器を一気に割る事はあるし、グリンピースご飯も克服していないが、カルテの読み間違えは一切無い。

…なぜ、臨床心理士を目指したのか。

彼みたいに、悩みを封じ込めることのないように。罪のない自分を、苦しめることのないように。
そういう人に、この手を伸ばして、届けて、彼らを救いたいと思ったから。

心の病を患った人々の悩み苦しみに、舞は親身になって耳を、心を傾けていた。