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作者: 美奈 (総ページ数: 63ページ)
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少しずつ、桜の花に代わって葉が目立ち始めていた。
湊のバイト先に、新人が入って来た。
緊張した面持ちで、一人の女子が自己紹介を始めた。
「はじ、はじめまして、姫川、舞です、とにかく馬鹿阿呆ドジ間抜けそのものなので、みなさんに相当な精神的ダメージと迷惑をかけると思いますが、頑張りますのでよろしく、お願いします!」
湊は胡乱な目で彼女を見た。
人は皆、他人から良く思われたいと思って生きている筈だ。当然、俺もそう。だから初めから弱点を赤裸々にはしない、と、思っていた……んだけど。
ここまで自分のことを初めから卑下して喋る子ははじめて見た。自分の欠点に自信すら持っている気がしてならない。
正直、引いた。ドン引きではないけど、まぁそれなりには引いた。いや、引くでしょう。
そんなことはないだろ、と笑う店長に、その新入りはいえいえ、いいえっ、と手をブンブン左右に振った。手首から先折れるだろ、ってくらいに。
「いえいえっ、生粋の馬鹿純粋な阿呆ですから…」
生粋の馬鹿?純粋な阿呆?なんでそんな人間を採用したんだ、店長?ていうか、その子ドMなんですか?
たくさんの?が頭の中に出て来た。湊は彼女の顔をじっと見た。
くりっとした、猫目に近い瞳。焦げ茶色の髪でセミロング。身長は160センチちょい、といった所だろうか。
美少女ってほどの風貌じゃない。美しいというよりは可愛い。
湊の中の価値観では、舞は結構な上位レベルで可愛かった。
もしかして店長は、顔で採用したのではないか。…半分は当たっているだろう。
「さぁさぁ、早速仕事だ!今日も働いてくれよー」
店長の声がかかり、皆はそれぞれの持ち場に戻って行く。
湊はしばらく彼女のいる方を眺めていたが、やがて彼も仕事場へ戻った。