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作者: 狩魔 (総ページ数: 3ページ)
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キィーンコォーンカァーンコォォーン…
授業開始の鐘が鳴ると同時に、勢いよくドアが開く音が耳に入る。
複数の大きな音が交え、うるさいと思ったが、そんな思いはすぐ消えた。
入ってきたのは教科担任ではなく学級担任だった。担任は、汗を肌につけながら、すぐさまテレビの画面をつけた。
見た瞬間、担任の肌を、汗が流れていく理由が分かった。
「やら、トカチ地方の中学生諸君。私は渡 覇剛だ。珍しい名前だろう?
私の紹介はいいとして…、生徒諸君には、これより「戦争」を行ってもらう。」
画面の男は、実感のわかない単語を口にし、そう言った。
__戦争、だと?
それは師朗に限らず、誰もが思った。
生徒達の気持ちの整理がつかない間に、男が口を開く。
「ああ、勿論、武器はこちらで用意して各学校に支給するし、君たち自身が用意してもいい。
それに、家族の方々には、君たちの「死」以外の被害は受けないから、心配しないでくれたまえ。」
家族が被害を受けないことより、「死」という不吉な1文字の方がインパクトを持った。
俺たちが、死ぬ・・・?
「急だと難だろうから、しばらく時間を置こう。市から輸送するのは時間がかかる…。」
__何?
今、画面の男は、確かに「市から」と言った。
コイツは、オビコウ市に潜んでいるのか?-もしくはオビコウ市を操っているのか?
オビコウ市とは、トカチ地方の中心の市である。ここ近隣の町の人々は、よく買い物や遊びにでかける。
男が何をするか、どこにいるかの推測をしつつ、次の発言を聞いた。
「時間は、明日正午から、だ。それまでに作戦を練っておくことだな。フフ…。」
そういって、テレビは音を立て、その後ザァァ…と虚しく鳴くだけであった。
どのチャンネルもそのようだった。
「一体どうすれば…」
一人の生徒の発言で、クラスの何かが切れた。
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こうして、開戦までの猶予の時間が始まった。
(練っておくことだな。)
今は、その助言とも聞こえることを実践すべきだろう。
だが、そんなことはできないのかもしれない。
上級生全員が、不安、恐怖、怯えという感情になっている。表情や状態から分かった。
そして、誰も先頭に立とうとしない。
クラス内のリーダー格である者達が、悪夢にでもとらわれたかのように、絶望しているからだ。
担任も混乱しているようだ。
師朗も、唐突すぎる出来事を簡単に告げられ、戸惑っていた。
頭が、一杯だった。
全員が、死人のようだった。
__どうすればいい。