コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.27 )
- 日時: 2015/01/07 00:31
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
 *番外編
 +レンビンポテンシャル+
 小さい頃から何回も家出をした。
 最初は確か、五歳くらい。
 そのたびに、本で見た“鬼”のような形相で迎えに来るのは、父さん。理由は、「お前が家出したなんて他に知られたら、笑われるから」らしい。
 でも、“人間”を“飲み物を入れる容器”としか思えない“吸血鬼”という種族が、私は大嫌いだった。
 でも、そんな私にも“友だち”はいた。といっても、1人だけ。
 「ごーらいー!」
 「シオン、おはよう。……家、遠いだろ。大丈夫か?」
 「もちろんです!」
 豪雷。
 私とは違い、友だちが沢山いて。両親も優しくて。同じ貴族でも、大違い。
 豪雷を光とするなら、私は対の存在——闇だ。
 「ごーらいこそ、私がいて迷惑とか、ないですか?」
 「む……。考えたこともなかった。俺たちはいつでも大歓迎だ」
 そう言って藍色のポニーテールを揺らす豪雷に、私は憧れと劣等感を覚えた。
 *
 「嫌です! 父さん……!」
 「嫌じゃない。やらなければならないんだ!」
 帰るやいなや、私は「出かけるぞ」とだけ言われて手を引かれ、霧雨村——豪雷の住んでいる村へ来た。
 辺りは真っ暗なはずなのに、これも“吸血鬼”の力。全てのものがしっかりと見えてしまう。
 「お前の“お友だち”の家はここか?」
 「嫌だ……」
 「何を言う。いつも息子が世話になっている“礼”をしに来ただけだ」
 「嫌だ助けて……ごうらい……」
 自分よりも強い力で引かれた腕を振り払えなくて。
 地面に落ち続ける涙が止まることはなくて。
 名前を出してしまった彼のことを忘れられなくて。
 「シオン……?」
 声だけでわかってしまう。
 ——なんで、来たんだよ。
 ——なんで、私を呼んだんだよ。
 ——なんで、そんなに……そんなに……?
 「ごうら、い……っ!」
 「ほう、こいつがお前の“お友だち”と言うやつか」
 私を拘束していない腕を上げ、父さんが“爪”を出すのがわかった。豪雷は——?
 「嫌だ……。父さん……やめて下さい……!」
 「“お友だち”を殺したら、お前はちゃんと、私の言うことを聞くのだろう?」
 「————っ」
 “お友だちを殺したら”。
 その言葉を聞いた瞬間、私の意識は闇に消えた。
 ——そして、私はいつのまにか、血の海に座り込んでいた。
 父さんは?
 辺りを見渡すが、私を掴んでいた“父さんの腕”以外、見つからない。
 代わりに、豪雷が私のことを抱き寄せていて。
 「シオン、起きたか?」
 なぜかその手は、傷付いていて。
 豪雷の紺色の寝巻が、赤黒く染まっていくのが見ていられなくて。
 私はそのまま泣き出してしまった。
