コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 女執事と5人のご主人様
- 日時: 2015/11/21 17:13
- 名前: 桜雨 ◆q.VcedTtY2 (ID: ZRBjN/Ul)
- はじめまして。桜雨(旧翼紗)と申します。 
 この小説は、私が数年前に書かせていただいていた小説です。
 携帯の故障によるパス紛失と受験期間が重なり、連載途中かつ企画途中にも関わらず更新ができなくなってしまいました。
 
 読んで下さっていた方々には、申し訳ない、という言葉では言い表せません。
 忘れてしまった方も、いらっしゃるかもしれません。
 ですが、私にとって初めての作品で、書きかけですが、読み返してみて色々な感情がこみあげてきました。
 もう一度、作品を終わりまで書き上げたいと思っています。
 温かく見守って下さると嬉しいです。
 どうか、よろしくお願いいたします。
 〈11/20〜〉前スレッド投稿済みの話を再投稿中
- Re: 女執事と5人のご主人様 ( No.25 )
- 日時: 2015/12/07 13:48
- 名前: 桜雨 ◆q.VcedTtY2 (ID: OSct4JfX)
 ——そういえば私は、何かを忘れている——
 「凜華?」
 耳元に、ふっと優しい声。目が、覚める。
 ご主人様の結木慧太が立っていた。
 「寝てたんだ。突っ伏してたから、ちょっと心配になって」
 私は、帰ってきたらそのまま寝てしまったんだ。
 じゃあこの人、勝手に入ってきたってこと? 私の部屋に。
 「びっくりした?」
 私の心を読んだように、彼は意地悪そうな笑みをこぼしながら言う。
 この家の人は、何でこうテレパシーが使える人が多いんだ。それとも透視能力か何かあるのか……
 「やっぱ可愛いね、凜華」
 不意に慧太様がつぶやく。何かを思い出すかのように。
 「へ?」
 視線をそらさずに、じっと見つめられてどぎまぎする。
 「分かりやすいとことか」
 そういいながら、徐々に近づいていく彼の顔。
 「!!」
 ええええ。
 待って。なに。
 私、キスされてる。初対面のひとに。
 どうしよう。どうしよう。どうしよう?!
 どこから訊けばいいんだ。
 何でキスしたの。何でそんな意味深なことばかり言うの。何でそんなにかっこいい顔して見つめるの!
 いろいろ頭で旋回している中、今度は真剣な表情で問われる。
 「……俺のこと、覚えてないの?」
- Re: 女執事と5人のご主人様 ( No.26 )
- 日時: 2015/12/09 15:50
- 名前: 桜雨 ◆q.VcedTtY2 (ID: HyYTG4xk)
 「ごめんなさい……覚えてません」
 ただ一言。それしか言えなかった。
 目の前の彼は、一瞬、すごく悲しそうな顔をした。
 あれ……何かまずいこと言ってしまったかな。
 そのとき、彼の顔がぱああっと輝く。喜怒哀楽が激しい人のようだ。
 「あ、いきなりキスしたこと気にしてる?」
 「いや、当たり前だと思います」
 瞬間的に口から言葉がでた。いきなり、なんて。
 「好きな人にキスするのこそ当たり前でしょ。俺のこと覚えてないなら話は別だけどさ」
 衝撃的一言。
 この人、私のことが好きって言ってるの? 頭が混乱する。
 私とこの人はどういう関係なの。
 それが昔から、だったとしたら?
 もしかして"あの出来事"を知っているの——
 怖くなった。
 思い出せるかもしれないのに、思い出すのが怖い。そんな私をみて、心配そうな顔をする慧太様。
 「ごめん、めっちゃ悩ましてるね、俺。そんなつもりじゃなかったんだけど……また、話そ」
 慧太様は部屋から去っていった。
- Re: 女執事と5人のご主人様 ( No.27 )
- 日時: 2015/12/14 22:45
- 名前: 桜雨 ◆q.VcedTtY2 (ID: YhMlOecY)
 気になる。
 さっきの慧太様の言葉が、まだ残ってる。
 執事服に着替えてキッチンで皿洗いしていても、ご主人様の服あれやこれやを洗濯していても、仕事が手につかないくらい。
 私が、執事になったのは坂原優哉のためだ。
 彼に恩を返す……というか、彼にもう一度会うため。
 だけど、それに関係があるのか。私の覚えていないあの日の記憶を、 あの人は知っているのだろうか。
 でも、何故?
 私が10歳の誕生日を迎えた日。私が、記憶喪失となった日。
 もし、知っていたとしたら——
- Re: 女執事と5人のご主人様 ( No.28 )
- 日時: 2016/01/15 00:05
- 名前: 桜雨 ◆q.VcedTtY2 (ID: wPqA5UAJ)
 「おい、おまっ……凜華!」
 考え事にふけっていると優哉様に声をかけられた。
 ……うわぁ。
 凜華って呼ばれた。初めてこの人に。なぜだか胸が高鳴る。
 何なんだこの気持ち。何年前に言われたきりで、久しぶりだからだろうか??
 「なっ何かありましたか」
 「紅茶が飲みたい」
 ……
 そのくらい自分でやって下さいよ馬鹿!!とか不覚にも思ってしまった。ごめんなさい。
 「ご希望はございますか?今、お持ちします」
 「ダージリン」
 何それ。私に分かるわけ無いじゃないか。自分で訊いておいて理不尽だとは思うのだが。
 「〜っ、承知いたしました!」
 そそくさと逃げ出す。ここは、月波さんにヘルプ を求めるとき!!
 「月波さーん」
 キッチンでお取り込み中の月波さんを発見した。
 「何ですか。僕忙しいんですけど?」
 私の寝坊事件からというもの、この人の態度は変わらず冷たい。……私が、悪かったのは明白だけども。
 「まだ、怒ってますか?」
 「当たり前です。馬鹿なんですか、あなた」
 ど、毒舌?!(……いや、薄々気づいてました。)
 「すみません」
 「謝ったって、どうにもならないからいいですけど。……で、何の用ですか」
 うーん。
 今このこと言うと、倍返しと言わんばかりにいろいろ言われそうだが。仕方がない。ご主人様の為だ。
 「ダージリンという紅茶が何なのかどこにあるのかを教えて下さい」
 「は」
- Re: 女執事と5人のご主人様 ( No.29 )
- 日時: 2016/01/15 21:36
- 名前: 桜雨 ◆q.VcedTtY2 (ID: nyr1MBL9)
 深々と長いため息をつかれる。
 「馬鹿な、そんなのも分かんないんですか……くっ、紅茶の種類くらい、知っておくのは常識です。……それとも何ですか?やはり記憶力のない馬鹿でしたか」
 言葉の端々がとがっていて、すべて私の心に突き刺さってく……いたた。
 この人。救いようのない毒舌だよ。 誰かへるぷみー……
 っ、じゃなくて!!!
 「本当お願いします」
 再度お願いする。彼はもう一度ため息をついた。
 「仕方無いですね。馬鹿な女執事のために、教えてあげましょう」
 「一ついいですか」
 「どうぞ」
 「さっきから馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿言い過ぎではあり ませんか」
 「……その通りだろ」
 ?!
 ……わぁ、怖い。
 「案内します、ついてきて下さい」
 さっきのことは無かったかのように、歩き出す。
 「はい」
 先導されるがまま、奥の方へ向かう。 細長い廊下を通って、薄暗い階段を下って、古く、大きな扉を押し開けて……——
 「!!」
 ここって———
 「書庫、ですか」
 かび臭く、ずっと前から、誰も使っていないよう な薄汚れた部屋。 たくさんの本がぎっしり詰め込まれた大きな本棚。
 月波さんを見ると、にこやかに笑っていた。
 「では水無月さん。午後の仕事も終わって暇があることでしょうし……紅茶のことも作り方も、 ここで調べてみてはどうでしょう?」
 「……へ?」
 「これ以上僕の手を煩わせないで欲しいですか ら」
 —ぎいい。
 扉を押す音。
 「では」
 そのまま彼は、扉の向こうに消えた。
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