コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【短編集】一杯のコーヒーと貴方を。 ( No.2 )
- 日時: 2017/01/13 22:29
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
- 序章 「開店」 
 ──カフェ「chestnut」は今日も開店する。
 ……1人と1人──それに1匹……。
 この人数で切り盛りしている、ほんの小さいこのカフェ──なぜか途絶えることなく店の看板の前を出入りする客がいる。
 店長の八栗圭介、父は世界的に有名なあの八栗洋介。
 3年前に、突如空港から世界に飛び立ってしまい仕方なく残されたこの「chestnut」を持っている知識を使ってコーヒーを淹れている。
 「おい秋乃」
 彼が呼んだ「秋乃」は、妻でも彼女でもなく我が娘の八栗秋乃。
 ずっと父と一緒にこの「chestnut」を守ってきた1人だ。
 「どうしたの?」
 彼女は猫を撫でる手を止めて、父の方へと視線を移した。
 「そろそろ開店の時間だ。ミニ黒板を外に出してドアに掛かる看板を「OPEN」に変えてきてくれ」
 「分かった」
 父に対して、素っ気ない返事をする彼女を見つめながら猫は「にゃあ」と鳴く……。
 「こんぶ……今日もここから俺達の事を見守っていてくれ」
 父はそう言って、猫の頭を撫でた。
 「こんぶ」とは、あのだしをとる緑の固いものではなく猫の名前だ。
 こんなカフェに和風な名前……付けたのは、祖父の洋介である。
 彼のセンスを疑ってしまうが、これでも世界的に有名なバリスタだ。
 「今日も俺達は、ここで元気にやっている」
 天井についている、シーリングファンの電気を見つめて父は言った。
 ──「chestnut」が、閉店……ここから消えることはあってはならない。
 黒板を置いて、看板を裏返し終わった秋乃が店に入った時にこんぶはまた鳴いた。
 この小さな小さな店の中で、ちょっとしたドラマが起こっている。──
 **
 八栗秋乃(やぐり あきの)
 高校生。「chestnut」唯一の店員。
 黒髪のボブショートで、いつも素っ気ない。
 学校はなかなかレベルが高く、勉強は得意。
 けして口には出さないが、父の淹れるコーヒーをこよなく愛している。
 八栗圭介(やぐり けいすけ)
 秋乃の父。「chestnut」の店長。
 あまりコーヒーの知識はないと言っているが、腕はなかなかのもの。
 素っ気ない秋乃のことを心配している。
 祖父である、八栗洋介を尊敬している。
 こんぶ(-)
 猫。「chestnut」で愛されている猫。
 普段けして口にはしないが、自分の名前を嫌っている。
 祖父である八栗洋介のことを嫌っている。
 コーヒーの香りを嗅ぐと、眠ってしまう。
 八栗洋介(やぐり ようすけ)
 世界的に有名なバリスタ。「chestnut」を圭介と秋乃に任せて世界に出た。
 年齢を感じさせないほどの行動力。
 こんぶを愛している。いつも抱きつくと引っ掻かれている。
