コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.61 )
- 日時: 2016/01/01 10:01
- 名前: 彼方 (ID: z5Z4HjE0)
- ここでようやく、ちょこちょこ挟んできた伏線回収です!あと、友哉の異常な卑屈さの謎(?)もこの話で明かされます! 
 という訳で、鬱展開…もとい、本作初のシリアス編スタートですw
 最初オーバードーズの予定でしたけど、思ったより全然現実的じゃなかったんで止めました。
 これのせいで検索履歴が鬱病の人みたいになっちゃいましたクソw w w←
 第7話「首吊りなんかじゃ救われない」
 最近、友哉の様子がおかしかった。
 それと、望と菜々架も。
 「聞いてよ友哉ぁ、オレまた告られちゃったのー?ホラ見てこのラブレター____ってねぇねぇ聞いてるーっ?とーもーやぁー」
 「…………良かったな」
 何故か沈んだ顔をする友哉を見ても、望はいつも通りの笑顔を浮かべていた。
 「だっろーっ?羨ましいだろっ?羨ましいだろっ!?」
 「…………あぁ」
 友哉は気の無い返事をしていた。
 「ちょっと友哉、ちゃんと望の話を聞きなさいよ」
 「そーだよー、ちゃんとオレの話を聞けーっ!」
 「………………聞いてっから、気にすんな」
 鬱っぽい色を浮かべる友哉を見ても、望と菜々架の態度はいつも通りで全く変わらなかった。
 否、意識していつも通りにしている感じか。
 「……ねぇ、最近友哉どうしたの?」
 「何?友哉、何か変かしら?」
 あたしが尋ねても、菜々架は空っとぼけていた。
 あたしは、居心地悪く感じていた。
 「吉岡ぁ、今日カラオケ行かね?」
 「いや、今日こそ部活に来てもらうぜ」
 「いーや、カラオケの方がいいよな?」
 「…………俺両方パス」
 放課後、カラオケの誘いも部活の誘いも断って、友哉はすぐに帰っていった。
 友哉は最近いつもこうだった。
 絶対、何かおかしい。その時あたしは、それだけは分かっていた。
 「ねぇ友哉、部活何で来ないのよっ?またサボり癖?」
 あたしが普通を装って尋ねると、友哉は「ごめん」とだけ言って、去って行こうとしていた。
 その時、思わずあたしは腕を掴んで言った。
 「友哉、またサボったらそのスポーツバッグ返してもらうって言ったよね?さっさと部活来なさいよ」
 「…………確かに、そうだったわ」
 「なら……っ!「でも……そういう気分になれねえんだ、ごめん」
 友哉は心なしか、口数も減ったし笑顔も減った、とそうあたしは感じていた。
 一体何があったのよ、とあたしは思っていた。
 あたしが悶々としながら更衣室へ歩いていた時、同じクラスの女子の会話が耳に入ったんだっけ。
 「何かさー、吉岡くん最近元気なくない?心配だわー」
 「だよねー。そういえばさ、去年の同じくらいの時期にも、こんなことなかったー?」
 「こんなことって、吉岡くんが元気なかったってこと?」
 「そーそー。何かあるんじゃない?この時期にさー」
 「確かに、去年もそんなことあった気がする」
 「だよね。あ、そういえばバスケ部の東雲先輩が____」
 去年の同じくらいの時期にも、友哉が元気をなくしていた、か。確かに、そんなことがあった気がする。
 去年にも、というか毎年____
 思考が芋づる式に加速されていった。
 確かに去年も友哉はこれくらいの時期に元気がなかった。中1の時も、中2の時にも、だ。
 中3の時なんか、しばらく学校を理由不明で休んでいたっけ。
 ようやく学校に来たかと思ったら、足を骨折していてクラス全員が驚いた、なんてことがあった。
 そんな時でも、望と菜々架だけは驚かなかった。中3の休んでいた時、少しの間だけ望と菜々架も休んでいた。
 きっと、あの幼なじみ3人にしか分からない、何かがあるんだろう。
 それはきっと、軽々しく触れられないような重たいこと。
 幼なじみ3人の問題なんだから、触れちゃいけないだろうことは分かってた。
 分かってるけど____
 「……何であたしに言ってくれないのよ、3人の馬鹿ぁ……」
 小さい頃から一緒にいた訳ではないが、あたしだって中1の頃から3人と一緒にいる。
 きっと、あの幼なじみ以外だと一番付き合いが長いはず。
 なのにどうして。
 そんなことをずっと、あたしは考えていた。
 その日、もやもやとした気持ちを抱えたまんま、あたしは仕方なく部活に向かった。
 次の日。
 今日も友哉は元気がなかった。むしろ、昨日にも増して鬱々としていた。
 毎年これくらいの時期に元気がなかったのは確かだが、それでもここまで鬱々とはしていなかったはず。
 さすがに皆心配らしく、ひそひそと友哉についての話をしていたっけ。
 中には、友哉といつも通りに話す菜々架や望に、尋ねる人もいた。
 しかし、2人は白々しくとぼけていたはず。
 そんな中、
 「さすがにこれは気まずいわよ……」
 どういう偶然か、あたしは友哉と一緒に帰ることになった。
 いつもだったらとても嬉しい。が、何しろ鬱状態の友哉だ、あたしは、なんて声をかければいいか分からなかった。
 あたしはひたすら、俯いて黙りこくっていたんだっけ。
 その時、気まずい沈黙の中にいると、人は肩が凝るものなんだと実感した。
 「……あのさ」
 「…………何?」
 あたしが恐る恐る問うと、あたしと同じように俯いていた友哉は、ゆるゆると首を上げた。
 「…………友哉、何か悩みでもあんの?だったらあたしに相談しなさい、友哉が静かだと薄気味悪いの!ほら、分かったらさっさと言いなさいよ」
 あたしは重い空気を無くそうと、あえて軽い口調で言った。
 友哉はしばらく視線を宙に漂わせたが、やがて泣き笑いのような表情を浮かべていた。
 「…………ありがとな」
 その、どこか枯れた瞳はよく覚えている。
 しかし、友哉はそれ以上は口を開こうとしなかった。
 あたしはすっかり参ってしまって、所在なく髪をいじりながら口を噤むしかなかった。
 半ば機械的に足を進めていると、いつの間にかそこはあたしの家の前になっていた。
 友哉の家はもう少し先だ。
 友哉はそこで足を止めると、あたしの方を見た。
 その時初めて、友哉とまともに目があった、はず。
 「………………なぁ桃音」
 「何よ」
 いつも通りを心がけてそう言うと、友哉は逡巡する様子を見せ、やがて言葉を紡ぎ出していた。
 「…………俺、さ。生きてていいんだと思う?」
 いきなりのそんな言葉に、あたしは思わず絶句した。
 なんて答えればいいかも分からず、ただ固まっていた。
 さっきにも増して、沈黙が体を刺していった。空気が一気に粘度を増したみたいだったのを、鮮明に思い出せる。
 すると友哉は「……なんてな、ははっ。冗談冗談」と笑ってみせていた。それは、いつも通りの、冗談を言う時の笑顔だった。
 あたしは安心して、「もう、冗談キツいわよっ?」なんて軽く蹴りを入れた。
 友哉は顔をしかめながら蹴られた場所をさすっていた。
 「いって、蹴らなくてもいいじゃねえかよ!」
 「あんたがいきなり変なこと言うからでしょうが!馬鹿友哉っ!」
 「だからって蹴るなよ!お前の蹴り痛えんだよ……」
 「知るかそんなの!」
 「理不尽!」
 いつも通り、だった。この笑顔も、このやりとりも。
 あたしは重たい空気が払拭されたのを感じて、ようやく心の底から笑えた。
 そう、重たい空気が払拭された、そればかり意識していた。
 だからあたしは、気付かなかったんだろう。
 「じゃあな」
 そう言って手を振って背を向けた友哉の笑顔が、さっきまでとは違ったことを。
 「ん、じゃあね!明日こそちゃんと部活来なさいよっ?」
 あたしは何も気付かず、ただ呑気に笑っていた。
 友哉は後ろを向いたまま「気が向いたらな」なんてうそぶいていた。
 後から考えれば、友哉の笑顔はただの明るい笑顔じゃなかった。
 あの時、あの質問に答えていたら、と何度後悔しただろう。
 あの時、あの笑顔に気付いていたら、と何度後悔しただろう。
 ____友哉の笑顔は、どこか哀しい決意に満ちたものだったのに。
 あたしは馬鹿だ。
 本当に馬鹿だ。
 何であの時気付けなかったんだろう。
 あたしは自分を責めながら、ただただ両手を組み合わせて祈った。
 「……桃音のせいじゃないよ。オレも菜々架も、気付けなかったんだから。むしろ、オレ達こそ気付いて然るべきだった」
 望はあたしを気遣うように呟いた。両手でズボンを握りしめて、後悔に暮れるように俯いていた。
 余程強く握りしめているんだろう、その握った手は、細かく震えていた。
 「…………友哉の馬鹿……ッ」
 菜々架はそう零した。頬には雫が伝っていた。
 怒り以外の彼女のネガティブな姿を、この時あたしは初めて見た。
 隣に座る友哉のお母さんは、固く目を閉じて祈っていた。あたしよりも、ずっとずっと強く。
 あんたにはこんなに真剣に心配してくれる人がいるのに、何で。
 「…………馬鹿ぁ……ッ」
 あたしはそう吐き捨てながら、眠ってるようにも見える友哉の顔を睨みつけた。
