コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re:=その後= ( No.45 )
- 日時: 2015/07/10 20:21
- 名前: 四之神綾芽 (ID: CSxMVp1E)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「__よかったぁ」 
 美羽は、そう言って、和泉と郁磨の方を向いた。
 「ありがとね、2人とも」
 「おう」
 「ううん」
 「いっつも助けてもらってばっかで・・・・・・ごめんね」
 伏せ目がちに言う。
 「いいって。・・・・・・ホント、心を許した相手にはソレだもんな」
 「え?何が?」
 「ううん、なんでもないよ」
 美羽を置いてきぼりで、郁磨と和泉が笑う。
 「うっ・・・・・・」
 胸を押さえて、膝をつく郁磨。
 「郁ちゃんッ!」
 「郁磨!」
 美羽と和泉がすかさず駆け寄る。
 手には、先生に認められた携帯電話をもっている。
 __いざとなったときのためだ。
 「・・・・・・だいじょ・・・・・・ぶ。大丈夫。・・・・・・」
 「・・・・・・はぁ」
 「よかった」
 「最近なかったから、ちょっと気を抜いてた」
 えへへ、と笑みを浮かべる郁磨の額には汗がにじんでいた。
 「冬休みさ、遊びに行きたいんだけど」
 「ダメ」
 「えーっ!?」
 「そりゃ、ダメだろ」
 和泉と美羽と郁磨。
 三人で笑っていられるのも、残りあと7年。
 中学二年にあがった彼等は、また____長い一年が始まる。
- Re:=北崎桐の場合.1= ( No.46 )
- 日時: 2015/07/10 20:22
- 名前: 四之神綾芽 (ID: CSxMVp1E)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「いつも、はきはきしていて、よろしい」 
 先生はそういった。
 「そんな声がほしい」
 友達はそういった。
 「五月蝿いんだよね」
 ある子はそういった。
 私は______
 「大嫌い、この声」
 私、北崎桐。
 この、『良くとおる』と言われる声私の声が大嫌い。
 親友である、市樹新菜は、分かってくれた。この悩みを。
 「大変だよね、その声じゃさ」
 にっこりわらった彼女に、私は救われた。
 初めてだった。この声を、『大変』だと言ってくれる人は。
 北村美羽というクラスメートがいる。
 なんでも、一年のころに、ある子達を仲直りさせたとか。
 (へえ__)
 凡庸そうな、あの子が、ね。
 けど、直感もした。
 (きっと、あの子も同族だ__)
 と。
 *お知らせ
 市樹 新菜 (イチキ ニイナ)は、ことり 様からの応募。
 ありがとうございます。
 えみりあ様からいただいた、『イッセイ』君は、桐の話しの時に出させていただきます!
 長らくお待たせしてしまって・・・・・・申し訳御座いませんでした!
- Re:=北崎桐の場合.2= ( No.48 )
- 日時: 2015/07/12 20:16
- 名前: 四之神綾芽 (ID: CSxMVp1E)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「郁ちゃん、大丈夫?薬、飲んだよね?」 
 「うん」
 「あー、またやってんぞ、アイツ等wつーか、郁磨!お前、やっぱし美羽事好きだろ?なあ、そうだよなあ?」
 「「イッセイ、うっさい!」」
 「ハモってるー!」
 今日も、アッチは騒がしい。
 新庄一成──通称イッセイは、クラスのお調子モノ。
 「なあ、マジでサッカーやんねえ?お前運動神経いいだろ?なあ、なあ」
 「やだっつってんだろ?しつけーよ」
 「だってさあ〜」
 サッカー部に所属しており、ずっと郁磨を誘っている。
 その度に、美羽が怒る。
 「だから、勧誘はするなっていってんだろ、イッセイ!」
 「げ、怒った」
 そんなイッセイを、私は好きだったりする。
 「新菜ーもう・・・・・・ホント疲れた」
 「まあまあ」
 そんなことはどーでもいいんだ。
 それよりも、私は合唱発表会の方が大切。
 「桐の声は、聞こえやすいからね。ボソボソ言われてたけど、仕方ないよ」
 「皆がもっと真面目に唄えばアタシの声だって目立たなくなるでしょ?」
 「うーん、それはどうなんだろ・・・・・・」
 新菜が苦笑する。
 「まあ、やる気がないんだよね、皆」
 私は、それが腹ただしい。
- Re:=北崎桐の場合.3= ( No.49 )
- 日時: 2015/07/14 20:04
- 名前: 四之神綾芽 (ID: CSxMVp1E)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「なんなわけ?大声がハズいってこと?」 
 「ん〜・・・・・・」
 「それとも、『真面目に唄う』が嫌なの?いやいやいや、『真面目に』できなかったら、評価下がるじゃん?んで、下がって文句いうでしょ?自分で自分の首しめてんのに、気づかんのか?」
 「そうだねぇ」
 新菜は、おっとりと返事をする。
 私が一方的に言いたいことをいって、彼女に聞いてもらう、それが私達の関係。
 「けど、美羽と並んでテストしたらさ、五分五分になるんじゃない?」
 私は、ソプラノ専門だけど、美羽は、アルト専門。
 アルトの中でもひときわ目立つ美羽と私の声で、歌はできているといっても過言ではないとおもう。
 それほどまでに、酷いのである。
 「そうだけどさぁ」
 けど、やっぱ、皆で歌うことに意味があるじゃん?
 『一致団結ー!』みたいな?
 「まあ、まだ日にちはあるし、きっと近くなったら皆もやる気だすっしょ」
 私はそう言い聞かせて自分を納得させた。
 合唱クラス発表は、文化祭で行われる。
 体育祭、文化祭と日にちの違ううちの学校では、体育祭の次の日に文化祭をやることが多く、今年もそうだ。
 あと、4ヶ月もある。
 そいの間に、夏休みもある。
 今はまだ5月。
 まだまだ、新しいクラスになれていないんだろう。
 そうだよ、きっと__。
 自分を無理に納得させる日々。
 そんな日々が、1ヶ月続いた。
- Re:=北崎桐の場合.4= ( No.50 )
- 日時: 2015/07/16 20:47
- 名前: 四之神綾芽 (ID: CSxMVp1E)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「はい、じゃあ今日は歌のテストをします」 
 音楽の先生がそう告げると、大勢の人からブーイングおこった。
 その中に、私は含まれていない。
 「アルトからしましょうか、さあ、後ろに並んで」
 文句を言いながらも、アルト計12人は後ろに並んだ。
 「番号順で、4人ずつ、じゃあ__」
 先生の指示中にそんな声が聞こえた。
 「うっわー、音痴がバレちゃうじゃんか」
 美羽がそう言うと、彼女と一緒にいて、そして番号順が彼女の後ろの栗元和泉が冷やかした。
 「そうだねえ、音痴のみぃうちゃん」
 「うっせえ!」
 「美羽は音痴だけど、唄うの好きなんだろ」
 郁磨が横から口を挟む。
 「へー、ほー、はー」
 すかさず、イッセイが冷やかしに入る。
 そんな四人を見るのが、私は楽しい。
 「美羽の音痴さ、やべえんじゃね」
 「うっさい、和泉だって」
 「ああ゛?」
 ギャーギャーと騒ぐ声の通る女子2人。
 ・・・・・・私も、あんな声がほしかった。
 美羽の聞きとりやすいアルトボイス。
 和泉のカッコイイ低めのボイス。
 私のこんな、高いソプラノボイスなんて・・・・・・。
 普通に喋るだけで五月蝿い、と言われて。
 どれだけ私が悲しかったか・・・・・・。
 けれど、その声と、おさらばする日がくるなんて、思ってもいなかった。
- Re: 愛…君14=北崎桐の場合=【自分で自分の首をしめてる】 ( No.51 )
- 日時: 2015/07/18 14:40
- 名前: 芹臆魂ヌ☆ (ID: sGTz9jZf)
- この小説ちょぉぅけるぅ(爆)(爆)(爆)(爆) 
 ぉもしろぃってゅぅかぁ、ばくしょぉってかんじぃ。
 wwwwwwwwwwwwwwwwwwww
- Re:=北崎桐の場合.5= ( No.52 )
- 日時: 2015/07/19 20:05
- 名前: 四之神綾芽 (ID: CSxMVp1E)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「あー・・・・・・あ?」 
 アレ。
 私は、声をだして気がついた。
 私の聞き間違いだろうか・・・・・・。
 「低く・・・・・・なってる」
 声変わりだろうか?
 「っ・・・・・・」
 嬉しい・・・・・・のか?
 嬉しいんだよ・・・・・・な?
 素直に喜ぶ事ができないのは、何故だろう。
 「おはよー、新菜」
 「おは・・・・・・えっ?」
 「・・・・・・」
 新菜が言葉通り、目を丸くした。
 「声、変わったの!?」
 「う、うん・・・・・・そうみたい」
 「そっかー、そっかー。・・・・・・ちょっと残念かなぁ・・・・・・」
 「え?」
 私が聞き返したとき、いつもの三人組が教室へ来た。
 「うっさいなあ!だあかあら、アレはっ__」
 「ああ゛?そりゃあ、アンタからしたらそうかもしんねーけど」
 「落ち着いてよ、2人とも。美羽も和泉も五月蝿い」
 「郁磨が女子みてえ・・・・・・」
 「んだ、イッセイ」
 「あれ」
 そこに、五月蝿いのが一人増えて、もっと五月蝿くなった。
 けど、これじゃあ・・・・・・。
 私には、1つだけ不安な事があった。
 「え__?」
 そう、歌だ。
 今まではソプラノだったけれど、今のこの__決してソプラノではないこの声では・・・・・・。
 「ソプラノが・・・・・・でない?」
 高い声は、出すことができない。
 音楽の先生に告げると残念そうな声をだした。
 「ホープだったんだけれど・・・・・・残念ねぇ」
 「すみません」
 「仕方ないわよ、じゃあ、アルトとして覚えなおしてね」
 「・・・・・・はい」
 私がいなくなったって、大丈夫だと、思っていた。
 そんな大きな存在じゃないと__そう、思っていた。
 * 芹臆魂ヌ☆さん
 ありがとうございます。
- Re:=北崎桐の場合.6= ( No.53 )
- 日時: 2015/07/22 19:58
- 名前: 四之神綾芽 (ID: CSxMVp1E)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「何度言えばわかるの!?声をだしなさい、声を!」 
 アルトに私が移ってから次の授業。
 何度もソプラノが怒られていた。
 もともと高い音であり、声が聞こえにくいのもあるが、歌っていない人が多すぎているのが原因だった。
 ボソボソと嫌な顔をして呟く彼女等。
 バカみたいに必死に歌ってた私はなんなわけ・・・・・・。
 「あーあ、やっぱ桐ちゃんがいないとだめだねぇ」
 「だなー。・・・・・・ま、頼ってばっかの歌だったしな」
 「え?」
 美羽と和泉がそう、いってきた。
 「そうだっけ?」
 「傍から聞いてたらそうだったよ?唄ってるの桐ちゃんくらいだったし」
 やっぱり、うぬぼれてよかったんだ・・・・・・ね。
 なんで皆歌わないんだろう。
 「さあて・・・どうなんでしょうね・・・・・・」
 美羽が意味深な呟きをした。
- Re:=北崎桐の場合.7= ( No.54 )
- 日時: 2015/07/24 19:54
- 名前: 四之神綾芽 (ID: CSxMVp1E)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「あーあ、ホントうざいんだけど、アイツ。なんなわけ?真面目に唄えーとか、意味わかんない」 
 「うっさいよね、いちいち」
 「ホントホント」
 「あー、うぜえ」
 音楽の授業が終わると、ソプラノの一部のグループが口々に文句を言いだした。
 結構離れていたけれど、私は『地獄耳』なので、聞こえる。
 「・・・・・・アイツのせいだよね」
 「え?」
 私は、耳を疑った。
 まさか。
 「あー。それあるかも。今までバカみたいにうたってくれたヤツがいなくなったからねー」
 「真面目にうたっててホント助かったのにねー」
 「誰が真面目にうたうかっつーの!キメエし」
 ・・・・・・。
 バカ・・・・・・。
 私は、何も聞こえないふりをして、音楽室を去った。
 あとから、新菜がおってきた。
 「だ、大丈夫?」
 ソプラノである新菜は、聞こえていただろうな。
 「・・・・・・にぃいなぁ・・・・・・」
 『バカみたいに』
 私の心に、深く、突き刺さった。
- Re:=北崎桐の場合.8= ( No.55 )
- 日時: 2015/07/27 20:07
- 名前: 四之神綾芽 (ID: CSxMVp1E)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「まー、ね・・・・・・真面目にうたってただけなのに・・・・・・ね」 
 唄うのも歌わないのも、ん・・・・・・。
 けど・・・・・
 「悲しい・・・・・・」
 悲しかった。
 馬鹿って言われてもしかたないけど、私は・・・・・・
 「私は、皆と唄いたかっただけなのに」
 唄うのが好きだから。
 「普通に唄ってただけなのに」
 声が通るから。
 「唄わないと、絶対にバレる声だったから」
 だから・・・・・・
 新菜が、突然冷たい声をだした。
 「じゃあ、唄わなきゃいいじゃん。もう、あの声じゃないんだから」
 「え?」
 そういって、彼女は、つかつかあるいていってしまった。
 何を___私は、何をいってしまったのだろう?
 私のどの言葉が、触ってしまったのだろう?
 私は、全く分からなかった。
- Re:=北崎桐の場合.9= ( No.56 )
- 日時: 2015/07/30 20:03
- 名前: 四之神綾芽 (ID: /UPoVEcS)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- あの声が、嫌いだった。 
 「うるっさい。もと静かにしゃべってよ」
 「普通に唄ってくれない?私達の声、聞こえないじゃん」
 『普通』に喋ってるだけだった。
 『普通』に唄ってるだけだった。
 なのに、
 「五月蝿い」
 「静かにして」
 何故。
 皆、「いいじゃん。よく通る声だよ?」「女の子って感じがする」そういった。
 私がほしい言葉は、そんな言葉じゃなかった。
 もちろん、私はこの声に感謝するときもある。
 たとえば、劇のときだ。
 私の所属する部活・・・・・・演劇部の劇は、私と美羽が一年から出演している。
 私達は三年生に進められて出演したのだが、美羽はすごく可愛がられていた。
 声も通るし、真面目だった。
 「一年の癖に」と言う人もいたが、美羽は「別に、いいじゃん?だって、選ばれちゃったんだもん」とあっけらかんと言い放った。
 私は、その前から感じていた事が、それで解けた。
 単なる噂だった。
 『ある子達を仲直りさせたとか』。
 他人がそんなことをできるのか、と思っていたが、確かに彼女ならできそうだった。
 ド直球でストレート。隠すことを知らない単純。
 だからこそ、あんな風にあっけらかんと言い放てるのだろう。
 私には、無理だ。
- Re:=北崎桐の場合.10= ( No.57 )
- 日時: 2015/08/01 19:55
- 名前: 四之神綾芽 (ID: /UPoVEcS)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 周りに合わせたい。 
 「声に色がありますね」
 先生に褒められるのは好きだ。
 けれど。
 「まー、お気に入りだもんね」
 『普通』でいたい。
 あんな声、嫌いだ。
 普通に喋るだけなのに、何で五月蝿いっていわれる。
 唄っていないだけで、私だけ何故ばれる。
 あんな声・・・・・・・。
 けど、
 「桐の声、好きだよ」
 そういってくれた新菜に、救われたのを、今でも鮮明に覚えている。
 「カッコイイ」
 「聞き取りやすい」
 この声でよかった、と思ったこともあった。
 けれど、やっぱり、嫌だった。
 もしかして、誰も分かってくれないのかな。
 「いいなあ、桐は」
 「声、大きいもんね」
 もしかして、誰にも分かってもらえないのかな。
 私の悩みを、彼等は『いいなあ』という。
 誰も、共感してくれないのかな。
 桃に話したことがある。
 桃──足立桃は、私の元親友。
 今は、ちょっとしたすれ違いであまり顔を合わせなくなった。
 「ふーん・・・・・イヤミ?私達にはわかんないな、その悩み」
 嗚呼、分かってくれないのか。
 半ば、もう・・・・・・諦めていた。
- Re:=北崎桐の場合.11= ( No.58 )
- 日時: 2015/08/09 21:05
- 名前: 四之神綾芽 (ID: /UPoVEcS)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「大変でしょ、その声じゃ」 
 いつもなら、「え?何が?」と返すけれど・・・・・そのときは、何故か言い返せなかった。
 何でも分かっている、という風にいう新菜に、私は素直に答えた。
 「____大変だよ」
 知らなかった。
 嬉しいときにも涙はでるんだなあ。
 知らなかった。
 悩みを分かってくれる人がいることを。
 「普通に喋っているのに、いろいろいわれちゃあ、イライラするよね」
 微笑みかけてくれる彼女が、天使のようにみえる。
 彼女の悩みも打ち明けてくれた。
 「・・・・・・分かってくれないんだけどね」
 「分かるよ。・・・・・・私だってそうだし」
 そういうと、また、新菜は笑った。
 「桐ちゃん・・・・・・桐ってよんでもいい?」
 「んじゃあ、新菜ってよんでもいいか?」
 「「もちろん」」
 今度は、私も笑った。
 それから、一緒。
 桃と喧嘩したときも、励ましてくれた。
 慰めてもくれた。
 『新菜の思っていることが私に分かって、私の思っている事は新菜に分かる』
 お互いに、そういったのを覚えている。
 けれど。
 (・・・・・なんで怒ったんだろう)
 今は、分からない。
- Re:=北崎桐の場合.12= ( No.59 )
- 日時: 2015/08/21 18:55
- 名前: 四之神綾芽 (ID: /UPoVEcS)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- とりあえず、あやまらないと。 
 私は、そう思った。
 「新菜、あのさ」
 「わかった?」
 「え?」
 「私が何に怒ったのか」
 「いや・・・・・・」
 「・・・・・・」
 けれど、新菜は謝ろうとするといつも同じ質問をしてくる。
 『私が何に怒ったのか』
 新菜の機嫌が一向に治らないので、私は、どうしようか右往左往する日々が続いた。
 「そういえば、最近、新菜ちゃんと一緒にいないけど、何かあったの?」
 美羽がそう聞いてきたのは、夏休み目前だった。
 「いや・・・・・・うん、まあ・・・・・・・ね」
 「やっぱか。早く仲直りできるといいね」
 そういって笑った。
 夏休みに入って、数十日たった。
 毎日、劇の練習で急がしかったが、やはり頭の大半は新菜の事を考えていた。
 そして、その日はきた。
 「えっ____」
 お母さんが、携帯をみつめたまま固まった。
 「どうしたの?」
 「新菜ちゃん・・・・・・と、仲良かったわね」
 「え・・・・・・ああ、うん」
 「・・・・・・」
 携帯を閉じて、ゆっくりといった。
 「交通事故にあわれたそうよ。命に別状はないようだけれど・・・・・・まだ、目をさまさないよう」
 「え______?」
 私は、そのまま何分も固まっていた。
- Re:=北崎桐の場合.13= ( No.60 )
- 日時: 2015/08/28 20:33
- 名前: 四之神綾芽 (ID: /UPoVEcS)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「・・・・・・」 
 私は、病院へ向かう車の中で、ずっと考えていた。
 ___もしもこのままだったら
 もしもかえらなかったら___
 ___もしも・・・・・・
 「・・・・・・」
 病室のベットに静かに眠る彼女をみて、私は不思議と涙がでなかった。
 椅子にすわってずっと見守っているであろう、彼女の母親が、挨拶にきた。
 「こんにちは。桐ちゃんも久しぶりね。・・・・・・わざわざ、きてくださってありがとうございます」
 ハンカチを片手に、目元をぬらしながらそういった。
 表面上の笑顔だと、すぐにわかる笑み。
 「・・・・・・・いえ」
 なんで、涙がでなかったのか。
 私は、家に帰ってからすぐに自分の部屋のベッドに未を投げ出した。
 (・・・・・・もしかして、私って冷たい人間?)
 (・・・・・・新菜のこと・・・・・・っ)
 「・・・・・・」
 (なんで・・・・・・・)
 「冷たい人間・・・・・なのかなあ」
 私は、放心状態だった。
 (新菜・・・・・・戻ってくるよね・・・・・・大丈夫だよね・・・・・・)
 そのまま、糸がきれたようにぷっつりと意識が途絶えた。
 キィ__
 「・・・・・・夕食・・・・・はたべれそうもないわね」
 ドアを開けると、桐が寝ているベッドのそばに行く。
 「・・・・・・桐・・・・・・やっぱり、貴女はそんな冷たい人間じゃない」
 目元の光を反射する水をぬぐう。
 「大丈夫よ、彼女なら・・・・・・きっと・・・・・・」
 そして、ドアをしめた。
 バタン__
 トビラの向こう側で、すべてを聞いていた彼女__桐の母親は、自分の亡くした親友とのツーショットの写真をみつめた。
- Re:=北崎桐の場合.14= ( No.61 )
- 日時: 2015/09/09 20:47
- 名前: 四之神綾芽 (ID: b5XL8ts8)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「・・・・・・」 
 私は、新菜のことを好きじゃないのかなあ。
 私は、新菜のことを好きだったんじゃないのかなあ。
 私は、新菜のこと大切じゃあなかったのかなあ。
 私は・・・・・・
 「・・・・・・桐」
 「・・・・・・ん?」
 朝ご飯もあまり手がつけられない日が続いた。
 母が、箸をおいて、静かに言った。
 「新菜ちゃんなら、大丈夫よ。きっと・・・・・・きっと」
 「・・・・・・」
 それだけいって、またもくもくと食べはじめた。
 「・・・・・・お母さんは、波南さんの時・・・・・・泣いたの」
 「・・・・・・」
 お母さんは手をとめた。
 「・・・・・・覚えてないわ」
 声をしぼりだすように、彼女はいった。
 「・・・・・・そっか」
 私も少し、ご飯に手をつけた。
 (波南さん、お母さんと波南さんは親友だったんですよね・・・・・・お母さんは、波南さんが・・・・・・たとき、泣いたんですか・・・・・・?)
 波南さんと母のツーショット写真みつめ、心で聞く。
 返答は当然ない。
 (・・・・・・)
 私は、静かに手を合わせた。
 (・・・・・・お願い、お願いだから、桐からは奪わないで)
 フラッシュバックするあの日の記憶。
 「は・・・・・・な・・・・・・・?」
 「・・・・・・ケガ・・・・・・・は?」
 「ないっ・・・・・・ない・・・・・・ない!」
 「そっか・・・・・・・そう・・・・・・・」
 ___ザアアアアアアアアアアア
 雨が降り注ぐ。
 赤色の水溜りができていく。
 (・・・・・・桐からは・・・・・・奪わないで)
 「はな・・・・・・はな・・・・・・・?」
 「・・・・・・」
 「はなあああああああああああああ!!!!!!」
 ___ザアアアアアアアアアアアアアア
 大粒の雨の中に、声が吸い込まれる。
 涙は、でなかった。
 「ああああああああああああ・・・・・・・あああああああああ・・・・・・・」
 周りの人が何かをいっていた。
 私の耳には、雨の音以外聞こえなかった。
 (・・・・・・波南・・・・・・・)
- =北崎桐の場合.14= ( No.62 )
- 日時: 2015/09/29 20:49
- 名前: 四之神綾芽 (ID: oUY4LzoD)
- 参照: http://ameblo.jp/sinogamiryouga/entry-12041190995.html
- 「・・・・・・・・・・・・・」 
 何事も無かったかのように、毎日はやってくる。
 沈んでいたのも数日の間で、もう馬鹿みたいに騒ぐ人達だっている。
 私は、そんなことできるわけがなかった。
 「・・・・・・・・・・・・・」
 ずっと、新菜のことを考えていた。
 (きっと、きっと、大丈夫____)
 ずっと、祈り続けていた。
 =another=
 「・・・・・・・・・・・・・」
 私は、ずっと祈っていた。
 (助かりますように____助かりますように____)
 そして、電話がかかってきた。
 「・・・・・・・・・・・・・・」
 声に、ならなかった。
 「・・・・・・嘘・・・・・・ですよね」
 心臓が破裂しそうなほどの鼓動。
 「・・・・・・・・・・・・」
 ____波南は死んだ。
 後から知った。
 波南と、最後まで一緒にいたのは、私の親友だったと___。
 そして、その親友をかばって、彼女は死んだと___。
 ___親友は、波南その場から立ち去ったのだと___
 そして、その親友の名前は、足立未央といった___。
- Re: 愛…君14=北崎桐の場合.15= ( No.63 )
- 日時: 2016/01/19 20:38
- 名前: 四之神綾芽 (ID: z070pZ.J)
- 桃には、深い傷を負わせてしまった。 
 すれ違い・・・・・・・・・ううん、違う。
 私が一方的に攻め立てただけ。
 発端は、ささいなゴタゴタからだ。
 けんかの発端がそれであれ、私は知っていた。
 波南さんを、置いて逃げた人が、桃の母親だと。
 そして、それは暗黙のNGワードだったはず。だった。
 「アンタの母親のせいで・・・・・・・・・・波南さん・・・・・・・・・・・っ」
 そこまでいって、私は気づいた。
 「・・・・・・・・・・・・・・・」
 桃の、傷ついた顔に。
 そして、自分の犯した罪に。
 それから、桃とは一切かかわらなくなった。
 自分で傷つけたくせに、謝る勇気もなく、自分にも傷を負わせたという罪を背負わせた私。
 そんな自分に嫌気がさしていたときでさえ。
 「大丈夫。桃ちゃんも分かってるよ。もし、キモチの整理ができたら、謝りに行こう?」
 新菜はそういって笑ってくれた。
 新菜は・・・・・・・・・死ぬなんてもったいないくらいに、優しいんだ。
 もしも、変われるなら・・・・・・・・・・・もしも、私が・・・・・・・・・・・・・。
 そう考えることもあった。
 あったんだ。
 けど、けど・・・・・・・・・・・自殺なんて、できない。
 そんな、勇気、ない。
 だから、生きるしかないと思った。
 そして、新菜が戻ってきたと気に笑えるように。
 それまでに、いろいろと、片付けておくんだ_____。
