コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: オカルト研究部には天使がいるっ!合作 参照2万感謝! ( No.79 )
- 日時: 2015/05/09 19:13
- 名前: 夕陽 (ID: 7Dg46Prl)
- 25話 天界のカケラ〜丘〜 
 「さて、今日は丘ね」
 「そうだな。……それにしても紗奈って今日休みか?」
 紗奈がいないことに気付き、翔太が同じ学年の奈美に訊ねる。
 「いえ、体育の時はいましたよ?」
 紗奈と奈美は体育をする時は同じクラスらしい。
 そのときは確かにいたと奈美は証言した。
 「サボりな訳、ないわよね……。紗奈に限っては」
 「……外せない用事が、あったのかも」
 「まあ邪推しても仕方ない。とにかく行くか」
 翔太は鞄を持って立ち上がった。
 * * *
 「本当にこの丘、低いわね」
 「私は高所恐怖症なので高くなかったのでよかったですっ!」
 「俺はもっと高くてもよかったけどな〜? まあ新庄はよかったな」
 数分歩いただけでついてしまう。
 楽ではあったが景色はそこまで良くはない。
 「で、ここはどこにあるんだ?」
 「カケラは石碑の中にあるのだ!」
 「石碑の中? どうやって取るの〜?」
 天使の言葉に奈美は首をかしげた。
 「ここはそこそこ難しいのだ! “森の女神”に協力してもらうのだ!」
 天使はそういうなり、ぴょんと跳ねると近くの木の上に乗った。
 そしてその木の中で一番大きい葉を見つけると、その葉を大事に手で包んで目を閉じた。
 しばらくすると……、
 「何か御用ですか?」
 姿は見えないが声が聞こえてきた。
 よく見ると天使が包んでいた葉が微かに光っている。
 「お願いがあるのだ! 石碑の中の天界のカケラがほしいのだ!」
 天使がお願いした。
 「……いいですけど、ただでは無理ですよ?」
 少しの間があった後、返事があった。
 その言葉にオカルト研究部員は息を呑む。
 「どうすればいいのだ……?」
 天使が不安げに訊ねる。
 「そうですね……。この果実、食べてくれませんか?」
 声が響いた瞬間、葉の近くで花が開き、すぐにしぼんだ。
 その後もどんどん成長していき最後には、さくらんぼに似た小さな果実が出来た。
 「これを食べると、どうなるんだ?」
 和輝が不審そうに聞いた。
 見た目はスーパーに売っているさくらんぼそのものの果物を見つめながら。
 「簡単に言うと、“この世にいないもの”が見えるようになります」
 「この世にいないもの……ですか?」
 「ええ。幽霊、お化け、妖精……。天使と悪魔もそれにあたりますが、この子達は姿を消すことは出来ないみたいですね。そのような物があなたの視界に見えます」
 声は淡々と説明した。
 「しかし、この効果は1ヶ月程度で切れますが」
 「それであなたに何のメリットがある?」
 和輝の質問の答えは、
 「…………」
 無言だった。
 「誰が食べますか?」
 もう既に食べること事態は決定しているような言葉。
 「……俺が食べる」
 “この世にいないものが見える”ということは大変だろう。
 皆に見えないものが見えるのは、自分が一人になったような孤独を感じるかもしれない。
 「でも、これを食べると……」
 「確かに“この世に見えないものが見える”のは大変かもしれない。ただ、俺はオカルト研究部だ。折角だし見てみようかなって思って」
 しかし、翔太は明るく笑った。
 多分、本心だろう。
 「だったら俺も食べるぜ!」
 「……僕も」
 「ならアタシも食べてみようかしら?」
 「わ、私も食べますっ!」
 「じゃあ私も!」
 結局全員食べることになった。
 「では、本当にいいんですね?」
 声がそういうと、先ほどまで一つだった果実が分解されて六つになった。
 「では、どうぞ」
 6人は一つずつ天使から果実を受け取ると一口かじった。
 「なんか変化があるのか?」
 皆がそんなに変わってないのを見て悪魔が不思議そうに訊ねる。
 「私にはそんなに変化ないかな」
 「アタシも」
 「……僕は少しだけ」
 「俺も少しだな」
 しかし、美樹と和輝の二人は結構変化があったようで……。
 「た、樽井君の後ろに幽霊が!」
 「新庄の後ろに妖精が見えるぞ!」
 美樹は怖がりながら、一樹は嬉しそうに言った。
 「よし、とりあえずこれで天界のカケラは出してもらえるんだよな?」
 翔太が訊ねると、
 「はい、これですね」
 いとも簡単に葉の中から天界のカケラを出してくれた。
 「よし、これで後一個だ」
 天界のカケラを受け取って翔太は呟いた。
