コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: CLOWN BY STEP ( No.10 )
- 日時: 2015/09/20 19:39
- 名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)
 ■□■□■□HEART
 「ふわああ」
 気の抜けた欠伸で目を覚ましたわたしは、文字通りの暗中模索、といった感じで、壁を頼りに洗面所に向かう。
 「ひょわぁぇっ!」
 無意識のうちに、顔を洗おうと顔に被った冷水のおかげて、ばっちりと目が覚めた。
 髪を梳かして身なりを整えてから、鏡の中の自分に向かって話しかける。
 「君は、ジョーカーになりたくないか?」
 呟いてみるけれど、意味は全然わからない。創士は何を伝えたかったの?
 二人は何を話していたんだろう。恋バナかな、恋バナかな。
 でもだとしたら、ジョーカーなんて言葉はでてこないよね。
 ところでジョーカーになるってどういうこと? もしかして、俗にいう中二病ってやつ? 商五、創士、信じていたのに!
 「愛一、朝御飯よ」
 一人で楽しそうにしているところに、お母さんの声が聞こえてくる。
 「はぁい」
 最後に鏡に向かってスマイルを向けてから、洗面所を後にした。スマイルください!
 あれ、返って来た……。
 弟は、朝練でもう学校に行っているらしく、姿は見当たらない。
 「あ、ごはん少なめでお願いしまーす」
 「自分でよそいなさい」
 「えぇ……」
 文字通り、少なめの朝ごはんでおなかを満たしてから、洗面所で歯を磨き、鞄を持って出発した。
 ドアを開けて階段をおりる。
 騒ぎながら私を追い越していく小学——四、五年生くらいだろうか、昔の自分たちを見ているようで微笑ましかった。
 三葉と商五との待ち合わせ場所まで歩いていくと、三葉が一人で立っていた。
 「おはよう、商五は?」
 「二度寝したら寝坊したから先に行け、だってさ」
 「相変わらず睡眠大好きだね……。じゃ、行こっか」
 三葉と二人だと、女の子らしい話が弾む。
 こういう服がどうだとか、クラスの人間関係だとか。
 たまに愚痴をいったり、時に意見が分かれたり。
 盛り上がっているうちに、いつの間にか門を通り過ぎていた。
 がやがやと、皆が創りだす音響は、小さく、また時に大きく、窓というスピーカーを多様に振動させる。
 ところが、ふいにそれが鳴りやんで、静かになった。
 その原因は、教室に向かって、息を切らしながらダッシュしてきた一人の男子生徒にある。
 廊下と上靴の擦れる音が、甲高く鳴り響く。
 その男子生徒とは、わたしと三葉の良く知る、某Sくんだった。
 「創士のイニシャルもSだよね」
 本当にあった怖い話に投稿してもいいんじゃないかな……。
 「ねぇ、ホントに恐いよ三葉。どんだけ心読むの?」
 「愛一が単純なだけよ」
 笑ってそう言う。本当にわたしが単純なだけみたいだ。
 「で、その某S君。遅刻しそうになって全力疾走した感想は? 大好きな風とお友達になれた?」
 「風とは百年来の……長い……ハァ……付き合いだ……ハァ……から」
 「冗談すら言えてない……。痛々しいからせいぜい落ち着きなさい」
 朝のSHRは、やけに暇を持て余した。
 先生は中だるみがどうだとか、なんだとか話していたけど、斜め後ろからの「それを言う前にアンタのたるんだ腹を直せよ」っていう某Sくんからのつぶやきで、クスクスと笑うにすぎなかった。
