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- 〜第一章 愛一の求める四角形⑥〜 ( No.7 )
- 日時: 2015/09/18 21:47
- 名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)
- ■□■□■□HEART 
 わたしたちは創士の家の近くの駅まで迎えに行くけれど、見送りをするのはこっちの駅まで。
 創士が、駅まででいいと言っているけど、三葉が押し切って迎えにだけは向こうまでいくことこうなっている。
 創士が少し前を歩き、商五はポケットに手を突っ込んだまま一歩後ろを行き、わたしと三葉は並んで歩く。
 サッカーでいうダイアモンドの陣形。創士がトップ下、商五がボランチ、わたしと三葉が両サイドハーフかな。
 ——こんなこといっても誰も分からないかな。残念、わたしは弟がサッカーやってるからサッカーには少し精しかったりする。
 まあ分からない人は、野球のベースだと思ってくれれば十分です。
 でも、こんなダイアモンド、こんな四角形が、わたしは好きだったりする。
 あと百メートル、あと五十メートルと、だんだん駅は近づいてくる。見慣れた景色がさぁっと流れるように、わたしたちとすれ違っていった。
 少し汚れた古い駅。緑色で書かれた駅の名前は、色あせているけれど、ゴミは落ちていないし、掃除は行き届いている。
 急がなければならないことを知り、創士は階段を駆け上がる。
 「商五!」
 上りながら、顔だけをこちらに向けて、商五の名を呼ぶ。
 商五が首を傾け、聞いていることを合図する。
 見えなくなる丁度手前で、創士は口を開く。
 その瞬間、少し遠くの線路が急に眩しくなる。大きな音が、その言葉に蓋をする。
 
 「商五! 君は…………!」
 巻き起こった風が、全身に伝わってくる。
 「何? 聞こえない! もう一回!」
 そして商五には、届かない。
 「何でもないよ! じゃあね!」
 創士はさらにスピードを上げて、すっと姿を消した。
 商五は、今日一日の創士は様子がおかしい、とか呟きながら、足を帰路へと向ける。
 商五は聞こえなかったみたいだけれど、わたしにははっきりと、何と言ったのかわかった。
 「商五、君は、ジョーカーになりたくないか?」
 いつも通り、三人の分かれ道を過ぎ去った。
