コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- センプウ×マク×セカイ
- 日時: 2015/05/02 08:19
- 名前: 甘栗 (ID: uWXzIoXb)
 CLAP
 その能力は正義にも悪にも化ける。
 世界の裏と表が——夜の世界を激突する。
 『センプウ×マク×セカイ(旋風巻く世界)』という小説です!
 言うほどアクション多くないかもしれませんがタイトル負けしないようにがんばります!!
 あと更新もがんばります!!
 どうぞよろしくおねがいします!甘栗ですm(_)m
 ◎唐沢依頼事務所◎
 唐沢峠野(Karasawa・Tohno)20歳。
 楽天的。一言おおい。一応ボスとしてやる時にはやる。
 紫藤孝也(Shidou・Takaya)21歳。
 唐沢の従兄弟にあたる少年。たくさん動くたくさん笑う。
 美園キリ(misono・Kiri)17歳。
 ニタリ顔か無表情しか浮かべないミステリアスな少女。
 最上大(Mogami・Dai)25歳。
 とりあえずツッコむ。キレる。ヘビースモーカー&酒豪。
 月島雅木(Tsukishima・Masaki)24歳。
 好青年。お客のおもてなし係。
- Re: センプウ×マク×セカイ ( No.1 )
- 日時: 2015/02/26 17:22
- 名前: 甘栗 (ID: uWXzIoXb)
- Episode 1 
 最近、脳裏に焼き付く夢を見た。
 ———青い海の底
 ———暗い場所で薄ら笑みを浮かべる男
 ———ビルの屋上から落ちていく少女
 何日たっても鮮明に残る光景。
 なにを意味するのか分からない。
 ただ…今は、目の前にある大量の資料にため息をつきたかった。
 「あのぅ、僕の依頼について…」ソファに腰かけている細身の男性が不安げに尋ねる。
 男性の目線の先には、窓際のデスクに座る赤毛の青年がいた。
 「あぁ分かってる分かってる。ちゃんと後で聞くからちょっと待ってな」
 「それ10分ほど前にも言いましたよね」
 「そだっけ」
 おいおいちゃんとしてくれよ。男は心の中でそうつぶやく。
 都内の駅近くにたたずむ古ぼけた喫茶店。その二階でひっそりと活動する「唐沢依頼事務所」。
 依頼件数は2週間に1、2回ほどの不景気な仕事場である。
 しかも今回の依頼が、前回の依頼からギリギリ二週間目だったため事務所側からするとだいぶ命拾いした。
 にも関わらず、久々のお客に対しての接待がひどいものだ。
 かれこれ依頼人が来てから30分もたつのに一向に話を聞かない。
 しかもテーブルに出されたのは海苔と水(もちろん期待を裏切る水道水)である。
 仕事場とは思えないほどの散らかりようで、男性は足元に転がる鉛筆や用紙を踏まないようにあたふたである。
 デスクに座る赤毛の青年はスーツを着崩していて、耳にはピアス、髪の毛は癖毛が目立っていた。
 仕事をする側の人間にしては心底信頼性のない姿である。
 するとデスクに置かれた青年のケータイが点滅する。
 青年は「おっ!きたね〜」と急に明るい顔になった。
 そして、青年とオフィスチェアがクルッと男性に向く。
 「そんじゃ、依頼の件に移りましょーか」
 「…やっとですか。はぁ、よかった」
 1時間も待たせるのではとヒヤヒヤしていた。
 男性の前に腰をおろすなり、自己紹介をはじめる。
 「はじめまして。唐沢依頼事務所の、その名も唐沢峠野です。ハタチです!苗字のからさわは俳優の唐沢さんと同じね。名前のとうのってのは峠に野原の野で峠野です!」
 自信満々に言うと、「きまった〜」とガッツポーズ。
 男性は「はぁ・・」と力なく反応する。
 「あ、僕は…」
 「倉田さんでしょ。知ってるから自己紹介はいいよ」
 ポーンと雑に捨てられた。
 本当にここに依頼をしてよかったのだろうか、とますます心配になる。
 「それじゃ、依頼ってのはなに?」
 少しは真面目モードが入ったのか、口角をあげてニタリと笑うも静かに男性を見た。
 依頼内容について不安があるのか、倉田が緊張した面持ちになる。
 顔をあげ、恐る恐る口を開く。
 「助けてください。能力者に殺されそうなんです」
- Re: センプウ×マク×セカイ ( No.2 )
- 日時: 2015/02/26 18:46
- 名前: 甘栗 (ID: uWXzIoXb)
- Episode、2 
 「助けてください。能力者に殺されそうなんです」
 「へーえ」
 「は」
 倉田が一瞬フリーズした。
 「へーえ、じゃないですよね。普通この場合」
 平然としてテーブルの上の海苔に手をのばす。
 ムシャムシャ食べて「うんまー、ここのやつこってんなー」と海苔の賞賛タイムを押し込んできた。
 倉田は呆れてしまう。
 「ちょっとあんた!」
 「は、ほい」
 「ちゃんと『はい』って言ってくださいよ…。聞いてたんですか?僕すごいこと言ったんですけど」
 「聞いてましたよ〜バカにしすぎだって倉田さん」
 「じゃあ最初の一言」
 「助けてください」
 「二言目の主語は」
 「能力者に」
 「述語は」
 「殺されそうなんです、でしょ。も〜バカにしすぎだよ倉田くーん」
 妙に慣れ慣れしい口調に変貌した。
 「いやその言葉押さえておいて何で驚かないんですか」
 海苔を食べる手が一瞬とまり、
 「だって俺も能力者だし。それCLAPのことでしょ」
 フリーズアゲインした倉田が、我に返った途端、驚嘆する。
 定番の頭を両手でおさえての「は〜〜!!」だ。
 「も〜倉田くんちゃんと事務所の宣伝用紙とか看板みてる?うちのキャッチコピー『人知を超えた力があなたを救います』だよ?イコール俺は能力者だって連想できるっしょ普通」
 「できるか!」
 バカも休み休み言えとはこのこと。
 さっきから依頼事務所を変更しようか散々悩んでいた倉田だったが、もう頭が混乱して落着けない。
 「落ち着けるかね?」
 「は、はい。ちょっと待ってください……唐沢さんは一応能力者…はい」
 頭から手を離して、気持ちを和らげようと深呼吸。
 「落ち着かす言葉をあげるよ。能力者だけど俺は正義のヒーロー」
 「はい。落ち着きました」
 倉田が単純すぎて逆にすごい。
 「まずそれは置いといて。能力者に殺されそうって、なんで?」
 「…実は僕、明日入籍することになっていまして…」
 「えーすげ。倉田くんおめでとー」
 「ど、どうも。それでですね、婚約者のご両親は承知の上なのですが、彼女の元カレの方が僕を嫌悪していて結婚に反対してまして」
 「元カレでしょ、そいつ。無視しちゃえよ」
 「ちがうんです。殺すと言うんですよ僕を!もしも入籍を入れたら」
 倉田の両ひざに置かれた手がぶるぶる震える。
 精神的にまいっているようだ。
 「その男が僕と彼女のもとにやってきて『入籍なんてしたらコイツを殺す』って僕を指さして言うんです。でも彼女はバカバカしいと信じなくてその時は彼女が強引に追い返したんです」
 その男を脳裏に浮かべているのか、尋常じゃない汗を出す。
 「男のこともあって、昨日彼女が早々に入籍すれば諦めてくれると言ってきて急きょ入籍が明日になったのですが…」
 「その男に今日会ったんだ」
 「はい…電車の中でした。出勤の途中で、背後に男が現れたんです。小声で『嘘だと思ったか、俺はマジで殺せるぞ』ってささやいてきて…その瞬間です。近くにいたサラリーマンの方の体にものすごい電流が流れて一瞬で死んでしまったんです」
 「やるな、公衆の前面で」顎の下をなでながら失礼なニタリ顔だ。
 「乗客が騒ぐ中、男が言ったんです。『お前もこんなになっちまうからな』って。すぐに次の駅について僕はすぐに走って逃げたんです。みんな突然の事件に驚いてなだれのようにホームに流れたので男の追っては防げたのですが。あまりに怖くて駅を出てから走っているとこの看板を目にしたので、つい」
 「なるほど、終わり?」
 「はい」
 「はぁ〜クソ長くて途中わすれたけど、だいたいわかったよ」
 いらぬ言葉が多すぎる。
 「明日の入籍は倉田くんにとって都合がとてーも悪いね」
 「そうなんです!だから!」
 「まあまあ、ご依頼とあらば最後までつくしますとも。安心なされ」
 どっかの黄門様を気取る唐沢。
 倉田はテーブルに両手をつけて「必ずお願いします!」と頭をさげる。
 「いいよ〜。なんてったってウチの連中は優秀だからだいじょーーぶ」
 お気楽テンションで言われると不安が拭えないが、こちらの味方も能力者であることは心強い。
 「えーと?じゃあ?あの〜謝礼金についてーなんですけど〜」
 唐沢が手をもみもみしながら猛烈に違和感のある作り笑顔をした。
 そのとき、オフィスに誰かが入ってきた。
- Re: センプウ×マク×セカイ ( No.3 )
- 日時: 2015/02/26 21:31
- 名前: 甘栗 (ID: uWXzIoXb)
 Episode、3
 「だれだ!依頼主って!!だれだ!おまえか!」
 入ってきたのは20代ぐらいの男だった。
 来た早々、勢いよく倉田に襟元をつかんだ。
 どっからどう見ても怒ってるようにしか見えない。
 ヤクザばりの威圧があまりにも恐ろしく「ひぃ」と怯える。
 「おまえが依頼主か!!ああ!!」
 「ひぃぃ。イエスイエスイエス!たすけてー!」
 「そうか…」
 急にしんみりとなって襟から手を離すと、頭を下げる男。
 「よくぞ来てくれました!なんなりと依頼をどうぞ!」
 「は…」キョトンとする倉田。
 「能力者に殺されそうだから助けてだって〜」
 唐沢が言うと、男は「能力者がらみ?」と青筋を立てる。
 「珍しいな。で、俺たちは護衛をしろということか」
 「そのとーり。冴えてるねモッさん。さてはパチンコ調子よかった?」
 「なめてんのかテメェ」
 そそくさと唐沢のほうへ行き、彼の頭に鉄槌をくだす。
 「あいたたたた!脳天かち割れる〜」
 「そんまま割れろ」
 「俺暴力的な人、ここにはいちゃいけないと思いまーす」
 「光熱費払ってるの俺だ」
 「暴力的な人って大事だよね。うん大事」
 光の速さで開き直った。
 あまりにぶっ飛んだ性格の人間二人を見る倉田。
 (ここは…そういう人がいる場所なのか……そうか…はは)
 そしてここを選んでしまった現実。
 「あれ、タカちゃんたちは?」
 「もうじき来るよ」
 「全員そろったら事務所のメンツ紹介するから、ちょーと待ってて倉田くん」
 「はい…待ちます…」
 次はどんな人間をぶち込んでくるのやら。どっちにしろ楽しい気持ちにはなれない。
 さっきの暴力的な男みたいなのがいたらと嫌な想像をしていると、足音が聞こえ、またもや事務所の扉が開く。
 「ただいまー。あ、依頼主さんがいる。こんにちは」
 穏やかな笑顔で一礼する青年。
 また何かかましてくるかと思いきや普通の青年という安全コースだった。
 倉田は心底ホッとして「どうも」と言葉を返した。
 そしてその横にこれまた優しい顔をした好青年がいる。
 「はじめまして。ゆっくりしていってください。あ、何か出しますね」
 「ん?出してんじゃん、ほれ」
 当然のように海苔と水(水道水)を指さす唐沢。
 「え」
 好青年、不思議な表情。
 「いや駄目だよ唐沢君、お客さんに水と海苔は」
 (あ、よかった……まともな反応してる)
 ちゃんとした人間の出現にだんだん気を取りなおす倉田。
 「いいものはないですが、これよりマシなものをすぐ出しますね」
 お気楽男と暴力男を見た後だと、この神対応には泣かされる。
 「こっちのメンツは全員そろったな。そんじゃ自己紹介しよう」
 唐沢が「このへん集合〜」と言いながらソファの近くに面々を誘導する。
 倉田は姿勢を正して座り直した。
 「ご存じのとおり、唐沢です。」
 テレビのリモコンらしきものをマイク代わりにする。
 「はい次!」
 流れでリモコンも一緒に差し出すが、あの先ほどの暴力的な男は「いらん」と即答。
 「最上大と言います」
 「年齢もね」割り込んでくる唐沢。
 「25歳です」
 「ちなみにこの人の愛称は、モッさんとダイちゃんとベストとアップとビッグと」
 「んなもんねえ!テメエだけだ!」
 怒声をあげてのツッコミ。ふん、と腕を組んで憤りを静めている。
 「はい次いってみよー」
 そう言ってリモコンを渡したのは先ほどの安全コースの青年だ。
 「はじめまして。紫藤孝也です。21歳です」
 「愛称はタカちゃんね。ちなみに俺の従兄弟なの」
 「そうなんですか」
 ああ性格が似てなくてよかった。最初に思ったことがそれだ。
 「そうなんですよ。俺と峠野は『唐沢兄弟』なんで!よろしく!」
 何気に誇らしく宣伝してきた。きっと仲がいいのだろう。
 「はーい最後は!マー君!」
 先ほどの好青年だ。
 もちろんリモコンをマイク代わりに。
 「どうも。月島雅木です。24歳です。よろしくお願いします」
 やはり清々しい青年だった。
 「以上がここの今いるメンバーの紹介ね。あと2人いんだけどそいつらは海外任務なんでね、不在中〜」
 「海外任務…」
 「あ、これ秘密情報だった!まいっか!忘れといて!」
 笑顔でごまかすなり、立ち上がる。
 「その婚約者の元カレについて教えてちょうだいよ」
 「は、はい」
 「久々の仕事だねーワクワクするねー。ねー!モッさん」
 「ワクワクしてんのは謝礼金だろ」
 最上がマネーポーズをつくる。
 「えーちがー…わないけどさー」
 (いや否定してよ)
 倉田が呆れていると、ふとあることを思い出す。
 「えっと、唐沢さんが能力者だということは、その…皆さんも…」
 「全員持ってるよCLAP」
 「クラップ…」
 「シーエルエーピー。CLAP。それが俺たちやその婚約者の元カレが持ってる力のこと」
 「確かに目の前で見ましたが、そんな力が…実際にあるとは」
 「あるんだよねー、実は。そんでやっぱ悪用しちゃうヤツがいるのよこれが」
 唐沢が自分の胸の前で手を広げる。
 「けど安心してよ。俺たち正義のヒーローだから」
 幻想だろうか。唐沢の背後にまばゆい光が。
 希望が見えてきた。
 「はい!」
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