コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 文才が切実に欲しい《短編集》
- 日時: 2015/11/03 10:08
- 名前: 未来 (ID: 1aSbdoxj)
- 『私には、みんなには視えないものが視えている』を現在執筆してます未来です。 
 文章力向上させたいことと、短編を書いてみたいと思ったことから、短編物に挑戦してみたいと思います。
 明るいものから暗いもの、色々書いていきたいです。
 時にはっちゃけちゃうと思います。「はぁ?」とか思われるかもしれませんがど、どうかその時はスルーというスキルをバンバンと発動しちゃって下さい。
 更新は不定期です。多分息抜きで書いていくと思います。
 それでもこんな駄文駄作を読んで下さる心優しい読者様は、どうぞ読んでいって下さいませ。
 …それと、少しでも上記の執筆中の作品に興味を持っていただけましたら、少しでもよろしいので読んでいって下さいませ…!
 気が向いたからとか、駄文を指摘してやろうじゃねぇのとかそんな理由でもいいので…!!
 『私には、みんなには視えないものが視えている』>>08
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 「誕生日と命日」
 1 >>01
 2 >>02
 3 >>03
 4 >>09
 5 >>10
- Re: 文才が切実に欲しい《短編集》 ( No.1 )
- 日時: 2015/04/02 18:01
- 名前: 未来 (ID: Qvwcv6K1)
 「誕生日と命日」
 私、前原由美には馬鹿な弟がいる。
 どこが馬鹿かというと、
 学力面から見ても馬鹿。
 行動面から見ても馬鹿。
 発言面から見ても馬鹿。
 とにかく馬鹿も馬鹿、大馬鹿なのである。
 早速今朝あった馬鹿弟のことを今誰かに話したくてしょうがない。
 ****
 
 二段ベッドの上が寝床の弟はいつも通り寝坊した。
 私が身支度を整えている中ようやく起床し、何を舞い上がっていたのが思い上がっていたのかテンションが高かったのが脳ミソがイカレてたのか知らないけど、
 
 『オレに不可能なことはない!!』
 と叫びながら床へとダイブしやがった。
 ゴン!!と大きな音がして、アホが何をやったのか大方想像ついていた私はそれでも多少は心配しながらぷるぷると悶えている弟の元へ向かった。
 何があったのか痛みを堪えて必死に震え続けている弟に問いかけると、飛行機に乗っている中友達に言われたそうだ。
 『お前、空も飛べないのかよー』と。
 夢だから可笑しな状況も可笑しな発言も見過ごそう。
 だが問題なのはそれに答えた弟の言葉だ。
 自我があり自由に発言も行動も出来る夢だったにも関わらず、友の言葉に可笑しいと疑いもせず、空ぐらい飛べるさ!!と返し飛行機から飛び下りたと…
 「…ほんとにバッカだねぇ〜あんたは」
 「…だって、飛べると思ったんだもん」
 「なんでよ」
 「なんだっていいじゃん!!」
 遂には逆切れである。
 これでも私と一つしか違わない中学二年の人間とは信じたくなかった。
 しかもバカだけならまだしも、こいつはかまちょだ。
 一人の時間が好きな私からしたら相性最悪である。
 考えてもみてほしい。バカのかまちょに構って構ってとアピールされ続ける苦痛を。
 話しかけてくるも、その話の内容が阿呆すぎて、それだけでも疲れる。イライラする。
 弟のバカさっぷりと愚痴不満は話し始めると止まることを知らないかのように次から次へと溢れてくる。
 だから弟のことは嫌いかと訊かれれば、しかし答えはNoである。
 あいつは近頃のクソ生意気なガキ共に比べたらとてもかわいく、優しい。
 特に小さな子供からの人気は絶大で、子供に苦手意識を持ち極力関わりたくないと考えている私は密かに尊敬しているくらい。
 勿論このことは絶対話すつもりはないけど。
 ****
 「おはよー由美」
 「おはよー楓。聞いてよー今日も弟の馬鹿大輝がさー!」
 毎日一度は弟の呆れる言動を友達に話すのが日課となってしまった。
 だけどうざったらしいと思っていたこの生活がとても面白みに溢れていて、大事で失いたくないものだったことに、その時の自分自身を殺してやりたいと殺意を抱いてしまうくらい私は全然気付いていなかった。
 私の誕生日プレゼントを買いに向かっている途中で車に轢かれたと知ったのは、大輝の死後から一週間後だった。
 誰かのお祝いやお返しなどに無頓着で行動が遅い大輝は、私の誕生日当日に家を飛び出して私へのプレゼントを探しに行ったと。
 それを知った時、いい加減枯れ果てたと思ってた涙がぽろぽろぽろぽろと溢れ出して止まらなくて。
 最低だ、と思った。
 プレゼントどころか、姉の誕生日を命日にしやがった弟に
 口にしなかったのにも関わらずいつ知ったのか、私が欲しかった本を手に入れようとしてくれていた事実に
 大好きな弟を轢き殺した車と運転手に
 大輝を殺す原因となった、私の誕生日に
 大輝にずっと冷たくあしらってきてしまった、私という姉の存在に
 頭では分かっている。分かっているのに。
 信号を守って歩いていた大輝もその日が誕生日だった私も何も悪くないと。
 法律上加害者となるのは車で、世間から見ても居眠り運転をしていた運転手が悪いと。
 
 でも、今私の胸中を占めるのは。
 大好きだったくせに素直に言葉で行動で表現せず、大輝に優しくしてあげられなかった私自身への憎しみでいっぱいだった。
 瞬間、悟った。
 私は私自身のことを、一生好きになれないことを。
 自分を憎みながら生きていくことを。
 「……大輝…っ!うぇ、っうぁああああぁ、ああぁあああああ…!!」
 抱きしめてくれる両親の腕の中で、疲れて眠ってしまうまで声をあげて泣き続けた。
- Re: 文才が切実に欲しい《短編集》 ( No.2 )
- 日時: 2015/04/03 08:42
- 名前: 未来 (ID: Qvwcv6K1)
 「…前原さぁ。いい加減そろそろちゃんと食べたら?」
 「…いらない。食べたくない。食べられない。だから…ほっといてよ」
 食欲なんて出るわけないじゃん。空腹なんて訪れるわけないじゃん。
 大切な家族を失って、自己嫌悪に陥って、そんな中、食事が喉を通るわけないじゃん。
 しかもなんであんたなんかが心配してくるんだよ。気にせず自分の給食食べてたらいいじゃん。
 「弟が死んだのはご愁傷さまとしか言えないけどさぁ。
 そんなあからさまに陰気な顔して一切食事に手をつけない姿
 見せられてもさー、こっちまで嫌な気分になるんだけど」
 隣の席の斎藤敦の発言に周囲がどよめいた。
 そこまで言わなくても、とか斎藤を非難する言葉が飛び交うのが聞こえてきた。
 でもそういうのも、斎藤の言葉も。何もかもがどうでもよかった。
 言われた本人よりも周りが熱くなろうが、由美には怒りも気まずさも何も感じなかった。
 「そうだね。ごめん」
 そう答えた途端、葬式を終えて登校した日から今日まで一口も手をつけなかった給食を黙々と食べ始めた由美に、クラスメイトだけでなく敦でさえも驚きで彼女を凝視してしまった。
 前原由美という人間は自分の意見をはっきりと言う。
 相手が不良だろうと先生だろうと親しくない女子であろうと、臆することなく向かっていく。そんな少女だった。
 それが怒ってもいい今の状況の中逆に謝罪し、箸を手にとり食べ始めたのだ。
 キッと睨みつけてきて言い争う場面を想像していた敦は拍子抜けした。
 ———だが由美の食事風景を見ていると、収まっていたイライラが再び敦を支配した。
 目の前の少女は、食事に美味しさを感じることなく、害のない物質を口に入れて咀嚼しているだけだと気付いたからだ。
 事務的に指を動かし、腕を動かし、口を動かし、喉を動かしているだけ。その瞳に光はなかった。
 少しでも食べてほしいと思っていた給食の食器が空になっていくのを見ても、心が晴れるどころか一層曇った自分に敦は更にイライラした。
 ****
 放課後一人でとぼとぼと歩いているあいつの頼りない背中を見つけ、声をかけた。
 「おい、前原」
 立ち止まって振り向くのを待つと、あの光のない真っ暗な目とかち合う。
 その間に隣に並び、再び歩き始める。すると前原も歩を進めた。
 「お前、もし弟と自分の立場を交換出来る、って言われたら、どうする」
 「…何なの?」
 「事故に遭って死んだのは自分。
 で、弟は今のお前のように生きていられる。
 ってなったら、お前、どうすんの?」
 「大輝の生を選ぶ」
 間髪入れず即答しやがったところをみると、もしもと仮定しながらも今のようなありえない話を考え続けていたんだろう。
 こいつらしくもなく。
 …ああイライラする。
 こいつは弟じゃなくて俺が死んでいたら、俺の命と自分の命、どっちを選ぶのだろうか。柄にもなく大輝に嫉妬する。
 前原に愛されていた弟。
 家族として愛されて当たり前の弟という存在に、ここまで嫉妬している自分自身にもイライラする。
 どうして俺は、こいつなんかを好きになってしまったんだ。
 誰だろうと真っ直ぐに、偽りなく言葉をぶつけてくるこいつを。
 素直に気持ちを伝えてくるこいつを。
 一匹狼で、友達とベタベタ群れず、周りに流されず自分のとりたい行動をとれるこいつを。
 誰だろうと、苦手な奴だろうと嫌いな人間だろうと、俺みたいに冷たいことや酷いことを言っている奴にさえも、困っていたら手を差し伸べる優しさを持つこいつを。
 この前なんか、不良に絡まれている高校生の間に割って入って、不良の股間を蹴り上げてやがった。
 どんな度胸だよ。どんだけ恐れを知らないんだよ。
 思わず一人で爆笑してしまった。
 恋とかくだらないと思ってた。女とか、女に限らず軽く人間という存在を見下していた。
 でもこいつは、前原は何か違う。
 淡々としてるけど、地味に面白くて、すごく隠れた優しさを持っていて。
 こいつとなら、一緒にいたいと思った。
 「———だから」
 「…何?」
 訝しげに目を細めた、眼前の痩せ細った少女の腕を掴んで、抱き寄せた。
 「…斎藤?」
 「弟のために自分を諦められるなら、お前を俺にくれよ」
 色恋事に一切興味ない前原に、同じく色恋事に興味ない俺が、伝わるだろうか人生初の告白をした。
- Re: 文才が切実に欲しい《短編集》 ( No.3 )
- 日時: 2015/06/14 07:51
- 名前: 未来 (ID: 7pZrKn1X)
 ドン、と思いっきり突き飛ばされた。
 「ふざけないで」
 聞こえてきたのは酷く冷たさの滲んだ声だった。
 こいつのここまで低い声は初めて聞いた。
 「私のことが嫌いなわけ?
 だからからかおうと声掛けて、
 意味不明なこと言って、
 私を混乱させようとしてるわけ?」
 あぁ、いつものこいつだ。ハキハキと物を言う、物怖じを知らない前原だ。
 …相変わらずの鈍感っぷりだけど。
 悲しいことに、俺の気持ちは一切伝わってない。欠片ほどにも。
 ……ざけんなこのヤロー。毒舌女。クソ鈍感男女。
 無性にムカついてきた。
 「あぁあもう!めんどくせーなぁ!!」
 イライラと髪をかきむしる俺に、意味不明という気持ちを顔に貼り付け見つめてくる前原の表情は、中々見ないものをしていた。
 刺々しさがなく、戸惑っているのがありありと伝わる。
 「…ストレートに言うしかないか」
 「っ…?」
 すぅ…と息を吸い込む。
 瞬間、(自分にしてはキザなことを言ったと自覚している)数分前よりも緊張していることに気付いた。
 まぁ、そうだな。こいつと違って、本音とかそう素直に言うことないしな。しかもドストレートに。
 ドクドクと重く鳴り響く心臓がうるさい。
 「—俺はさ、最初お前のこと、ムカつく奴だなって思った。
 口うるせぇし、殴ったりしてくるしそれが女のくせにすっげー痛ぇし。
 でも言うことやること文句つけにくいくらい正しくて、
 それがなおさらイライラさせるし」
 「…なんなの、何が言いたいの」
 眉間に皺を寄せてそう言った前原は、怒りを表しているというよりは、痛みを我慢してるような、そんな、あんま見たくない顔をしている。
 「でも、お前って結構表情豊かなことに気付いたし、
 すっげー甘いよな。お人好しっつーか。
 本読んで泣くし、
 告白には気付かないし、気付いた途端おろおろテンパるし」
 「!?な、なんでそれ…!まさか見てたの!?」
 おぉ、こいつのテンパる様子おもしれー。癖になりそうだ。
 「たまたまだぜ、たまたま。
 『うわあぁあ…!死なないでよお父さん…!』
 『よがっだ…これで家族みんなで幸せに生きていけるんだね…』
 とか」
 「ああああああやめろ!!それ以上は言うな!!!」
 一人だと思っていたんだろうその時のこいつの、本に呑まれてた時の涙ながらの言葉を告げると、途端に必死な形相で俺に掴みかかって来た。
 だが断る。まだまだあるぜ。言い足りねぇ。
 「付き合ってくれって佐藤に告白された時も、
 鈍感人間のお決まりのセリフ『どこに?』だもんな。
 テンプレすぎて笑い堪えるの大変だったんだぜ?」
 「…っ!お前それまで見てたのかよ!
 っだから…っ、もう言うなって言ってるだろ…っ!」
 余裕がないんだろう、女の子らしくない言葉遣い。
 …あぁ、やっぱり俺は、好きな子をいじめて楽しむタイプか。
 いじめっ子の気持ちが、優越感が。とてもよく分かる気がした。
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