コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 導かれし石たち ( No.54 )
- 日時: 2015/06/23 01:07
- 名前: rose (ID: JYUE09Me)
- プチ番外編 正人の過去 
 正人目線
 俺は、いつもあいつといた。
 あいつは、俺の初めての友達であり、親友だった。
 暇さえあれば、どっちかの家に集まり、大乱をする毎日。
 たまに、お互いの所持金を持ち、○ミーボ
 (大乱で使えるフィギュアのようなもの)
 を見に行ったり、他のゲームのフェスに行ったりしていた。
 そんな、ちょっとした、2人のゲーマーの暮らしは、こんな不思議な出来事の後に、突然終わりを迎えた。
 「なぁー正人ー!○ミーボ見に行こーぜー」
 「お前からそう言い出す…って事は、金が入ったのか?」
 「あったりー!2000円だぜ、2000円!」
 「俺は買わねぇけど。まぁ行くか」
 いつもの店に向かって、坂道を登った。
 坂道を登った先にあった光景は…
 いつもの、ではなかった。
 大量の人間は、全員が男。
 アニメで見たような、悪役っぽい黒スーツ。
 黒いヘルメットもかぶっていて、顔が分からない。
 そんな怪しいとしか言いようが無い奴らが、
 この地域の人たちの心の宝石__魂を、片っ端から抜き取っていた。
 「おい!!お前ら、人の魂勝手に奪ってんじゃねぇよ!」
 俺の心の中を見事に言ってくれたのは__
 言うまでも無く、あいつだ。
 「なんだ?ガキのくせに生意気な」
 「ガキだろうがなんだろうが知らねぇけど、人の魂奪うのやめろって言ってんだ!」
 おいおい、そんなに突っかかると、お前の命が心配だわ…
 と、内心思いつつも、俺もこいつに加勢する。
 「人の宝石を奪って、何をする気だ?
 人の宝石を故意に奪う事は、殺人罪にもなると思うけど」
 「正人…さすがっ!俺の心の友!」
 うん、嬉しいけど、今そんな事言って喜んでたらおかしいだろ…
 半分呆れたが、とりあえず目でありがとう、と伝え、視線を黒スーツ男に戻す。
 「ふははは、お前らも所詮はただのガキ。
 そんなガキに教えることなどない」
 「なら…もうちょい単純に忠告しようか」
 あいつが、急に緊張した顔になる。
 
 「…今すぐやめろ」
 もう何年も一緒にいるあいつなら分かるけど、俺の「もうちょい単純な忠告」発言は、
 俺の相当な怒りを表している。
 同年代か、先輩くらいの年代なら、この俺の怒りでみんな黙るが、流石に相手が大人だと、そうはいかなかった。
 「ふははははは!言ってくれるねぇ小僧よ。
 ただ、ここで黙ってやめる訳にはいかねぇもんよ」
 「なら…」
 あいつがやっと口を開く。
 俺とあいつは、アイコンタクトを交わし、
 同時に言う。
 「「力ずくか」」
 俺とあいつは、一応、格闘技を習得している。ただの大人の一人や二人、今まで倒した回数は数知れない。
 俺らが戦闘モードに入ったことを見かねてか、男が、
 「ふんっ、これさえあれば、お前らの勝率はゼロに等しいもの」
 はっ!と、男が何かのボール状の物を投げたのと、あいつが俺の前に出たのはほぼ同時だった。
 次の瞬間。
 台風以上の爆風が、ボール状の物から出てきた。
 そんな爆風を間近で浴びた俺たちは、
 跡形も無く吹き飛ばされた。
 結果、人を守ることは愚か、
 もっと被害を大きくしてしまったように思う。
 俺とあいつは、かろうじて一命をとりとめ、
 病院で手当てを受けた。
 それから一年が経った頃。
 休日が、何より暇な俺は、またあいつの家に行くことにした。
 自転車を飛ばし、これからの事を楽しく考えていた俺に、大きな不幸が降りかかった。
 そう____あいつは死んでいた。
 最も、死んでいた、とわかったのは、
 あいつの部屋に、壁が真っ赤になるほどの大量の血が付いていたからであって、死体は発見されなかった。
 部屋に大量に付いていた血の血液型っていうか血液検査的なもので、
 部屋の血は、確かにあいつのものだと分かった。
 俺は、ただただ呆然としていた。
 悲しみもふきあがってくるが、何よりも、あいつの死が、信じられなかった。
 あいつの母親の好意で、最期に部屋に行かせてもらった。
 水色の壁に、ペンキを塗ってあるようについている血。
 それは床にも飛び散り、見ているのが辛い光景だった。
 俺は、近くまで来ていた、あいつの母親に尋ねる。
 「おばさん、あいつの宝物って、知ってる?」
 「え、えぇ。知ってるわよ。確か、この辺りの木の箱に…」
 おばさんの指さした方向を探すと、確かに小さな木の箱があった。
 その中に入っていたのは_____
 いつか、俺と買った、期間限定デザインの、ゲームのリモコン。
 買った当時は、お互い気に入って使っていた物だ。
 あまりにも単純なもので、一瞬、自分がおかしいのかと思ったが、何度見ても、
 宝物の中身は、リモコンだった。
 そこで、ふと気がついた。
 宝物に、こんな普段で使うような物を入れている、と言うことは…
 そこまで考えて、俺はおばさんに言う。
 「あいつ、宝物ん中に、こんなの入れてた」
 「まぁ…それ、ゲームの?あの子はやっぱりゲームなのね」
 涙じみた笑いを浮かべるおばさんを、悲しく思いながら、
 「おばさん、俺、これもらって良い?」
 「・・・えぇ。きっと、正人くんが持っていた方が、今どこかにいる、あの子も嬉しいはずだしね。もらってちょうだい」
 「・・・・・・・ありがとう」
 じゃあ俺行くわ、と声をかけて、俺はあいつの家をあとにした。
 この時、俺は固く、心に誓った。
 あいつを殺した奴を、探し出すことを。
 その日から、俺は、寝食を忘れてネットに没頭した。
 何も、ゲームをしている訳ではなく、あいつの死に関わった人について、調べていた。
 と、言っても、血は大量についているのに死体が発見されなかった、という、不思議な事件なだけに人々の注目度は高かったものの、コメントばかりでなかなか真相が分からない。
 ある時、何故か急に昔の、死にかけた出来事を思い出し、
 何か関連があるかもしれないと、必死に調べてみた。
 数十種類の新聞から、運良く、黒スーツ男達の紋章のような、マークの画像が見つかり、その画像を元に、更に調べてみた。
 結果、奴らの正体が分かった。
 グループ名は明かされていないが、周りからは、
 「漆黒の忍」だの、「赤黒き野獣」だのいろいろと書かれているが、
 その通称からも分かるように、決して良い奴らではない。
 奴らは、自分達の求める理想の実現に向け、人々から宝石を奪い、
 この世の全ての宝石が揃った時に、その理想の実現が完全な物となるという。
 この世の全ての宝石、と言えども、人々の宝石は、かぶっていることも良くある事だし、種類なんてたかが知れている。
 理想の実現の為には、手段は選ばない、恐ろしい軍団。
 そして、その軍団の姿を知った者は、確実に消される___
 また、この軍団は、人殺しの技術がどんな犯罪者よりも優れていて、
 死体や指紋などの証拠は一切残さず、その人間の死を分からせる為に、
 血を大量に出す____
 まるで今回の事件そのものだと思い、犯人はほぼ確定した。
 ただ、実証性がなければ、意味がない。
 俺はいつか、奴らを発見し、この恨みを晴らすと誓い、チャンスを伺っていた。
 そんなチャンスが、まさか大乱のリアル大会で回って来るとは、思ってもなかったが。
 プチ番外編 正人の過去
 終
