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- * 秘密探偵、天文部 *
- 日時: 2015/10/11 15:35
- 名前: 悠。 (ID: 0a987INq)
*、ごあいさつ
皆様、初めまして!
悠。と申します(*^_^*)
タイトルは、本当に作者の好みです((汗
精一杯頑張らせて頂きますので、応援宜しくお願いします*
*、注意事項
荒らしや成りすましはご遠慮くださいませ。
書いていらっしゃる小説を教えて頂ければ、小説の更新が終わり次第極力行かせて頂きます!
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- Re: * 秘密探偵、天文部 * ( No.6 )
- 日時: 2015/10/12 11:00
- 名前: 悠。 (ID: 0a987INq)
【 story2. 】
茶色の木目調の廊下を、杏璃と並んで進んでいく。
さっき教室に鞄を置いてきて、今は入学式が行われる体育館へ向かう。
全体的に白色でまとめられた制服の胸元を見ると、頬が緩む。
桃色の花飾りがつけられていて、華やかに彩られている。
一人で笑っていると、気がついたら体育館に到着していた。
新入生用に用意されていた椅子に腰かけていると、また眠気が襲う。
「えー、それでは次に部活動の紹介です」
「……来たっ」
私が眠っている内に入学式は進んでいたようで、先生の一言で起きた。
生活指導と思われる先生が進み出て、退屈そうに紙を読み上げる。
最初に運動部の紹介から始まって、それぞれの部長が挨拶をした。
次に文化部の紹介に移ろうとしたとき、先生がまた前の方に出てきた。
「文化部ですが、天文部は部員不足で廃部にしました」
金属製のマイクの鈍い音が、頭を駆け巡る。
隣で杏璃が何か喋っていたけれど、私にはなにも聞こえていなかった。
そして先生が下がると、文化部の紹介が進んでいった。
でも私はそれどころではなく、気がつくと立ち上がってしまっていた。
がたがたと、音を立てて椅子が倒れ落ちていく。
視界が穢(きたな)く霞んで、目の前の景色が揺れていく。
ずっと夢見ていた天文部が、此処にはなくなってしまったのか。
その事実が胸を押し上げるように痛く染めて、真っ白に塗り替えてく。
「——そんなの、嫌ですっ!」
「——そんなん、認めねー!」
「——それって、有り得ない!」
脳内で予測できていた動きは、ここまで。
考えていたのは、私一人が声を荒げて先生に怒られる。
でも、何故だか分からないけど二つ声が重なっていたのだ。
そして嫌なことに、私にはその正体がすぐ分かった。
ずっと昔の、おはなしの登場人物。
私が大好きで堪らなかった、「双子」の幼馴染。
まるで正義のスーパーヒーローで、私だけの王子様たちだった。
この世で、きっと一番の友達だった筈。
一緒に星を眺めて、将来の夢まで誓い合った筈だったのに。
貴方たちはこうも簡単に、私を裏切った。
秘密だって守りあって、約束だって何千個も交し合ったのに。
あの日から、私は貴方たちが大嫌いだよ。
「千紘(ちひろ)、真紘(まひろ)……——!?」
もう絶対に会わない、想いあったりしない、そう決めた筈だったのに。
あの日三人で見ていた星だけは、忘れることができないまま時が過ぎ。
大好きだったあの日のまま、私の中の時間は止まったままで。
本当は会いたかった筈なのに、言い出すことさえ私にはできなくて。
今でも私の王子様なのに、こんなにも貴方たちのことが憎くて。
でも、あの時から私はずっと、空っぽだった。
「奏(カナ)、」
「ほんとの、奏(カナ)、」
また、時間が動き出した。
止まりかけてた歯車を誰かが押して、くるくると回り出した。
誰も知らない、方向へと。
しっかりと絡んだ視線が離れることはなく、鼓動が早歩きになってくる。
- Re: * 秘密探偵、天文部 * ( No.7 )
- 日時: 2015/10/12 15:07
- 名前: 悠。 (ID: 0a987INq)
【 story3. 】
あの後、私たちは職員室へと連れていかれている。
生活指導の先生の机の前で、思い切り怒鳴られているという状況だ。
でも、私は今正直怒られているということを実感していなかった。
だって隣にはもう十何年会ってない「幼馴染」がいるのだから。
彼らは、波多野 千紘(はたの ちひろ)と波多野 真紘(はたの まひろ)。
千紘が弟で、真紘の方が兄。
小さい頃には良く、私のお父さんに星を教えてもらっていた。
でも亡くなってしまってからは、私たちだけで星を見に行っていた。
そこで、私たちにも新たな夢が芽生え始めた。
その「夢」は、三人でいつか天文部に入ろうという夢だった。
夜の学校に隠れて入って、望遠鏡から宇宙を覗こう、と。
「お前たち、そんなに部活がやりたいなら探偵部に入りなさい」
「……探偵部?」
昔のことを考えていると、急に先生の声が頭に入ってきた。
先生がさっきの部活の紙を、私たちに突きつけるように見せる。
良く目を凝らして見ると、文化部の下の方に小さく探偵部とあった。
何のことか分からず、きょとんとしていると、真紘が何か呟いた。
「探偵部って……部員が一人もいないけど何故か廃部になってない……」
「ああ、良く知ってるな波多野」
その後、先生は詳しく探偵部について話し出した。
元々はお悩み部だったんだけど、あるとき彼氏の浮気を心配する女子生徒からお便りが来て。
今までのお悩みやテレビを参考にして、その生徒の彼氏を尾行して。
そうすると浮気ではなく妹ということが分かり、事件は解決。
それからという物、探偵部には沢山の事件が舞い込むようになった。
だけど生徒たちが卒業していき、探偵部という形だけが残った。
先生は探偵部が残した過去の栄光が忘れられず、廃部にできない様だ。
それに部費もかからない為、いい部活なのだという。
でも私は、そんな変な部活に入るために勉強した訳じゃない。
反論しようとすると、先生は勝手に入部用紙に私たちの名前を書いた。
驚いていると、話は終わりだというように職員室から出された。
私の右の手の平には、部室の鍵が乗っかっていた。
「……どういうこと」
「何がだよ」
「普通の顔しないでよ、私のこと——」
前みたいに意地悪な言葉を投げかけてきた千紘を、思い切り睨む。
ただ、真紘はその場で悔しそうに地面を見つめていた。
こんなこと、思うのは可笑しいかも知れないけれど。
やっぱり、二人とも凄く綺麗な顔立ちをしていると思う。
千紘は、チョコレート色に染まった絹のようにさらさらした短めの髪。
透明感のある肌に並んだ、切れ長の瞳に高い鼻、薄い唇。
少しだけ怖い印象もあるように見えるけど、天文が大好きな男子。
真紘は、綺麗な漆黒の髪で、白い透き通るような肌に並ぶ奥二重の瞳。
鼻筋は千紘に良く似て高い鼻で、唇も薄い。
二人とも身長が180センチを余裕で超えるほど高くて、羨ましい。
「ごめん、奏」
「真紘、謝んなくていいよ」
謝ることなんかじゃない、分かっているけれど。
本当は、この二人に怒ったってなにも解決しないなんて知っている。
古い廊下には、良く声が響きわたる。
私は吐き捨てるように真紘を傷つけると、部室へと足を速めた。
開いた窓から吹いてくるのは、柔らかな春風。
髪や制服を揺らして、向こう側に消えていった。
「……ここが、部室かあ」
「天文部ないとか、まじであり得ねー」
「奏、話があるんだけど」
部室に入って一息ついた瞬間、後ろから真紘がそう言った。
珍しく千紘も真面目な顔をして、軽く頷いた。
久しぶりに、二人と会ってみてとても驚いたことがある。
前よりも格好良くなったってことと、声も綺麗に変わっていた。
でもどんなに変わったって、昔からの癖だけは変わってなかった。
小さな頃から染みついてる癖で、私を奏(カナ)って呼ぶこと。
そんな小さなことなんだけど、変わってないという事が嬉しくもあった。
- Re: * 秘密探偵、天文部 * ( No.8 )
- 日時: 2015/10/12 17:42
- 名前: 悠。 (ID: 0a987INq)
♯、人物紹介
・ 一ノ瀬 奏(いちのせ かなで)
【 容姿 】
・背中まで伸びた焦げ茶色の髪
・透き通るように白い肌、細い手足
・瞳は大きく、二重瞼
【 性格 】
・少々捻(ひね)くれた性格で、同性からは嫌われる
・面倒くさいことが嫌いで、気配を消すことが得意
- Re: * 秘密探偵、天文部 * ( No.9 )
- 日時: 2015/10/12 17:48
- 名前: 悠。 (ID: 0a987INq)
*、お知らせ
皆様、こんにちは。
この度、参照が100突破致しました……!
これからも精一杯頑張らせて頂きますので、応援宜しくお願いします(。´・ω・)オネガイシマス
- Re: * 秘密探偵、天文部 * ( No.10 )
- 日時: 2015/10/13 20:29
- 名前: 悠。 (ID: 0a987INq)
【 story4. 】
あの後すぐに授業開始のチャイムが鳴って、私は早歩きで教室へ戻る。
早く行かなければいけない、っていうのもあるが、彼らから逃げる為。
真紘の話を聞くのが怖かったっていうのもある、特にそれが怖い。
私たちにはきっとあの日から、「壁」が造り続けられているんだよ。
——おはなしは、もうずっと昔まで遡るけど。
小学三年生の冬、私たちはいつものように三人で夜空を眺めていた。
もうすぐ冬の大三角形が見えるね、なんて話しながら。
そんな時、私は二人に我儘を言った。
あそこに光っているお星さまを捕まえてよ、と。
そう言うと二人は何故かこそこそ話し出して、にっこり笑った。
そこで次の週、私たち三人で空き瓶を持って丘に登って行った。
『 千紘、真尋っ、お星さま、捕まえられそうっ? 』
『 おーっ、捕まえたぞっ! 』
『 ほら、奏の大好きなお星さまだよ! 』
結局は、お星さまなんて捕まえられないんだけど。
丘に散らばっていた砂に、星の形のラメを混ぜた瓶を二人はくれた。
これが嘘だって分かったときはがっかりしたけど、嬉しかった。
お父さんを探し続けてる私への、誕生日プレゼントだと知ったから。
そのときの私は次の日、誕生日だなんてまるで忘れていて。
プレゼントがお星さまなら、とても私が喜ぶと思ったのだろう。
私は、そんな小さな幸せがこのセカイで一番大好きだったんだ。
この二人といたら、どんな冒険だって怖くないって思ってた。
彼らだけは、私から離れたりしないって思ってた。
お父さんみたいに、泡みたいに消えたりしないと約束してくれるって。
『 千紘くんと真紘くんが転校することになりました…… 』
でも、そんなのは意味がなかった。
あんなに素敵な贈り物をしてくれた二人は、次の月にいなくなった。
教室で行われたお別れ会では、千紘と真紘は私と目も合わさなかった。
いなくなる理由も言わずに、何処へ行ってしまうのかも言わずに。
どこか分からない「遠く」へと、消えていってしまった。
住所も知らないから手紙も出せずに、この六年間まるで会えなかった。
彼らがいないまま過ぎていく一年一年が、スローモーションに思えて。
毎日、一人で丘へ向かって夜空に祈っていた。
( いつか、二人に会えますように…… )
でも、どんなに祈っても何をしても、二人と会えることはなかった。
中学に入っても、私の毎日はずっとつまらないままで。
あの日、どうして私に何も言わなかったのか。
千紘たちの家は動物病院だし、両親の転勤というのはないだろう。
なにか他に「理由」があったなら。
それを何故、どうして言ってくれなかったのか。
ただ聞きたくて、壊れそうだったけれど考えてる内に中学も終わった。
私の青春の欠片からすべて、彼らに持っていかれた。
そんな、おはなし。
「……、ばか」
「何か言った? 奏」
何でもないよ、と杏璃に首を振る。
こんなことを考えていたら一限目が終わって、みんな休憩していた。
木目調の机に顔を置いて、大きく溜め息をつく。
今日は髪を二つに分けた杏璃が、首を傾げて私と同じ位置にしゃがむ。
暫く二人でそうしていると、がらがらと音を立てて扉が開いた。
ふと向こうを見てみると、そこにいたのは紛れもなくあの二人だった。
「——もう、最悪」
「話、終わってねえんだけど」
ぎりぎりと歯を鳴らしながら千紘を睨むと、向こうも睨み返してくる。
周りからは黄色い悲鳴が響いているけど、ただ真紘は苦笑していた。
クラスに溜まっていた女子たちも騒ぎ立てて、男子は溜め息をついた。
何だか全ての空気が二人に持っていかれた様で、少し悔しくなった。
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