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Re: Last Days ( No.5 )
日時: 2015/08/28 14:14
名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: GX8mvGbi)

飛鳥side

「失礼しました」

天海さんと別れた後、鍵を返して今は伊織を探してるとこ。
とこなんだけどっ……。

「さっきのって、当たってたよな……?」

思い出すだけで体が火照ってくるのが分かる。
天海さんの前では平常を保ってたけど、でも。

「嫌じゃなかったかな……」

なんて、何考えてるんだ僕は。あんなの事故みたいなものだし。
それに、今は伊織を探さないと——

「あれー? 会長じゃん!」
「花房先輩……」

廊下でバッタリ会ったのは花房薫先輩。僕達の上級生だった人で今は留年者。
そして、生徒会役員の一人でもある。

「お前が一人なんて珍しいな。てか、何か顔赤いけど熱でもある?」
「僕だって一人の時くらいありますよ……気のせいです」

悪態をつきながらも敬語になってしまうのは、花房先輩が年上というのもある。
が、それ以上にこの人は色々と面倒なのだ。

「ふーん、ま、いいけど。桂ならさっき女の子と親しげに話してるのを見かけたぞ」
「それって何処でですか!」
「何処って昇降口に続く階段で——」

花房先輩の言葉を聞き終わらないうちに僕は走り出して。
教えてもらった場所で目にしたのは、伊織と優月が親しげに笑いあっているところだった。

それを見て危機感を感じた僕は二人の間に割って入って。

「何してるの?」
「飛鳥っ」
「僕に隠れて密会なんて、いい度胸してるよね」
「そんな言い方しなくったって! 伊織くんは悪くないよ、私が!!」
「伊織くん?」

いつの間に名前で呼ぶ関係に? いままで誰にも呼ばせなかったのに。
やっぱり優月を伊織に近付けさせるのは危険だ。

「飛鳥、落ち着いて。俺が良いって言ったんだ」
「……伊織は黙ってて、僕は優月をこれ以上、伊織に近付けさせるつもりはないよ」
「なんで、そんな事、飛鳥に決められないといけないの!!」

僕の言葉に優月が声を荒らげた時だった。

「なになにー? 修羅場かな?」

後をつけていたのか、花房先輩がニョキっと割り込むように現れた。

「茶化さないで下さいよ、僕は真面目に言ってるんです!」

言い切る僕に見向きもせず花房先輩は、優月に近づいて。

「君が例の桂を追って来たっていう子? 生徒会に入りたいんだっけ?」
「!」

品定めする様な視線を向けながら花房先輩は言う。
僕は口を挟もうとしたけど、花房先輩の目がそれ許さなかった。

「いいよ、入れてあげる。ただし明日の陸上大会で全種目一位だったらね」

何を言い出すかと思えば、花房先輩の提案は無茶苦茶だった。
全種目って何種目あると思って——これなら優月も諦めるだろうと視線を向けて驚愕した。

「分かりました、今の言葉忘れないで下さいね!」

優月の瞳は凄くやる気に満ちていたから。

そうして生徒会所属を掛けた陸上大会の幕は上がったのだった。