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Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【参照1000突破♪】 ( No.155 )
日時: 2015/03/06 23:04
名前: 雪兎 (ID: /4zHEnTD)

第五十四話

ジーク・オースティンは、理事長に呼び出されたため理事長室に向かっていた。

一度深呼吸をしてから、ドアを2回ノックする。この人に呼び出されるといつも、無駄に緊張してしまうのだ。

一瞬おいて、「入れ」と短い返答があった。無言で部屋に入る。

ジークがドアを閉めたのを確認すると、理事長は唐突に切り出した。

「…先日の、学園襲撃事件についてだが」

「……。」

「やはり、例の女神像を狙ったものだったよ」

「そ、すか。」

やはり。想像はついていたが、向こうもいよいよ本気になってきているらしい。
するとジークの反応を見た理事長が、鼻でフッと笑った。

「?」

「どうやらこの事件は、エルフォード学院の仕業ではないらしい」

「は!?どういうことだよ?」

敬語を使うのも忘れ、ジークは問い返した。だとしたら、だれが狙っているというのだろう。

「相手は、あの……、…らしい」

「!!」

ジークの目が、驚愕に見開かれる。まさか、よりによって、そんな。

「っ…じゃあ」

「ああ。今起きているのは、女神像をめぐった三つ巴の争いだ」

チッ、マジで面倒なことになってきやがった。
俺達生徒に対しての嫌がらせかよ?…と、ジークは深くため息をついた。

…あ、でも。

もしかしてこれは、戦う機会が増えるってことじゃないのか?

対抗戦では味わえない、本物の戦闘のスリルが。恐怖が。

ジークはそう考え直し、思わずニヤリと笑った。…と、それを理事長がじっと見ていることに気づき、慌てて笑みを引っ込める。

理事長はただスッと目を細めると、思ってもいない話題を切り出した。

「…お前をここに呼んだ本題は、フィリアについてのことなんだが」

「!」

目に見えて動揺するジーク。理事長は、思わずプッと吹き出した。

「…笑うなよ」

「ああ、すまんすまん」

半目で睨んでくるジークを片手で制した理事長は、スッと笑みを消し、組んだ手の甲の上に顎を乗せた。「…もちろん、まだ話してないんだろうな?」

「……。」

沈黙をイエスと受け取った理事長は、満足げに微笑んだ。

「よろしい。あの子には何も感づかせるなよ。…全ては」

一瞬間をおいて、一言。

「全ては、お前の責任なのだからな」

「ッ……!」

何も。何も言い返す言葉は無い。そう、理事長の言うとおりだ。全て。

理事長の一言は、ジークの胸に深く突き刺さり、苦い過去を思い出させた。
フィリアはもう忘れているだろう、…いや、忘れさせられているだろう過去のことを。

理事長は立ち上がると、椅子にかかっていたコートを抱え、歩き出した。

そしてすれ違い様、長い黒髪を払いのけながら冷たく言い放った。

「その瞬間がやってきたとき。お前はどうするべきなのか、考えておくことだな」

「……。」

バタン、と扉が閉まる音を背中に聞きながら、ジークは長い間、拳を握りしめ立ち尽くしていた。

                 次回、第五十五話。お楽しみに☆