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- えっ、今日から私も魔法使い!?【参照4000突破感謝】 ( No.269 )
- 日時: 2016/03/22 17:17
- 名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)
第百一話 <波乱のお見合い編>
「……っ、てぇ」
ジークは、お化け植物の悲鳴と、まばゆい閃光によって意識を取り戻した。
体中が痛い。骨をぎしぎしと軋ませながら、うつぶせの状態から顔を上げる。
「……フィルッ!!」
口をついて出たその名前を咄嗟に叫ぶ。だが次の瞬間には、目の前の光景に凍り付いた。
広い部屋の真ん中には、フィリアとお化け植物が対峙していた。だが状況は先ほどとは異なり、フィリアの身体から絶えず放出されている青白い光から逃げるように、お化け植物はむちゃくちゃにツタを振り回し、気味の悪い悲鳴を上げ続けている。
「くっ……どうしちまったってんだ……!」
ジークは力の入らない腕を前に出し、動かない足を引きずり、前に進もうとする。しかしとっくに限界を迎えている身体は、主の言うことを聞こうとはしない。
「くそっ……たれ!!」
☆
私は、今だ深い意識の底にいた。
白い。何も見えない。ただ、春風が体を包んでいるような、何ともいえない心地よさを感じていた。
ああ……眠い。目的も忘れてしまうほどに。このまま身を任せてしまおうか。
その時、聞きなれた声が私の耳に届いた。
「フィルッ!!」
——ああ。なんて声出してんのよ、ジーク。
私は無意識に、腕を頭上に持ち上げる。広げた手のひらに、徐々に熱い力が収束していく。
——心配しないで。今度は私が、みんなを守る番。
☆
次の瞬間、変化が現れた。
光の放出が、ピタリと止まったのである。その代わりに、部屋中を満たしていた青白い光が、束となって掲げられたフィリアの手へと集まっていく。
「——来い、天羽々斬<アマノハバキリ>」
「ッ——!」
フィリアの口が動いた瞬間、バシュウゥンッ!という音とともに光が一気に集まり、何か長いものを形成していく。
あれは——。
現れたのは、柄も刃の部分も全て淡い水色でできた大剣だった。
鍔の部分は海のしぶきのような装飾が施され、幅広の剣身はサーベルのように大きく反っている。
そして持ち手のところに埋め込まれた大きなルビーが、一際強烈な光を放っていた。
「フィ……」
「待ってて、ジーク。——私はもう、弱くなんかない。今度は私が助けるから」
ジークは思わず口をつぐむ。またあの龍神がとり憑いているのかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。力強いその笑顔には、揺らぎない決意が表れている。
ギョオォォォ!と、お化け植物が怒りの雄叫びを上げ、それに反応したフィリアが振り返る。
遠ざかっていく背中を見つめながら、ジークは動かない己の足をこぶしで殴りつけ、呟いた。
「ちがうんだよ……!」
今度は、じゃない。
今度も、なんだよ、フィル……。
次回、百二話。お楽しみに☆