コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: SANDAI ( No.56 )
- 日時: 2014/12/16 16:27
- 名前: 墓書 (ID: w.lvB214)
お久しぶりです。
あまりに読まないジャンルなのに加え、まさかの禁断ネタ。
俺の管轄外ッスよ、せんせー。
かっこ良いムスル兄様はいません。
別にいろはみたいに乙ゲーしたこともなく、少女漫画や恋愛本もあまり手を出さず…結果、萌え要素が見当たらない残念なことに。
結はいろはがやるべきやったなぁ…。
まぁ、何とかなるだろう精神で思い腰をあげ完成したら思いの外長い。
死にかけです。
そんなゾンビなりかけの奴が書いたものですが、読んでいただけると幸いです。
結、
*身体が揺さぶられると同時に脳の中身までも掻き回されているのではないか。
そう錯覚してしまうほど、ラハナは混乱していた。
懐かしい兄の匂いが心を落ち着かせ、一方では、懐かしい声で語られたあの台詞がその心を揺るがす。
「ムスル兄様…」
縋りたい…その一心でラハナはムスルに声を掛けるが、返答はない。
ムスルは焦っていた。
ラハナに会うまでは順調に事は運んだ。
しかし、この状況を誰かに見られでもしたらそこでお終いである。
とにかく、ラハナさえ安全なところへ連れて行かなければ…。
そればかりが優先されて、余裕を持てなかったのか。
異変に気づいたのは、室内に立ち込める霧が視界を遮ったからだった。
「…っ」
不明瞭な視界。
突然の変化に驚き、ムスルは一瞬足を止める。
しかし、止まっていても仕方のないことだと、すぐに足を踏み出そうとした。
「待て」
通路に響く声。
「……!!」
その声はラハナにとって、すでに聞き慣れたものになった声だった。
「イェ…リ?」
抱きかかえられたままの態勢ではその姿を捉えることはできなかったが、確かにイェリの声だ。
「舐められたものだな…」
足音が近づく音が響く。
緩んだ腕からラハナはようやく抜け出し、ムスルを見上げると固い表情がうかがえる。
「そんな堂々とこの城から出すと思うか?」
数メートル先でイェリは立ち止まる。
「何が不満だった。たった一人を人質にだすだけで、誰も死なずに済んだ。これほど良心的な提案はなかっただろう。それにラハナも了承したはずだ。」
「ラハナの名を軽々しく呼ぶな!!それにあの状態では了承するしかなかった!」
ムスルは叫んだ。
余計に人を呼ぶことになると考える余裕もなかったのだろう。
掴みかからんばかりに吠えるムスルをラハナは必死に抑えた。
「兄様!もういいのです!皆のためになるならば、こんなことはたいしたことでは!」
「それがいけないと言っているんだ!お前は優しい。あいつの言った条件はただの脅しと言っていいだろう。お前の優しさにつけ込んだな!」
もちろん、そんなことはラハナにだってわかってはいる。
イェリもそうわかって提案したのだろう。
だが、実際にラハナは何もされてはいないし、最悪の場合を考えるとあの状態は救いがあったと見ていいと思っている。
「それがどうした」
そう問い掛けるイェリの冷たい声。
そこでラハナはイェリは敵であったことを思い出した。
と、同時に胸がギュっと詰まるような感覚を覚える。
息が苦しい。
なぜかはわからない。
恐怖かそれとも別の何かのためか。
ムスルはイェリを睨めつけ、ラハナは目を逸らす。
二人が黙ったままなことに焦れたのか、イェリは重ねて問いかけた。
「聞いているのか?それがどうしたと尋ねている。お前たちはそもそもが負けたんだ。にも関わらず、俺を前にして誰も死なせたくない、人質も嫌だ、などと…。わがままが過ぎるな。此方にも体裁というものがあるのはそちらも承知しているだろう。人質が無ければ、いつ其方側が復讐を企て始めるやもしれん。まさか、そんなことも知らずにぬくぬくと育ったわけでもあるまい?」
「ぐっ…」
畳み掛けるようなイェリの言葉にムスルは何も言えない。
「それに…」
「もういいわ、イェリ」
そのまま言い募ろうとするイェリをラハナは制した。
そうして、イェリを真っ直ぐ見つめる。
「少し…兄と話す時間をください」
スッとイェリは眉を顰める。
「何故だ」
不審気にイェリは尋ねた。
まさか、ここまで来て逃げはしないだろうとは思っても、何を画策するかわからない。
「兄様も、あまりに急なことに納得が出来なかったんだと思うわ。お別れも満足にできなかった。だから…」
「…わかった。わかったが…少しだけだぞ。」
仕方が無いな、そう言いた気にイェリは了承する。
そこに何となくだが、囚われていた時に見たイェリらしさというものが垣間見えて、ラハナは微笑んだ。