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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.9 )
日時: 2015/09/30 18:33
名前: 逢逶 (ID: mJV9X4jr)

episode8
title 勝手な男と騙される男

「…すいません。間違えました」

どうやら、たまたま部屋を間違えたみたい。
それでも会いたくなかった。
というより気まずくて会えなかった。

最近、私がフった人だから。

この仕事を始めて、いつか会うことはわかっていたけど。
そのタイミング…悪すぎるよ。

「…蓮、ちょっと」

光に呼ばれたけど、そのまま動けずにいた。

「…蓮ちゃん、行っておいで」

山田さんにさとされ、渋々立ち上がる。

「…失礼します」

頭を下げた。
五人の深刻そうな顔。
悪くなってしまった雰囲気。

きっと、私と光の関係に気付いている。

個室を出て、光が予約していた部屋に入る。
部屋の大きさから、一人で来ていることはなんとなくわかった。

「…で、なんでKISSTILLさんといるの?」

「マネージャーやってる」

「ふーん…俺さぁ、そもそも別れたこと納得出来てないんだけど」

「ごめん。私の問題だから」

ゲームとかじゃ無かった。
この人なら好きになれるかも、この人なら信用できるかも…そう思って付き合ったけど、全然好きになれなかった。
昔経験した男の嫌な部分が光にも幾つかあって、もはやトラウマ化している過去が私を縛った。


出会いはとあるBAR。私がバイトをしていた所。
光がロケ終わりに立ち寄って、気に入られて。

「…俺、本気で蓮が好きで。諦められるような軽い気持ちじゃない」

「うん。…でもごめん。私多分光は好きになれない」

「ふざけんな…っ」

腕を掴まれ、強引にキスをされた。

「んー!ひ…かる…」

キスの途中で、息をして。
離して欲しくて、光の肩を目一杯押す。

長くて深いキス。

やっと離してくれた頃には、足の力が抜けていた。

無理矢理…

だから嫌なんだよ。

自分勝手で、乱暴で。

だから光のこと好きになれないよ。


私のことなんて全然分からないくせに感情だけ押し付けて。
もういい。

信用しようと思っても裏切られるなら、本気で恋なんてしない。
誰も好きにならない。


「蓮、立てよ。俺これから飯食うから…出てって?」

そうだ、こいつもゲームに巻き込めば良いじゃない。


「もっと…」

「え…?」

「もっとキスしてよ」

壁にもたれかかるように座り直し、光を誘う。
光はしゃがんで、私に顔を寄せる。

バカだなぁ…直ぐに騙されちゃうんだからさ。

重なった唇。
啄むようなキスから深いキスを繰り返していく。

何も感じない。


「…はぁ…っ」

お互いの息が切れかけた頃、唇を離す。

「…蓮、好きだよ」

光に抱き締められる。
密室。

誰も見ていない。

悪い考えが働く。


…でも、KISSTILLも待ってるだろうし。




「じゃあ、今日はここまで。また会いたくなったら連絡ちょうだい?」

「番号知らないよ」

「変わってないから」

「わかった。絶対連絡する」





あー、楽しかった。


男を見下している時ほど楽しいことはない。



だから、この頬を伝う雫は嬉しさによるものだって信じたい。