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Re: Last Days ( No.3 )
日時: 2015/08/28 12:35
名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: 3rAN7p/m)

飛鳥side

進級したての今日、転校生が来ることは知ってた。
その転校生が伊織のファンであることも。

「ただ、ここまで馬鹿だとは思わなかったけど」

転校して来た初日、しかも教室のど真ん中で告白するなんて。
その神経が理解出来ない。

「ま……誰が来ようと伊織の邪魔はさせないよ」

伊織にとって今は凄く大事な時期なんだから。
その為なら僕は——幾らでも嫌われ役になれるんだから。

「手始めに揺すりにかかろうかな」

呟いて飛び出して行った転校生——栗山優月の後を追いかけた。



で、すぐに見つけた訳だけど。
想像よりもずっと彼女は必死だった。

……一目惚れなんて馬鹿みたいな理由で転校までしてくるんだから当然なのかもしれないけど。

でもそんなのは僕には関係ない。
僕には伊織の夢を守る役目があるんだから。

だから提案した、彼女に伊織の所属する生徒会に入りたかったら僕の彼女になれと。
別に、彼女——優月の事が好きな訳じゃない。
むしろ嫌いなたぐいだけど、形式上、彼女になってくれれば都合がいいんだ。

「どう、悪い話じゃないだろ?」

そう持ち掛ける、でも答えは予想通りの拒絶で。
更に言い募ろうとした時、伊織の姿が見えて中断された。

「飛鳥……と一緒だったんだ」
「桂くん、これはその、えっと違うの!」

伊織の登場に分かりやすく狼狽する優月。
それを見ていい事を思いついた。

「何が違うの優月?」
「!」

わざとらしく名前で呼ぶと優月本人よりも伊織が動揺したのが伝わってきた。
遅れたように優月も反応して。

「なっ……何がって!」
「僕の気持ちは迷惑?」
「ちょっと桂くんの前でさっきから何言って」

慌てふためく様子が可笑しくて、更にからかおうとした矢先に、伊織が呟くように言った。

「あ、ごめん。何か取り込み中だった? 二人、凄い親しげだし……」
「ち、違うの飛鳥とはなんでもなくて!!」
「そうなんだ、僕が優月のこと気に入っちゃって。アピール中っていうか?」

サラッとそう宣言すると、伊織は一瞬強ばった表情をしたけど、すぐ笑みを浮かべて。

「そっか! 二人ならお似合いだよ、飛鳥はちょっと底意地悪いとこあるけど、根はいい奴だから」

伊織がそう言った瞬間、優月の表情も強ばったのに僕は気づいた。
でもそれに触れることはせずに。

「それで、僕になにか用があったんじゃないの?」
「あ、えっと……さっき天海さんが」

話題を逸らした。
それで出てきた意外な人の名前に少し驚くけど。
今はこの場を穏便に解散させるのが先だと判断してあまりに気に止めていなかった。