コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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  同居人は、旦那様。  
日時: 2015/09/16 16:44
名前: 悠。 (ID: 0a987INq)








皆様、初めまして*
以前は違うサイトで小説を執筆させて頂いてました、悠。と申します。

今回こちらの方で活動させて頂くのは初めてで、とても緊張してます(
精一杯頑張らせて頂きますので、宜しくお願いしますっ*



*、ご注意

誠に勝手ながら、荒らしや成りすましは勿論の事パクリなども禁止させて頂きますがご理解下さい。

また、主は呼び捨てやタメOKですので気軽に声を掛けて下さいね!
更新はスローペースですが、温かく見てやって下さい(*´`*)


*、あらすじ

世界的に有名な会社のお嬢様と、これまた有名会社の跡取り息子。
そんな二人に訪れた、「政略結婚」という名の奇跡——!?



私なりに頑張るので、宜しくお願いします!
アドバイスなど、随時受付中なので是非どうぞ。



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Re:   同居人は、旦那様。   ( No.41 )
日時: 2015/09/27 11:39
名前: 悠。 (ID: 0a987INq)



【 第十九話 】






木目模様の机に視線を落としながら、小雨が降るように私は話し出す。
翼さんは静かに、私の話を聞いていてくれた。

幼馴染がいること、一度は離れたこと、昨日見た光景のこと。
それを言えずにずっと隣にいること。



 「……その理人って奴は、」

 「何ですか?」



そのまま翼さんは黙り込んでしまい、俯いた。
話しにくいことの筈なのに、何故だか勝手に言葉が溢れ出てしまう。

優しい眼差しが、胸の傷を暖かく癒していく。
さっきまで感じていた汚れている、想いも全て放たれて。




珍しく良く眠ることが出来て、起きたのも翼さんより遅かった。
初めて、彼が作った朝食が用意がされていた。

軽く焼けたパンを口に運んで、一気にコップに注がれた牛乳を飲んだ。
洗面台で髪を二つに分けて結んで、革のスクールバッグを肩に掛ける。

玄関に無造作に散らかっているローファーに足を通し、立ち上がる。
外は雨が降っていて、私は淡い紫色の傘を片手に持ち替えた。




 「雨降ってるんで、傘忘れないでくださいね」

 「了解、行ってらっしゃい」




頬を緩ませ微笑みを返して、玄関の扉を手で押した。
傘を開いて、体をその中へ縮こませる。

この街に掛かる音楽のような雨音が、気持ちを柔くさせる。
でも不意に水たまりを覗くと、そこに映る自分の顔は哀しいもので。

どんな顔をして、理人に会えばいいのか分からなくて。
自分から、彼から離れることなど出来るのだろうか。

そんなことを、頭の中でぐるぐると考えていた。
そしてもう一歩、踏み出したときに後ろから肩を叩かれた。




 「おはよ、茉彩!」

 「理人、おはよっ……」





笑いながら、昨日のテレビの話を始めた理人だけど。
話の内容なんて頭には入ってこなくて、体が急に冷え始めた。

ちゃんと、笑えていたのか心配になって。
無理矢理に上げた口角を下げて、自分の肩を抱いた。

ふと彼の横顔を見ると、簡単に目が合い、微笑まれた。
理人が左耳に差していたイヤホンを私に手渡し、携帯に指を滑らした。

中学の時から、私が「好き」と言っていた音楽だ。
彼は今も、他の誰でもない私の「好き」を憶(おぼ)えていてくれた。

その事実は、もうずっと昔から変わらないもので。
私の右耳に流れ込んでくる音楽が、雨音と連なって鳴り響く。





 「これ、茉彩が好きな曲でしょ?」

 「……う、ん」





震えながら絞り出した声は、情けないもので。
理人もそれに気づいてしまったのか、私の顔を覗き込んだ。

一瞬で表情を変えて、彼に向かって微笑む。
安心したのか理人も前を向いて、また一歩を踏み出した。

降り続く雨は止むことなく、傘に当たる雨粒はしきりに強くなって。
茶色のローファーでその場に転がる石ころを蹴り、視界が揺れた。


Re:   同居人は、旦那様。   ( No.42 )
日時: 2015/09/27 11:43
名前: 悠。 (ID: 0a987INq)






*、お知らせ




この度、参照が600突破致しました……!
前にも増して顔面が悲惨です((

本当にありがとうございます(*^_^*)
これからも、精一杯頑張らせて頂きますので応援宜しくお願いします!



Re:   同居人は、旦那様。   ( No.43 )
日時: 2015/09/28 17:19
名前: 悠。 (ID: 0a987INq)



【 第二十話 】






私に歩調を合わせて、しっかり隣を歩いてくれる理人。
横顔を見つめていると、たまに視線が絡み合いまた微笑まれる。

透き通るような透明感のある肌に、きりっとした細い眉。
瞳を縁取る長い睫毛も、雨粒に濡れてきらきらと光る。



 「どうかした、茉彩?」

 「今日、話があるんだけど——」

 「話?」

 「うん、帰りのときで良いから」




そう言うと、理人は軽く頷いて先に数歩進んだ。
不思議と、前に感じた「怖い」って気持ちはなくて、胸が晴れていく。

私が彼にしてあげられる事は、甘えることじゃないから。
優しさに縋(すが)りついているだけでは、昔と何も変わらない。

例え、また私の隣から離れてしまっても。
もうきっと、彼の傍には行かないって、分かってるから。

それに今の私には、゛翼さん ゛って存在がいる。
理人に甘え続ける自分はもう、抜け出したいんだよ。




もう、心が決まったから。
本当はこれからもずっと、彼の隣で笑ってたかった。

でもそれは、狡くて卑怯なことだって分かってしまったから。
私が感じる「好き」と、本当の「好き」は違うと知った。

だからもう、隣にはいれない。
いつも私に見せるその無垢な顔を、壊してしまいそうだから。




(ごめんね——、理人)






空はすっかり茜色に染まって、ざわざわと聞こえる生徒の声。
私はいつもと同じで、靴箱の前で彼を待っていた。

暫くすると、手を振りながら理人が此方へ歩いてくる。
そのまま彼に歩み寄って、空き教室に足を踏み入れていった。




 「靴箱じゃ、聞かれちゃうかもだし」

 「で、どうしたの?」

 「この前ね、聞いちゃったんだ」

 「゛聞いた ゛って、何を————……?」









全ての言葉を、涙が流れないように紡ぐのは難しかった。
必死に、泣き声を明るい声に変えて伝える。

怖くて、彼の顔を見て話すことは出来なくて。
これが最後になってしまうかもしれないのに、手足が固まる。

空き教室に差し込む、オレンジ色の夕日。
遠くの方からは、鳥の鳴き声も聞こえてくる。

さっきまで煩い程だった生徒たちの声も、まるで消えてしまって。
ただ聞こえるのは、私が泣くのを我慢する声だけだ。





 「……そっか、了解」

 「え、なに……っ!?」

 「んっ? 何が」

 「だから、な、にして———」









気がついた時には押し倒されて、腕を床に付けられていた。
そのまま顔を近づかれ微笑まれて、耳元へ唇を寄せた。

身をよじって抵抗しても、何も変わらない。
外の方から聞こえる雑音が、一瞬だけ止まったような気がした。


Re:   同居人は、旦那様。   ( No.44 )
日時: 2015/09/28 19:17
名前: 悠。 (ID: 0a987INq)





*、お知らせ





この度、参照が700突破致しました……!
最近、更新が遅れているにも関わらず本当にありがとうございます!

これからも精一杯頑張りますので、応援宜しくお願いします(*^_^*)



Re:   同居人は、旦那様。   ( No.45 )
日時: 2015/09/28 22:25
名前: 悠。 (ID: 0a987INq)



【 第二十一話 】(※)






空き教室に響く、私の声。
何も言わず微笑んだ理人の声と、茜色に揺らめく瞳。

彼の、くしゃくしゃになった制服の白シャツを握り締める。
何度もこうやって抵抗しても、まるで止めてくれない。

首に回された白く、でも男の人のように筋肉がついた腕が締まる。
耳元で囁かれる声は「好き」とか「でも——」とかで。

口籠ったり、何かを躊躇しているなら止めればいいのに。
私は理人にとって、どういう「好き」なのだろうか。




 「止めてってば……!」

 「——ごめん、無理だよ」





そう一言だけ呟くと、私の制服に手を掛けてきた。
多分身支度の直しをしてくれると思ったけど、私は突き放した。

傍に散らかっていたスクールバッグを肩に持ち替え、立ち上がった筈。
だけどそんな体は掴まれて、気がつくと理人の膝だった。

振り返ると、理人は表情(かお)を見られたくないのか、目を逸らす。
でも、掴んだ体を離すことはない。

思い切り抱きしめられて、冷たい涙が髪の分け目に零れ落ちた。
そのまま手を引かれて、顔がぐっと近づいた。






(嗚呼、「ごめん」っていうのは——)
(そういう、意味だったんだ)








重ねられた唇までもが、凍るほど冷たくて。
思わず身震いすると、更に強く、抱きしめられる。

窓から差し込むオレンジの光が、理人の綺麗な顔を照らす。
お互いの瞳から、涙が溢れ出す。

これで「さよなら」な筈なのに、しなきゃいけないのに。
背中に回された腕を、その掌を、体を、全部。

守りたいって、思ってしまうから。
これが狡くても、醜くて駄目なことだとしても。

彼が私っていう存在を求めてくれるなら、私も——、私も。
応えてあげたいって、思ってしまうから。






でもそれは、駄目なこと。
もう何十回も、繰り替えしてきたこと。






 「……っ、ばいばい」

 「_________っ茉彩、待って」








ごめんね、そう思って。
私は彼の声を無視して、空き教室を出た。

どれだけ彼が追いかけてきても、その声で名前を呼ばれても。
気にしていない振りで、走り出す。

今になって、唇が暖かくなってくる。
背中も熱くなって、胸が締め付けられるように苦しくなる。

理人、私、貴方より先に分かっちゃったんだ。
この「好き」はきっと「同情」で、恋でも愛でもなかった。

でも貴方の傍にいるには、これを無理矢理にでも変えなきゃだった。
形が間違っていても、構わなかった。







 「理人———————!!」








道の真ん中で、初めて大きな声が出た。
振り向いて、彼が追いかけてこないことを確認して。

さっき枯れた筈の、涙が溢れ出した。




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