コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 麦わら帽子と夏物語
- 日時: 2016/01/24 11:59
- 名前: ひなの (ID: Zzn.Kyek)
とある夏、高校生の初依が過ごした青春物語。
赤く染まった電車から一歩踏み出すだけで、爽やかな香りがした。お茶の葉のような__少なくとも東京では体験しない匂い。
初依はこの夏、喘息改善と気分転換のためにいとこの家にいくことになった。
シルバーのスーツケースを引きながら下車した後、取り敢えず初依は周りを見回した。
錆びているベンチ、並んでいる自動販売機、前には小型売店が建っている。様子からして無人駅化しているに違いない。
しかし初依はそんな駅にしょんぼり建っている売店がどうしても気になり覗いてみることにした。
見てみるとお菓子が豊富で、飲み物と新聞も売っている。古臭いものが主だが、かえって珍しいのではないか、と感心した。
喉も渇いたし、小さな腹ごしらえとしてどれかを買おうか。お金は高校生には十分過ぎる程ある。
「すみません。このガムと、あとサイダー下さい」
「百二十円」
安っ、思わず出そうになった声をなんとか飲み込み、ポケットに入っていた小銭を出した。
「はい、丁度ね」
白髪だらけのおじさんは「毎度」と一言いってから新聞を読み始めた。無愛想だなぁ、と心の中で文句を言いながら改札を出る。
先程した香りより更に強い香りがした。目の前には荒れ放題、延び放題の草がぼうぼうと一面広がっている。
「サンダルで来るんじゃなかった」
ため息をつき、草原を黙って歩いていった。
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- 麦わら帽子と夏物語 ( No.1 )
- 日時: 2016/01/24 12:22
- 名前: ひなの (ID: Zzn.Kyek)
草が足をチクチクと刺しながら、それでもたどり着いたのは大きい公園。先程の光景とは不釣り合いなほどだ。
ここが、いとこに家族との待ち合わせ場所だ。
「まだ少し早いかなぁ」
腕時計は十二時を示しているが、待ち合わせの時間は十二時半。まだ三十分も時間がある。かといって時間を潰す場所もないし__公園は他の子が使っているようだし。
ふと右を見ると信号があるのに気付いた。初依と同じくらいの年齢らしい男の子が歩いている。続いて女の子とまた男の子。
前を通りすぎるのだろうか__あと五メートル__三メートル__立ち止まった。
「君、どこの子? 前からいた?」
一人の女の子が初依を指差した。その後男の子二人が話しかけてきた。感が良いのか、高校生の数が少ないのか、前からいた? という質問に驚く。
「えっと、いとこの家に__」
「いとこの名前って何? 」
「あ__よく覚えてないんだ」
「あぁ、俺も女ってことしか覚えてないんだよなぁ」
女の子の質問に必死で受け答えした後に、茶髪の男の子が大きな口を開けて笑った。その姿が、どこか自分と重なっている気がした。
「あら、あなた初依ちゃん? 」
後ろから声がして、振り向くと背の高い女の人が立っていた。
「あ、おばさん!」「え、母さん!」
声が誰かと重なった。
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