コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

華と薫 友情のはじめかた
日時: 2015/10/31 14:48
名前: キャッツアイ (ID: Z5cmkimI)


テストは100点でも友達は0の薫は、学校で辛い思いをしていました。
ある日、素敵なバンドガール華とであいます
仲良くなる二人ですが、薫は、華にも捨てられてしまいます。
孤独な薫にハッピーエンドは来るのでしょうか?
  

というあらすじで書いています。


優しい方、よんでね(^^)


香理山薫こうりやまかおるは、中学3年生だった。
薫の父親は政治家で、彼女の家は資産家だった。
薫は高名な私立に通学していた。
そこでの彼女はまじめな優等生として評価されていた。
テストになれば満点ばかりの結果は、知的で賢い薫にとって当前のことだった。
素行も良く、面倒を起こした事など一度もなかった彼女は、模範的な生徒として知られていた。
その中学には薫と同じような財産家の子どもたちが多く在籍していた。
クラスメイトは皆良い子で、問題のない恵まれた環境だった。
はたから見れば、憧れるような立派な学校生活だった。
しかし、彼女には問題があった。
「薫は、どうしてあんなに辛そうなの?」
薫の母親は常日頃から心配していた。
薫は性格がおとなしすぎたので、友達が一人もいなかったのだ。
勉強は好きだったが、休み時間は辛かった。することがなく、話し相手もなく、暇をもてあますのが薫の習慣だ。
校庭に出て、わいわいと楽しそうに遊ぶクラスメイトたちを、彼女はいつも眺めているだけだった。
学校からの帰りのバスと電車も薫には苦痛だった。
すぐそばに仲の良い集団が乗っていて騒がしいと、薫の胸はいつもズキンと痛むのだった。
そのために、薫はいつもわざと時間を遅くにずらしてから学校から帰るようにしていた。
-----------------
9月のある日、いつものように、薫は一人で帰宅していた。
バスを降りて駅に着くと、駅前のロータリーに見慣れない同い年くらいの女の子がたっていた。
「なんだろう?」
不思議に思って近づくと、
彼女はギターを抱え、有名な歌のカバー曲を歌いはじめた。
その歌声は素人だったが、薫は彼女が気になった。
歌う女の子の前を、大勢の人々が通り過ぎて行った。
立ち止まる人もいたが、彼らもすぐ足早に去っていった。
観客がいないのに、それでも彼女は堂々と歌い続けていた。
薫は彼女を凄いと思った。
(あんな風にたった一人で、恥ずかしくないのかな)
彼女はまっすぐ前を見て、空気を突き通すような声を出していた。
駅の雑踏で歌い続けるなんて、薫には絶対にできない事だった。
薫はしばらく立ち止まって、彼女の歌を聴くことにした。
薫は、歌よりもその姿に心を引き付けられた。
不思議な引力があったのだ。
彼女は自分の周りに、違う空気を作り上げていた。力強くまっすぐ通る歌声と、赫々たる目の輝きに、薫はついつい見とれてしまい、次の曲もその次の曲も聞く事となった。
-------------------

駅前で歌っていたのは花咲華だった。
華もまた中学三年生だったが、薫とは縁遠い、貧しい地区の公立中学校に通っていた。
華は歌が好きで、ときどき遠くの駅に来て、1時間ほど歌っていたのだ。
「今日は珍しい。1人の中学生の女の子がきいてくれてる」
華はギターを鳴らしながら薫を観察した。
「あの子、なかなか可愛い顔をしてる。エマワトソンに似てるんじゃない?でも、なんであんなに暗い表情なのかな?そのせいでせっかくの可愛さが大なしじゃん。なんだか不幸を呼びこみそうな顔つきね。」
華は薫をそう品定した。

一時間ほど歌い続けると、華は満足して、帰る準備を始めた。
その時初めて、薫はギターケースにお金を入れるための箱が置いてあるのに気づいた。先客の誰かが500円を入れていた。
「あ。聴いたら入れるシステムなのかな?」
薫はあわてて財布を出して100円玉をそこへ置いた。

「ありがとね」
華が話しかけた。薫にはその笑顔がまぶしすぎて、ふっと目をそらしてしまった。緊張で顔がこわばった。
「明日もここで歌ってるからさ」
華は薫の様子を気にせずに続けた。
「また聴きに来てよ。ね。じゃ、バイバイ」
そういうと、華は電車に乗って帰っていった。
薫は、なぜだかドキドキした。薫にとって、華はトップスターのように思えたのだ。「話しかけられちゃった…」嬉しさがこみあげてきて、心があったかくなった。「明日も来たいな」薫は素直にそう感じていた。
-----------------

薫はそれから毎日華の歌をききにいくようになった。それが楽しみになった。下校時間が待ち遠しくなった。
薫の学校生活は以前と変わらなかったが、休み時間にはしゃぐクラスメイトをみても、薫の胸はそれほど痛まなくなっていた。
「私には秘密の友達がいる」
薫はそんな風に思いはじめた
華と薫は自然と話すようになった。華も薫が来る事を喜んでいた。
薫は華が、貧しい家庭に暮らしており、母親が働きづめでほとんど家にいないことを知った。
音楽が空腹を、そして寂しさを紛らわしてくれると華は語った。
華は多種多様の曲を知っていた。
薫が思いつく曲名をリクエストすると、華はその曲全てを歌うことができた。
「…の曲知ってる?」
「こういう歌でしよ?ランラララー」
「それそれ。あたり」
2人はイントロクイズをして勝負した。いつも華の勝ちだった
それから華には口癖があった。
「私はお金が欲しいんだ お金があれば幸せになれるとおもわない?
自分で稼いで、将来は一流音大ヘいきたいから、そのための学費を貯めるんだ 」
そういう華のギターケースにはしかし、いつでも500円程のカンパしか入っていなかった
「先は長いぜ。まだまだよのう」
華はおどけて笑っていた。
薫も華のジョークに笑いながら「いままで一度もお金が欲しいと思ったことはないな」と考えた。
彼女の家は政治家の家柄、必要なものはそろってあった。 薫はしかしそれでも満たされてはいなかった。「お金じゃないよ」薫はこっそり思っていた。
------------------

二人が出会ってから、一週間がたった。
その日、なんの前触れもなく華の気が変わった。
「じゃ、私、次は西駅にいくわ.多分ここより人が多いから。」
華は、突然薫に宣言したのだった。その口調は何処かひんやりした響きがあった。いつもの明るい華ではなかった。
「カンパも今よりきっと多くもらえる」
華は、それ以外の事は何も話さなかった。
「バイバイ!」
そして華は宣言通り、その次の日から薫の駅に来なくなった
華は姿を消した。西駅は遠い駅だった。薫は華の連絡先も聞いていなかった
薫の日常は昔どおりに戻ってしまった。
華は現れた時と同じように、気まぐれに去っていってしまった。
「私は、置いてかれたってこと?」
薫は胸の痛みに気づいた 。それは、クラスの子達に感じていたのよりも何倍も酷い痛みだった 。
矢庭に苦しくなって薫は泣いた
「 私は何を期待していたのかな? 一人で華の友達気取りでいた。 だけど華は別に何とも思っていなかったんだ。気まぐれに遊んでただけ。 飽きたから勝手に次へいっちゃった。 もう此処へは来ないんだ 」
薫はその日以来、下校の時間を早めた。 苦手だった、クラスの子達がワイワイするバスにあえて乗るようにした。1人っきりで歩き、誰もいない駅ロータリーをみて、こないはずの華が来るのを待ち望んでしまうよりもましだったからだ。
----------------

Page:1



Re: 華と薫 友情のはじめかた ( No.1 )
日時: 2015/11/04 05:51
名前: キャッツアイ (ID: Z5cmkimI)

(((((((((仕事の合間なので、こんな時間に投稿ですが





三か月が過ぎた頃、薫が華に再会したのは、ほんの偶然からだった

期末のテスト期間が始まって、学校は午前中に終了した。
薫は帰路についていた。

駅のロータリーには華がいた。華の学校も、同じ時期にテストだったのだ。

以前と変わらないスタイルで、華は歌を歌っていた
(なんでいるの?)

久々の対面に薫は気まずくなった。目をあわさず、華の前を足早に通過しようとした

華は薫に気づいた

「薫?ちょっと待って!」

華が大声で引き留めた。その迫力に、通りすがりの人々が振り向いた。薫は逃げた。華は追いかけてきた。華が追い付いて薫の腕を掴んだ

「冷たいよ薫、何で避けるのさ」
「だって」
「せっかく友達になれたと思ったのに。ほんっとに冷たいよ」

華はそのとき確かに「友達」と言った 薫ははっとした 。

しかし同時に、自分の気持ちを振り回されたという不満が湧き上がってきた。

「友達?知り合いの間違いでしょ。あんたは西駅に行くって言ったじゃん。冷たくバイバイって言ったよね?」

華はぽかんと聞いていた。



「それって、友情ごっこも終了って意味じゃないの?私の事なんかに興味なくなったんだと思ってた。」




「やだなあ、一週間したらまたここへ戻ってくるつもりだったのに」

「そんなこと聞いてないよ。あの日に物凄く冷たかったのは、あんたの方だった。」

「そうだった?」

「うん。あん時の華の態度はひどかった」

華はポリポリ頭を書いた。


「覚えてないけど謝るよ。多分そんとき、色々考え込んでたの。私、お金の事で頭がいっぱいの時があるのかも」


「じゃあ、私の勘違いだったってこと?」

「そうにきまってるでしょうが。何怒ってんの?」

「だって華が・・・・・あまりにも気分屋だから。」

------------


(すてられたんじゃなかった。)


薫は安堵した。

独りよがりな勘違いで、自分を傷つけたのは自分自身だった。


優等生の薫の器は、薫が考えているより小さいみたいだった。

華に対して感じていた気まずさは今、溶けて消えてなくなった。

誤解がとけたのを察して華はニコッとした


「ね、西駅はいいとこだった。太っ腹な人がこんなにくれたの見てよ。」
そういて華は5000円札をヒラリと出した。

「私の歌に5000円の価値があるってこと!」
華は得意げだ。


「薫とは、いつでも駅に行けば直ぐ会えると思ってたから油断した。ほんとはさ、私も戻ったときに、あんたが居なくなっちゃってて焦ったのよ。
ケータイ番号聞いとけばよかったって、寂しくて後悔よ。」


華は正直にずばずば言った。
「それにほら、このお金で今から一緒に遊びたいんだけど。どう?」

「いきたい!」
その日からテスト期間中ずっと、華と薫は遊びに繰り出した。
カラオケ、プリクラ、映画、ボーリング。


それは薫がずっと憧れていた中学生らしいことだった


テストが終わった。薫が100点をとった教科は1つもなかった。

普段の薫を知っている教師たちは心配した。


全教科60点代という結果は、以前の彼女にとっては、とてもとても悲惨な結果だったのだ。


「何か悩んでるの?」


教師たちは口々に尋ねたが、薫の母は笑って答えた。


「きっと悪い友達でもできたんですよ」
しかし、そんな周囲の思惑など、今の薫には、どうでもいいことだった。


薫にとっては、そのテストが一番愉しい中学の思い出となった。


Page:1



この掲示板は過去ログ化されています。