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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.40 )
日時: 2015/05/23 17:54
名前: 逢逶 (ID: UcGDDbHP)

episode4
title 治療法

景都のこと。
子供のこと。
遊んだこと。
全て話した。


私の涙はここぞと言う時に出ない。
今もほら、視界が霞むことすらない。
私の瞳はからからの砂漠だ。

オアシスが幸せではないけどね。



ねぇ、どうして泣いているの?

KISSTILLは泣いていた。

堪えもしないで泣いていた。

「…蓮ちゃん。ごめんね」

どうして謝るの?
私は遊んだんだよ?
利用したんだよ?

「辛かったな」

中島さんが私の頭を撫でる。
まるで子供をあやすかのように優しい。

…辛かったよ。

今も、辛いよ。


「小枝さん、幸せになろう?」

幸せ?

私から一番遠いもの。

幸せなんて諦めてた。

私が幸せになってはいけないんだ。


「…治療についてお話ししてもいいですか?」

永江先生の言葉にKISSTILLは涙を拭って頷いた。

「…治療はトラウマである出来事を鮮明に思い出させます」

「え…」

「もちろん、完治まで入院してもらいます」

「そんなのいいんですか?」

「実際に、有効なのはこの方法です」

「…わかりました」

私は思い出したくなんてない。
だけど私は病気なんだって。
だから、治さなきゃいけないんだって。

この先、薬に頼る訳にはいかないしどれだけ辛くてもそれ以外に方法がない。

…仕方ないよね。


治さなければいけない。



「…君は本当に強い人だよ。色々なことを抱え込んで折れてしまいそうだ。でも君はまだ折れていない。折れる寸前でKISSTILLのみなさんに救われた。…幸せなことだよ」

幸せ…。
私は何度幸せの横を通りすぎたのだろう。
見ないように。
すぐそばに答えはあったんだ…。

私を優しく見つめるKISSTILLの瞳はまだ少し潤んでいて。
今まで一人だったことがとても寂しいことだと気付いた。



たとえ治療法が辛くても…

私は強くなる。


過去と一緒に強くなる。