コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Capsule -カプセル- ( No.8 )
- 日時: 2016/05/03 21:39
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: lKhy8GBa)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
「第一話」〜笑顔のCapsule〜
其の日、出掛けた帰りに乗ろうとして居た電車は遅れて居た。
駅やホームには絶え間なく駅員のアナウンスの声が流れ続けて居た。
〝「近くの駅で人身事故が有った」〟という事だった。
私の後ろの人は、其のアナウンスを耳にした途端に携帯を取り出して舌打ちをしながらメールを打って居る様子だった。
少しガヤガヤした雰囲気は変わらずだったけれど、其の中にもちょっとした苛つきやピリッと張りつめた空気を私は直感的に感じた。
「人が……死んだって、言ってるんだよ」
誰かに聞いて欲しい訳でもないし、聞こえる声でも言っては居ない。
私達の近くで人が1人死んでしまったという事を、分かって居るのだろうか……──。
そっと心に尋ね、目を閉じた。
- Re: Capsule -カプセル- ( No.9 )
- 日時: 2016/08/17 23:04
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
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--2週間前--
「……え? 何で遥陽が居るの?」
雅貴と放課後に、待ち合わせをして少し遅れて私は着いた。
其処には雅貴と遥陽が並んで座って居た。
──待ち合わせって、遥陽もなの?────
「ちょっと話が有って遥陽も関係してる事、だからさ」
雅貴の言葉が私には理解出来なかったけれど立ち話も可笑しいし、取り敢えず2人の前に座った。
「何か、穂も頼んだら?」と遥陽が私に言うので、飲み物だけを注文した。
営業スマイルで飲み物を運んで来る店員さんに少しだけ苛っとするが、此の人は──何も悪くない。
「……で、今日の〝本題〟は?」
雅貴は私に〝「再来週辺りは、2人とも予定が無いから何処かへ行こう」〟と言い、放課後に話そうと言ったのだった。
遥陽が居るのにそんな話は出来ないだろう。
私の「本題は?」という言葉に反応し、雅貴は遥陽と目を合わせてから、改めて体を前に向け直した。
「実は、俺ずっと遥陽が好きだったんだ──」
……私に何も言わせる隙を与えず、話を切りだす雅貴。
「穂から告白された時からずっと遥陽が好きだったけど、初めて……人生初の告白をされて無駄にする訳には行かないと思って。後から好きになれるかもしれないと思って──ずっと付き合ってたんだけど」
驚きばかりの、雅貴の〝「告白」〟
続きを遥陽が切り出した。
「私が──雅貴に告白したの」
遥陽が、ニコりと笑ってそう言った。
……勝気な表情を浮かべて。
「穂だって、考えてみろよ。付き合ってる人が居たけど好きな人から好きだって言われたらどっちを取る??」
雅貴は意味不明の質問を私にぶつけた。
言え無かったけれど……、
──私は好きな人としか付き合わない────
「だから、御免。俺は遥陽と付き合いたい」
凄く悲しくて、悔しいけど涙は出て来なかった。
だんだん事実を納得して行く自分が居た──、次の言葉で私は更に驚く事になる。
「……納得しろよ。まだ、言ってやっただけ感謝しろよ。付き合ってやっただろ??」
……え?
──そんな事を言ったのは、誰?
──雅貴?
……違う。私はこんな人を好きになって居ない。
私をこんな風に思ってたのかな。
楽しいなーとか、充実してるって思ってたのは、私だけだったのかな。
「穂、御免ね。でも納得してあげて──……??」
遥陽の言葉は、表面だけ。
気持ちは微塵も謝って居ない。
「ねぇ、雅貴」
私は迷いながらも雅貴に問いかけた。
「ん?」
「雅貴は今までで、一度も私を好きになった事は無い?」
どんな答えだろうと、受け止めよう。
──きっと此れが、此の人と真面目に話す最後の時だから……。
「あぁ──」
続きを待つ。
「無いよ」
やっぱり、私だけだったんだね。
「遥陽」
私は横に居る遥陽にも問いかけた。
「雅貴には、遥陽の方が似合うよ」
──少しだけ嫌味を込めて。でもきっと強い遥陽は何も感じないだろうね。
遥陽の第一印象だった〝軽そうな人〟
そんな遥陽は、私がついさっきまで〝恋人〟だと思って居た人と凄く御似合いだと思う。
「──ありがとう」
綺麗で、上手な作り笑いをして遥陽は言った。
タイミング良く、飲み物が空になって氷だけになった。
「じゃあ私は帰るね。飲んだ物は自分で払うから」
荷物を持って、立ち上がる。
──後ろで声が聞こえる?
……振り向かないけど。
- Re: Capsule -カプセル- ( No.10 )
- 日時: 2016/05/06 19:25
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: lKhy8GBa)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
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歩きながら、携帯を弄って居た。
画面に映し出されて居るのは、雅貴とのやり取りして居たページだった。
きっと此処を使う事ももう無いんだろうな……。
取っておこうか迷ったけれど、取っておいた所でまた悲しくなるのは目に見えた事──。
私は思い切って削除した。
後から〝後悔〟が生まれる事は無く、案外平気だった。
平気──じゃないのかもしれないけど。
1人で歩いて居る私を見て、何人の人が「さっき別れ話を告げられた」と言うのだろう。
すれ違った人片っ端から聞いてみたい──。
遥陽嬉しそうだったな──雅貴も、私の前では見せた事の無い笑顔だった。
「再来週どうしようかな〜」
友達に「どっか行かない?」と誘われて居たのだが、当然私は断ってしまっている。
きっと誘ってくれた友達も、私は別に断っても良い……そんな気持ちだっただろう。
今更──なんて出来ない。
いずればれる事になるだろうけど、それはもう少し先延ばししたいんだ──。
後ろから風が吹いて来た──。
其の風に押されるように、私は走りだした……。