コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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音色に君をのせて(完結。番外編更新中)
日時: 2017/04/08 08:54
名前: Ria (ID: L2AVnGiq)

眠れ眠れ


緑の息吹たちよ 健やかに


小さき華


芽生え 風になびく 僕の唄









初めてその歌声を聞いたのは、裏庭で。

声が高く、伸びのある綺麗な透明感のある声。

でも、どこか声に儚さを感じる。

触ったらすぐに消えてしまいそう—。

私はその歌声を、目を閉じて聞いていた。






——————————






初めまして、Ria(リア)と言うものです(^ ^)
更新は不安定です。
少なくとも1週間に1度の更新を目指して頑張りますが、更新できない時もあると思います(・_・、)
その時は気長に待っていただけると嬉しいです。
コメントも大歓迎です。
よろしくお願いします。


☆8月10日参照100!☆
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目次

>>1-74 本編

>>75 あとがき

>>80 キャラ紹介

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Re: 音色に君をのせて ( No.41 )
日時: 2016/08/30 20:41
名前: Ria (ID: 31lZGh9F)

医師からは、沈黙療法を進められた。

「(また…何も出来なくなるんだ…)」

声を一切出してはいけない。

また、力を入れるようなことも、できない。

ただ、ずっと静かにしているだけ。

「じゃ、私は戻るから」

小さくなる、母の背中。

〝待って〟

届かないのは分かっていた。

届いていないはずなのに。

〝お母さん…〟

振り返ってくれた。

母が持っている、私の服のポケットを指さした。

1枚の白い紙が、はらりと落ちた。

ゴミだと思われたようで、拾うことなく部屋を出ていってしまった。

〝読んですらもらえないんじゃ…〟

私の気持ちが—。

「落としましたよ」

ふと落とした視線をまた元に戻す。

この声は…。

「…ありがとう」

「いえ。大切なものだったら、大変ですから」

会話はそこで途切れた。

カラカラ…という音を立てて、私の部屋に入ってきたのは。

〝鈴音…?〟

着ているのは、病院の服。

腕には点滴がささっていて。

「お母さん、読んでくれるといいね」

いつもより、少し白い顔。

それは、触れたら溶けてしまいそうで。

ねえ、どうして。

〝鈴音はそんな姿で笑っていられるの…?〟

Re: 音色に君をのせて ( No.42 )
日時: 2016/08/31 20:56
名前: Ria (ID: 31lZGh9F)

「俺ね、あんまり丈夫じゃないんだ」

彼は、点滴を「鎖」だと言った。

「鎖」に繋がれて、自由には動けない、と。

「自由な自然が、羨ましいんだ」

その白い顔とは似合わず、力強い目。

思わず、涙が頬をつたった。

「鈴音、大丈夫—っお、冷淡少女…」

「美鈴だよ」

「…知ってるっつーの」

鈴音の友達は、鈴音を見に来たらしい。

この前倒れた時に、彼だけには自分のことを伝えたようだ。

鈴音の友達は、とりあえず座るように促した。

「今日さ、なんか白くね?」

「大輝が黒いんだよ」

「はぁ!?」

大輝と呼ばれた人は、1度怒ってみせ、すぐに笑った。

涙していた私も、2人が面白くて思わず笑ってしまった。

すかさず、声を出さないように口を抑えた。

「…辛いね」

話せないのって、と鈴音は続ける。

私は涙を拭った。

〝そんなこと、ないよ〟

耳が聞こえないとか、足が不自由な訳じゃない。

親にいくら嫌がられても。

私は—。

〝幸せ者だよ〟

声には聞こえてはいないけど。

2人には伝わっているような気がした。

「あ、そうだ。明日も来てもいい?」

大輝は鈴音ではなく、私に話しかけた。

私は首を縦に動かした。

「俺の幼馴染みが、あんたのこと気になってんだ」

Re: 音色に君をのせて ( No.43 )
日時: 2016/09/01 20:53
名前: Ria (ID: 31lZGh9F)

私が生きているの、嫌だ?

美蘭が死んじゃった時、思ったでしょ。

なんで出来損ないの私が残ったんだって。

私は、美蘭みたいに勉強なんかできない。

だから、期待してなかったんだよね。

美蘭は、私のピアノが大好きだって言ってくれた。

それから、ピアノが楽しくて仕方がなくて。

美蘭に褒められるのが嬉しかった。

美蘭が死んじゃった時、ピアノを弾く気にはなれなかった。

でも、「頑張れ」って、聞こえた気がしたんだ。

それから、私は美蘭の死に悲しんでいた両親をピアノと歌で励まそうとした。

「うるさい」って言われて、全部は弾けなかった。

ピアノが、歌が、私が否定されて、悲しくて。

そして、声が出なくなったんだよね。

ため息つかれたとき、なんで私が死なないで美蘭が…なんて言われている気がした。

いつもの食事の時間。

私はその中にはいなかっけれど。

笑っている美蘭、お母さん、お父さんを見ているのが大好きだった。

私は美蘭の代わりにはなれないけれど。

お母さんを、お父さんを、支えることは出来るよ。

だから、また、笑って。





良かったら今度、ピアノを聞いてください。

歌う事は出来ないけど…。

聞かせたい曲があるんです。

手紙を読んでくれて、ありがとう。



Dearお母さん

From 美鈴

Re: 音色に君をのせて ( No.44 )
日時: 2016/09/01 21:23
名前: 立山桜 (ID: ???)  

美鈴…

Re: 音色に君をのせて ( No.45 )
日時: 2016/09/04 07:25
名前: Ria (ID: JEeSibFs)

立花 桜 様


美鈴もだんだん変わり始めます!
コメントありがとうございました。



——————————

次の日の放課後。

大輝とその幼馴染みはやってきた。

「鈴音爆睡しててさ、ほっといた」

疲れているのだろうか。

数時間前まで廊下で話をしていたのに。

「あなたが…美鈴…?」

大輝の後ろに隠れていたその人が、見えた。

ショートヘアでスタイルがいい。

私は思わず見とれてしまった。

ゆっくりとうなづくと、その人はニッコリ笑った。

「ピアノ、いつも聞いていたよ!」

〝私の…ピアノ…?〟

「ほら、体育館と近いでしょ?部活中に聞いてたの!」

体育館。

ということは、この人はバスケ部だろう。

私は紙にありがとう、と書いて、それを見せた。

「元気になったら、また聞かせて!私、乃亜!宜しくね!」

乃亜は、きっと誰とでも仲良くなれるタイプなのだろう。

私に、話しかけてくれるなんて。

「…?騒がしいな」

そう言われ、耳を澄ましてみる。

沢山の足音が駆けていくのが聞こえた。

大輝がドアを開ける。

私の目に飛び込んできたのは、数人のナース。

そして、倒れている鈴音だった。


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